2021年 6月 24日 (木)

「東京五輪開催」を狙ったワクチン接種が大混乱に! 変異ウイルスとシステムの混乱が命取り

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   新型コロナウイルスの高齢者向けのワクチン接種が2021年4月13日、始まった。ただ、ワクチンの確保は大幅に遅れており、接種が本格化するのは5月以降で、いつ全員にいきわたるか見通せない状況だ。

   そもそも、2か月前に始まった医療従事者への接種さえ1割しか終わっていないのに、なぜ高齢者に始めるのか?

「すべては東京五輪開催のため」

と主要メディアが報じる。

   しかし、足元で変異ウイルスの感染拡大が止まらず、ワクチン接種に必要な医療従事者が不足するなど多くの難題が待ち受けている。

  • 「東京五輪」開催が至上理由の菅義偉首相
    「東京五輪」開催が至上理由の菅義偉首相
  • 「東京五輪」開催が至上理由の菅義偉首相

「高齢者は五輪開始の7月半ばに終わらせたい」

   今回、対象となるのは65歳以上の高齢者約3600万人。米製薬大手のファイザー社製のワクチンが使われ、3週間の間隔をあけて1人2回接種する。ワクチンが全国の市区町村に届くのは4月26日からで、本格化するのは大型連休明けだ。菅義偉首相は4月12日、記者団に、

「6月末までに(全高齢者の)2回分のワクチンを用意し、お届けする」

と語ったが、それは全国の市町村に配布し終えるという話だ。

   各自治体による接種作業はそれからで、いつ終わるのか、政府は明言を避けている。菅首相は4月12日の衆院決算行政監視委員会で、高齢者への接種終了時期について聞かれて、

「地方自治体にお願いしており、状況を見ている」

と明言を避けたのだった。

新型コロナワクチンのサンプル(ファイザー社提供)
新型コロナワクチンのサンプル(ファイザー社提供)

   そもそも、高齢者より先に今年2月17日から医師や看護師など約480万人の医療従事者へのワクチン接種が始まっているが、すでに2か月近くたっているのに2回接種が終わったのはその1割以下の47万人だけ。その医療従事者の接種完了時期についても政府は明らかにできないありさまだ。

   朝日新聞が4月13日に発表した世論調査によると、新型コロナワクチンの政府の取り組みについて、76%が「遅い」と批判している。こうした怒りの声に押されて、課題山積みのまま医療従事者と同時進行で始まった高齢者へのワクチン接種だが、医療従事者の8倍もの集団が加わることになる。いったい、いつ全員が接種し終わるのだろうか。

   朝日新聞(4月13日付)「ワクチン接種、綱渡り始動」によると、東京五輪開催に間に合わせようという思惑ばかりが先行し、行き当たりばったりの状態で高齢者を始めたという。

「昨年末から『第3波』への対応が後手に回ったと批判を浴びた政権は、ワクチン接種を『頼みの綱』(官邸幹部)とする。夏の東京五輪・パラリンピックを『安全安心の大会』(首相)にするためにも、ワクチンを早期に行き渡らせることが『政権の生命線』になるとの認識は、政権幹部らに共通する。政府のスピード感に対する世論の視線は厳しい。官邸幹部は『高齢者向けは、できれば7月半ばくらいまでには打ち終わりたい』と話す」

   7月半ばといえば、7月23日から東京五輪が開幕する。それまでに高齢者を終えたいのが政権のホンネだが、そうでなくても、日本のワクチン接種は恥ずかしいくらい諸外国に比べて遅れている。産経新聞(4月13日付)「ワクチン接種 日本の実施遅れ、途上国並み」によると、4月12日時点で少なくても1回接種した人の人口比は日本が0.9%だ。世界最速で接種が進むのはインド洋の島国セーシェル。人口約10万人の65.6%が接種した。2位はブータンで61.5%、イスラエル61.4%、英国47.2%、米国35.2%と続く。日本は先進7か国中ダントツのビリで、下から2番目のイタリアでも14.4%だ。日本より接種開始が遅れた韓国でも2.3%だ。

セーシェル、ブータンが6割以上なのに日本は0.9%

ワクチン接種(写真はイメージ)
ワクチン接種(写真はイメージ)

   なぜ、これほど遅いのか。その大きな理由の一つが国内で現在、承認済みのワクチンが米ファイザー製だけだという事情がある。東京新聞(4月13日)「遅れるコロナワクチン 供給本格化はGW明け」が、こう説明する。

