2021年 9月 23日 (木)

「第4波」感染列島なのにスポンサー主導の「聖火」に怒り 患者急増の大阪で中止に追い込まれる?(2)

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   新型コロナウイルスの感染拡大が全国で止まらない。大阪府では2021年3月31日、新規感染者数が599人と、第3波のピークとほぼ同じ状況に達した。

   吉村洋文大阪府知事は、緊急事態宣言が出されていなくても集中的な対策が可能になる「まん延防止等重点措置」(通称:マンボウ)の適用を政府に求め、菅義偉首相も4月1日に認める。マンボウの適用は全国初だが、宮城、沖縄、兵庫、山形などにも追随する動きがある。

   そんななか、福島、栃木、群馬で「密」を生み出している聖火リレーに批判が殺到している。中止か、続行か――。

   五輪組織委員会側は、

「県民の健康を預かる知事にご判断をいただきたい」

   と、通過する都道府県の知事に下駄を預けた形だが、最後まで続けられるのか。

  • 聖火リレーのゴール、新国立競技場
    聖火リレーのゴール、新国立競技場
  • 聖火リレーのゴール、新国立競技場

聖火リレーは企業のための大音響のパレードだった

感染拡大に有効な手を打てない菅義偉首相
感染拡大に有効な手を打てない菅義偉首相

   新型コロナウイルスの感染が広がるなか、政府と東京五輪組織委員会は聖火リレーを強行した。聖火リレーは3月31日現在、福島、栃木、群馬の3県目に入っているが、各地で観客が押し寄せる「密」の状態が起こっている。

   そんな聖火リレーが、そもそもスポンサー企業のために行われている実態を、東京新聞(3月31日付)「本音のコラム:隠されたパレード」の中で、文芸評論家の斎藤美奈子さんが、こう書いている。

   斎藤さんは、テレビのニュース映像ではなかなかお目にかかれない聖火リレーの一面を、インターネット動画で見て驚いたのだった。

「迂闊(うかつ)だった。聖火リレーがこんな大パレードだったとは。『ズチャ、ズチャ、ズチャ』と大音響の音楽を響かせ、やってきたのは大型トラック。荷台の上のDJ(ディスク・ジョッキー)が大声で叫ぶ。『福島のみなさん、1年待ちました』『踊って楽しみましょう』。コカ・コーラ、日本生命、NTTといった上位スポンサーの宣伝トラックに先導されて、だいぶ後からやってきた聖火ランナーの姿はかき消されんばかり。7月23日までの約4か月間、この騒々しい一団が全国各地を次々と襲うのだ」

   斎藤さんは、「国民に花見の自粛まで求めているのに何なのこれは」と、疑問を投げかける。

「そのうえリレーの実態は国民の目から隠されている。五輪公式サイトもニュース映像もランナーのアップしか映さない。企業中心のイベントであることがバレたら、批判が殺到するとわかっているのかもしれない。テレビ局も大手新聞社も五輪のスポンサーである。要するにみんな『ぐる』なのだ。五輪の本番はまだ先だ。だが五輪翼賛報道はもう始まっている」
五輪組織委員会の橋本聖子会長は聖火リレーをどうする?
五輪組織委員会の橋本聖子会長は聖火リレーをどうする?

   ちなみに、東京五輪のスポンサー企業には「ビッグ6(シックス)」と呼ばれる6社の大手新聞が名を連なる。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞、北海道新聞だ。そして、それぞれの新聞社には系列のテレビ局がある。朝日新聞=テレビ朝日、読売新聞=日本テレビ、毎日新聞=TBS、日本経済新聞=テレビ東京、産経新聞=フジテレビ、北海道新聞=北海道放送(HBC)といった案配だ。斎藤さんはこのことを指摘しているようだ。

   毎日新聞(3月31日付)の「コラム:水説 町で聖火は楽じゃない」でも古賀攻・専門編集委員が聖火リレーの「違和感」をこう書いた。

「3県目に入った聖火リレーは商業五輪を地で行っている。スポンサー企業の派手なコンボイ車列が大音量を響かせて通り過ぎた後に、ふとリレー走者が現れる。主客が入れ替わったようなその映像を見て、米ロック歌手ブルース・スプリングスティーンの初期の代表曲『町で聖者は楽じゃない(It's hard to be a saint in the city)』が頭に浮かんだ」

