2021年 5月 14日 (金)

部下のやる気を削がず、高い業績目標を納得させる〈後編〉(前川孝雄)

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   パワハラやセクハラなどハラスメント防止の法整備が進んでいますが、企業では貴重な人材の採用・定着・育成のためにこそ、ハラスメントが起きにくい組織風土創りが求められます。

   多くの上司層は悪気がないにも関わらずハラスメント・リスクを冒しがちです。またハラスメント・リスクを恐れて部下とのコミュニケーションが希薄になる職場も増えつつあります。こうした背景を踏まえて、本連載では管理職や経営者など上司層に向けてハラスメントを予防する上司力について解説します。

   前回掲載したCASE 「とにかく目標必達で頑張ってほしい!」をもとに、上司の部下に対する対応のあり方を考えてみましょう。

  • 「部下自らの意志で、成長への『3割ストレッチ目標』を定める」
    「部下自らの意志で、成長への『3割ストレッチ目標』を定める」
  • 「部下自らの意志で、成長への『3割ストレッチ目標』を定める」

部下の思いを正しく捉える(価値観を知る)

◆ CASE 「とにかく目標必達で頑張ってほしい!」
参考リンク:部下のやる気を削がず、高い業績目標を納得させる(前編)J-CASTニュース 会社ウォッチ2021年5月3日付

(1) 生産性を意識して、より効果的・効率的に仕事がしたい

   では、部下はどう受け止めているのでしょうか。このCASEでは、まず部下は目標自体の妥当性に疑問を呈しています。目標未達の原因には、市況や製品需要など諸々の要因が絡みます。それらをまったく加味せず、旧態依然のやり方で闇雲に行動しても成果は期待できません。

   優秀な人ほど、生産性を重視する、効果的で効率的な営業への革新を望んでいます。期待とやりがいが持てる目標と手法なら少々の無理も覚悟できますが、無謀と感じるノルマには強いストレスを感じるのです。

(2) 組織や上司の信頼と承認のもと、自信をもって仕事をしたい

   また、部下は上司が自分たちの努力や気持ちをわかってくれていないという失望感を抱いています。上から機械的に仕事や目標を割り振られ、失敗や未達を責められるのでは、ストレスだけが増幅します。

   本来望まれるのは、組織や上司との信頼関係のうえに、仕事の目的と目標が共有でき、創意工夫が許される職場環境です。目標にやりがいを感じられ、上司とも苦楽を共にできると思えるなら、やや背伸びをした目標にも自信をもってまい進できるものです。

ハラスメント予防の心構え(あり方を定める)

(1) 部下の自律的なタイムマネジメントを促し支援する

   そこで、まず上司に必要なことは部下を信じて仕事を任せつつ、業務内容と負担を的確に把握し、必要な仕事の取捨選択と調整を図ることです。ただし、上司が部下の日々の仕事を直接コントロールしようとすることは困難ですし、望ましい形でもありません。

   部下自らが仕事のタイムマネジメントと調整に取り組むことをサポートし、要所要所で支援することです。部下の自律性を促しながらも、上司が直接介入、調整すべき内容や場面では、しっかり対応する心構えが大切です。

(2) 部下自らの意志で、成長への「3割ストレッチ目標」を定める

   一方、部下の負担をすべて軽減することが、望ましい支援ではありません。部下の育成のために、敢えてやや高いレベルの仕事を任せ、達成を見守りつつ支援することは、決してハラスメントではなく、成長支援のOJTそのものです。

   そのためには、部下自身が自分の成長につながると感じられる3割程度のストレッチ(背伸び)を加えた仕事の目標を、部下自らに決意させることが大切です。

   人は内発的に動機づけられた高めの目標であれば、進んでチャレンジするものです。

日常的な予防を図る(やり方を変える)

(1) 定期的な業務把握と支援・調整を図る

   部下自身によるタイムマネジメントの支援には、本人が仕事の計画と進捗状況を記入し管理できる週報などのフォーマットを定め、共有する方法が有効です。これを用い部下は上司に週単位等で報告・相談し、上司は仕事の進捗状況と課題を把握します。

   課題の解決方法はまず部下自身に考えさせたうえで、必要なアドバイスを行います。また、業務過重に陥る恐れがあれば、仕事全般の棚卸しを促し、緊急性と重要性の視点で取捨選択を行います。中止や延期、縮小する仕事、他者へ移譲する仕事、そして目標に向けてアクセルを踏むべき仕事を整理するのです。

(2) 参画型で目標達成と自己啓発・成長の方法を検討する

   組織やチームの目標を前提としながらも、達成方法については部下と丁寧に相談しすり合わせることが大切です。目標の考え方と重要性を共有したうえで、どうすれば達成できるか、困難な点は何か、組織や上司がバックアップできる点は何かなど、部下自身に考えさせ、意見を傾聴します。

   その際に大切なことは、その仕事を通した部下の成長への視点を持ち、行動計画に組み込むことです。押し付けのノルマではなく、自己成長のためのストレッチ目標なら、困難を乗り越えながら前向きに取り組めるのです。(前川孝雄)

※ 職場のハラスメント予防についてさらに詳しく学びたい方、また職場での研修導入を検討される方は、弊社FeelWorksが開発した「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」をご参照ください。

前川 孝雄(まえかわ・たかお)
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。(株)リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業㈱FeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年(株)働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)等33冊。最新刊は『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)及び『本物の「上司力」』(大和出版)
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