「政府はファイザー社と、欧州で製造したものを輸入する契約を結んでいる。欧州にある同社工場の生産能力が不足していた。(今春に)能力を拡張する際、一時的に生産量が減った。また、計画どおりに輸入するにはEU(欧州連合)の承認が必要となる。空輸するたびに承認を取らなければならない。承認が拒否されたことはないが、5、6月は各十数回の承認が必要となる見込みで、今後も必ず承認される保証はない」

   また、国内の事情も深刻だ。ワクチン接種作業に欠かせない医療従事者が不足しているのだ。朝日新聞(4月13日付)「ワクチン接種、綱渡り始動 看護師不足・供給量と時期見通せず」が、こう伝える。

「(感染が急拡大する)大阪府などで医療体制がひっ迫するなか、今後は注射できる看護師や准看護師の確保が課題になる。厚生労働省がワクチン接種の特設会場を設ける1391自治体に状況をたずねたところ、約2割は看護師が不足していると回答、7%が看護師を1人も確保できないと答えた」

   北海道羅臼(らうす)町のように、常勤の医師が1人しかおらず、接種にかかりきりになると通常の診療ができないため、札幌市などに応援を要請するところもある。変異ウイルスがさらに拡大すると、接種のための医療従事者の確保がさらに難しくなる。

   絶対的にワクチン供給量が足りないのに、早くも余っている自治体が出ているという。日本経済新聞(4月13日付)「ワクチン配分で地域差 世田谷、人口の0.2%、100%超す離島も」は、政府のバラバラな配分から生じた不思議な現象を報告している。

   同紙が全国の都道府県に、今回、国から届いた4月分のワクチンの配分量を調査したところ、例えば東京都世田谷区では対象の高齢者(18万7000人)の0.8%分しかこなかったが、東京都の伊豆諸島にある青ケ島村では、高齢者の分どころか、全住民170人の3倍分もの量が届いた。ほかにも人口の多い市では対象の高齢者の1%以下の分しか届かないのに、人口減少地域では高齢者以外が接種しても余る量が届いた例が多かった。これはどういうことか。

   日本経済新聞が続ける。

「国がすべての市町村に4月供給分のワクチン接種の機会を設けることを優先させた結果、極端なばらつきが出た。4月中に供給されるワクチンは最低でも1箱(487人分)が市区町村に配分される。このため、人口最多・最小の2つの自治体を比較すると、ワクチン接種できる住民の割合に差が出てしまう。ワクチンが箱単位で送られるのは、ファイザー製のワクチンが、マイナス75度で管理しなければならず、解凍前に箱から小出しにして分けることが難しいからだ」

   今後は、余ったところが、足りないところにどう融通していくかが課題だが、ファイザー製のワクチンは箱から出した場合、3時間以内に輸送しないと使えなくなるという。ずいぶんムダなことをするものだ。

ワクチン接種記録システムの大混乱を避けられるか

やはり「東京五輪」がすべてか...
やはり「東京五輪」がすべてか...

   また、今後予想されるのが、ワクチン接種記録システムの大混乱だ。日本経済新聞(4月13日付)の「社説:ワクチン記録に病院の協力も」がシステムの問題点を指摘する。諸外国に比べて大幅に遅れているワクチンをスピーディーに普及させるためには、接種状況をきちんと把握し、円滑に行うことが重要だ。そのため、誰がいつ何回目を打ったか、毎日記録するシステムが4月12日に稼働したが、そのシステムが非常にややこしく、自治体と医療機関がそれぞれ膨大な人数分を入力しないといけないのだという。

「接種記録は2つの情報を日々更新する必要がある。住民の転出入と接種を受けた人の情報で、前者は自治体が、後者は医療機関が入力する。長丁場となる接種期間に、双方が適切に入力を続けなくてはならない。医療機関の入力は(接種作業などで忙しくなり)、後回しになり、情報の更新が遅れるのではないかとの懸念が出ている。集団接種なら会場で自治体職員が代行することもできる。しかし、都市部では個別の医療機関で接種する形が増えつつあり、情報の更新が医療機関任せになりそうだ」

   もともと今回の混乱は、最初からシステムが3つもあり、1つに統合できないままワクチン接種がスタートしたことから生じた。昨年の「国民一律現金10万円給付」の際に全国の自治体で起こったオンライン入力の大混乱と同じ事態だ。

   日本経済新聞は、こう結んでいる。

「国が主導した接種記録システムは、9月に発足するデジタル庁の試金石とされる。本来なら入力を自動化し、3つを統合して自治体や医療機関の負担を減らすべきだった。今回は開発期間の制約などからやむを得ないが、医療機関や自治体に負担を強いている現状をデジタル庁の教訓にすべきだ」

   命に関わるワクチン接種をデジタル庁発足の教訓などにされては、国民はたまったものでないだろう。

(福田和郎)

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