どう防ぐ? 上司と部下の「正義」が対立しがちな職場のハラスメント【第2回】(前川孝雄)

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   パワハラを根絶するうえで難しいのは、「何がパワハラか」が必ずしも判然としないことです。法律によるパワハラの三要件は、上司の部下に対する「優越的な関係を背景とした」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」「労働者の就業環境が害される」言動だとされますが、いかがでしょうか。

   厚生労働省の指針や資料には、主な言動の類型や例が示されてはいますが、明らかな暴力や暴言を除けば、パワハラか否かの線引きの基準は明瞭とは言えません。

  • 部下は上司の指示に従うべきだ」なんて思っていませんか?
    部下は上司の指示に従うべきだ」なんて思っていませんか?
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上司のアンコンシャス・バイアスがハラスメントの温床になる

   上司にとっては日常の声掛けや、良かれと思った行動でも、部下がパワハラの三要件に当てはまると感じれば、訴えられる可能性もあります。愛情をもって育てようと熱心に接したつもりが、パワハラと指摘されてはたまりません。

   そう考える上司が、部下とのコミュニケーションを回避したい気持ちもわかります。悩ましいのは、「上司の正義」と「部下の正義」が対立する事態です。

   人は一人ひとり違う価値観や感性を持つ生きものであり、環境や状況によっても変わります。百人百様同士のコミュニケーションの問題を法律で細かくすべて規定することは不可能ですし、万一規定できたとしてもすべての人がそれを暗記するのは現実的ではありません。つまり、法整備だけでパワハラの根絶は困難なのです。

   多くの企業で人材育成を支援する中で感じるのは、上司側にアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見、固定観念)が強い場合や、上司と部下とのコミュニケーションが希薄な職場で、ハラスメントが生じやすいことです。上司の「仕事には多少の困難や不条理はつきものだ」、「部下は上司の指示命令に従うべきだ」といった固定観念が強い場合は、要注意です。上司の思い込みで一方的に評価したり、叱責しがちで、部下を傷つける言葉を発してしまう可能性が高いからです。

   異性の部下に対しても、良かれと思ったコミュニケーションが、相手に不快な思いをさせる場合もあります。若い世代ほど、不条理なことを我慢し強要されることはおかしいという意識に変わってきています。まず、相手への理解に努めることが大切です。

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