   そして、古賀記者はこう続ける。

「猥雑(わいざつ)さにあふれた都会を駆け抜ける歌のモチーフと、聖火リレーの姿が重なる。舞台は理念の花園ではなく、生臭い現実世界。聖者も聖火も楽じゃない。袖振り合うも多生の縁という。たまたまの隣り合わせでも不思議な絆があるとの教えだが、沿道の見物人同士で肩が触れ合う『密集』はNG。その区間のリレー中止が検討される。盛り上げたいけど、喜ばれ過ぎても困るという相反性を律する掟(おきて)だ」

早くも長野で「無観客」に追い込まれた聖火リレー

   福島、栃木、群馬の3県で「密」を生み出した聖火リレーは、早くも4県目の長野でピンチに陥った。一部で無観客になるというのだ。スポーツニッポン(3月31日付)「聖火リレーにコロナの向かい風 警戒レベル引き上げ... 4県目・長野で早くも一部無観客に」が、こう伝える。

「五輪組織委は3月30日、長野県内の新型コロナの感染状況を踏まえ、4月1、2日に予定している1日の善光寺仲見世通り(長野市)の走行ルートと、同日ゴールの長野市役所広場での到着イベントを無観客とすると発表した。組織委によると、これまでの福島、栃木、群馬の3県ではかなりの人が集まった状況でも続行。感染拡大への懸念の声が広がっていた。スタートから4県目で早くも大幅な変更を余儀なくされる形になった」

   そもそも聖火リレーと感染拡大防止の両立は、最初から無理だったと指摘するのは朝日新聞(3月30日付)の「聖火リレー『密』難題 密集回避との両立困難」だ。記事の中で、リスク管理の専門家である吉川肇子・慶應義塾大学教授(組織心理学)が、こうコメントしている。

「組織委は『密集』を『肩が触れ合う程度』などと定義しているが、これは『2メートル以上離れる』など目安にしてきた従来の定義と大きく異なり、本来『密』という言葉を使うべきではない。別の定義であることを明示すべきだ。そもそも観客に見てもらうためのイベントで、密集回避との両立を図るのは難しい」

聖火は名古屋市と大阪市を無事、通過できるか?

聖火リレー中止の下駄を知事に預ける丸川珠代五輪相(公式サイトより)
聖火リレー中止の下駄を知事に預ける丸川珠代五輪相(公式サイトより)

   いずれにしろ、聖火リレーは長野県から岐阜県、そして4月5日、6日には大都市・名古屋市がある愛知県に入る。名古屋市も感染拡大地域だ。長野市で「無観客」に追い込まれるありさまでは、名古屋市ではどうなるのか。さらに4月13日には「まん延防止等重点措置」が適用されることになった感染爆発地帯の大阪府に入る。

   丸川珠代・五輪担当相は3月30日、記者団の「もし大阪府にまん延防止等重点措置が適用されたら、聖火リレーはどうするのか」との問いに、こう答えたのだった。

「大きな課題になると認識している。地域の医療を預かっているのは都道府県で、負担をかけないことと聖火リレーの実施についてご検討を賜りたいのが私たちの願い」

   と、聖火リレーを続けるか中止するかの判断を、知事たちに下駄を預けたのだった。

   朝日新聞(3月30日付)「聖火リレー『密』難題 著名人に人だかり」は、大阪府での聖火リレーが最大のヤマ場だと指摘する。

「4月13日、14日には感染拡大の大阪府で行われる。『むしろ心配は大阪だ』と話す五輪組織委幹部もおり、状況が悪化すれば、公道のリレー中止も『現実味を帯びる』という」

   大阪府までで10府県目だ。聖火リレーの全体の日程の約5分に1に過ぎない。大丈夫か? 止めるなら早いうちがよいが......。

   【追記 2021年4月1日】
※ 新型コロナウイルスの感染急拡大を受けて、大阪府の吉村洋文知事は4月1日、東京五輪の聖火リレーについて、「大阪市内では中止すべきだ」との考えを示した。大阪市の松井一郎市長も同日の記者会見で「大変残念だが、聖火リレーは見合わすべきと思う」と述べた。

(福田和郎)

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