2024年 4月 20日 (土)

ドイツはついに「緊急ブレーキ」導入! コロナ検査日常化で「第3波」封じ込めなるか?(神木桃子)

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   「4月になれば、制限も緩和されるはず」

   そんな淡い期待はつゆと消え、新型コロナウイルスの封じ込めは、ひと筋縄ではいかないと、いまの状況は突きつけてきます。

   2020年の年明けから世界で猛威を振るい始めましたが、ここドイツでも感染防止対策として商店や学校の閉鎖、接触制限などの規制を導入。そして、感染拡大のスピードが緩やかになっているとして、一部の制限措置の緩和が決定したのが、昨年の4月でした。

   あれから一年がたったいま。昨年末から続くロックダウンによって、いったんは落ち着いたにもかかわらず、3月から再び感染が拡大。イースターの連休で人の移動が多かったことも起因となり、現在、ドイツは「第3波」に見舞われています。そこで独連邦議会は2021年4月21日に改正感染症予防法を可決。「ほかに道はない」と、ドイツ全土で統一的な「緊急ブレーキ」と呼ばれる制限措置の導入を決定しました。

  • ドイツでは誰でも週1回、無料で迅速に抗原検査が受けられるように、商店街の薬局では店先に簡易テントを設置している(筆者撮影)
    ドイツでは誰でも週1回、無料で迅速に抗原検査が受けられるように、商店街の薬局では店先に簡易テントを設置している(筆者撮影)
  • ドイツでは誰でも週1回、無料で迅速に抗原検査が受けられるように、商店街の薬局では店先に簡易テントを設置している(筆者撮影)

7日間指数100を超えたら緊急ブレーキ発動!

   今回の措置を実施する基準となるのが、「7日間指数」と呼ばれる、過去7日間の人口10万人あたりの新規感染者数です。市や群などの地域ごとに、「3日連続でこの数値が100を超えた場合」2日後から、以下のような暫定措置が適用されます。

≪緊急ブレーキ時の制限措置≫
・プライベートの集まり
屋内外で集まれる人数は自分の世帯と別世帯の最大1人まで
(14歳未満の子どもは数に入れない)
・夜間の外出制限
午後10時から午前5時までの外出は仕事や医療など正当な理由がある者のみ
・店舗、サービス業
事前予約と陰性の検査結果を有する場合のみ買い物が可能
(食料品店など生活に必要とされる店舗やサービス業は対象外)
ただし、7日間指数が150を超えたら閉鎖
・娯楽、文化施設
すべて閉鎖
(動物園および植物園の屋外エリアは例外)
・学校や保育施設
コロナ検査を週2回実施したうえで、対面とオンラインの混合授業を実施
ただし、7日間指数が165を超えたら対面授業は禁止、また緊急保育のみ提供
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7日間指数が制限措置実施の基準に。ニュースサイトでは、日ごとの新規感染者数ではなく、7日間指数の推移状況を地図やグラフで表示している(出展:ZEIT ONLINE)

   4月27日現在、ドイツ全体の7日間数値は175。9割近い地域が緊急ブレーキ発動対象となっています。日本でも7日間指数は感染状況を示す指標のひとつですが、最も高い「ステージ4」の数値は25人以上。ケタの違いに感染状況の深刻さを改めて感じさせられます。

ショッピングの前にはコロナ検査?!

   感染が拡がるなか、日常的になっているのがコロナ検査です。以前より、老人ホームや病院、学校などでスタッフや入居者の定期的な検査に使用されていた「迅速抗原検査」。この検査を、3月8日からすべてのドイツ市民が、少なくとも週1回無料で受けることができるようになりました。

   検査場所は、保健所が設置した検査センターや、委託された薬局、開業医による診療所など。自分で検査場所を調べ、予約して検査を受ける流れです。検体を採取したその場で検査をするため、おおむね1時間もしないうちに検査結果を受け取ることができます。

   前述のように、7日間指数が100を超えた地域では、事前予約をした買い物の際に陰性証明の提示が義務。週末になると検査用の簡易テントの前に行列ができる、なんて光景も見慣れてきました。

   同様に、セルフ検査キットの利用も広がっています。ドイツ連邦機関によるタスクフォースは、1億3000万以上の検査キットを3月から4月までの2か月間分として調達。薬局やドラッグストアで販売しているだけでなく、州政府による学校や幼稚園などへの配布や、企業による従業員への配布などで、市民が自己診断する機会が増えています。

家庭でのセルフ検査キットの利用も広がっている。だ液を用いるタイプ(左)と咽頭拭い液を用いるタイプ(右)の2種類がある(筆者撮影)
家庭でのセルフ検査キットの利用も広がっている。だ液を用いるタイプ(左)と咽頭拭い液を用いるタイプ(右)の2種類がある(筆者撮影)

   先日も、娘の通う幼稚園で希望者にセルフ検査キットが配布さればかり。あくまでも任意ですが、週2回、家庭で検査を実施するよう推奨されています。検査キットの使い方を紹介する子供向けの人形劇の動画が友人から送られてきたときには、ここまで生活の一部になってきたのかと驚きました。

   学校勤めの夫を持つ友人は、「(夫は)週に2回検査しているので安心な一方、いつ陽性判定が出るか気が気じゃない」と話しています。

   検査が広く実施されること自体は、感染防止のために歓迎すべきことですが、ますます新型コロナウイルスに翻弄されているような気もします。緊急ブレーキの暫定措置は6月30日までとなっており、まだまだ終わりは見えてきません。

(神木桃子)

高橋 萌(たかはし・めぐみ)
高橋 萌(たかはし・めぐみ)
ドイツ在住ライター
2007年ドイツへ渡り、ドイツ国際平和村で1年間の住み込みボランティア。その後、現地発行の日本語フリーペーパー「ドイツニュースダイジェスト」に勤めた。元編集長。ドイツ大使館ブログでは「ドイツ・ワークスタイル研究室」を担当。サッカー・ブンデスリーガ大好き。日本人夫とバイリンガル育児に奮闘中。
Twitter: @imim5636
神木桃子(こうぎ・ももこ)
神木桃子(こうぎ・ももこ)
ドイツ在住ライター
島根県生まれ、東京・多摩育ち。物事の成り立ちを知りたいと大学では有機化学を専攻。小売業界でのオーガニック製品や地域産品のバイヤーを経て、2014年よりドイツに移住。「もっと心地よくグリーンな暮らしへ」をテーマに、ドイツのマーケット情報やトレンド、ライフスタイルについて執筆活動中。3歳になる娘と日本人の夫との3人暮らし。
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