2021年 8月 2日 (月)

絶好調の米国株 どう読む! まだまだ上昇、それとも下落か?【投資の基本を知る その5】(小田切尚登)

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   2020年末に「だから、アメリカの株を買いなさい!」(J-CASTニュース 会社ウォッチ「だから、アメリカの株を買いなさい!【投資の基本を知る その4】」2020年12月28日付)という記事を書いた。

   今回はそれを検証しつつ、今後の指針を書いてみたいと思う。一つの投資方針が半永久的に続けられることはなく、市場環境の変化を見ながら常にそれの妥当性を見直していく必要があるからだ。

  • 絶好調の米国株をどう読むか!?
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米国株は年末から5か月で12%アップ!

   私がこの記事を書いた昨年末に、米国を代表する株価指数であるS&P500(米国の上場企業500社の株価を加重平均して求めた指数)は3756ドルであった。当時はコロナ禍で2020年3月に2100ドル台まで落ち込んだのが持ち直して、史上最高値に上がったところだった。

   その段階で「買いなさい!」となどと書いた私のことを、訝しく思った人もいただろう。

   それがこの4月29日には、S&P500の終値が4211ドルにまで上昇した。つまり、5か月間で約12%上昇したということだ。

   さらにドル円の外国為替レートが昨年末から約103円から約108円に上昇したので、円ベースでみれば17%以上上昇したことになる。読者のみなさんに儲けていただいたとすればこんなに嬉しいことはない。

   ちなみに同じ時期に、日経平均株価は2万7444円から2万8812円へ、約5%上昇した。

   しかし、終わったことをあれこれ言っていても仕方がない。問題は、これからどうなるかである。相場は上がることもあれば下がることもある。そうそういつまでも良い日が続くはずがない。米国株が最高値まで上がってしまったら、そろそろ下がっていくのではないか――。そう考えても不思議はない。

   株式市場をめぐる環境は絶好調に見える。何より米国経済の調子が良い。コロナ禍で経済は一度大きく失速したが、ワクチンのおかげでそのくびきから解き放たれた。2021年第1四半期(1月~3月)のGDP(国内総生産)は、年率で6.4%の伸びを示した。2019年に記録したGDPの史上最高に迫る数値だ。

   なかでも、大手ハイテク企業の伸びはすさまじい。コロナ禍で外出がままならない中で、iPhoneを使い、グーグルで検索し、アマゾンで買い物をし...... という「巣ごもり」傾向が加速した。アップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフトの4社の時価総額の合計は800兆円を超え、東京証券取引所の全上場企業3770社の時価総額の合計約700兆円を、大きく上回る。

コロナ禍は本当に収束するのか?

   好調なのはハイテクにとどまらない。住宅が売れ、自動車が売れ、家具が売れる状況となっている。カネ余りの状況が続き、失業率も最低レベルとなった中で、消費者の財布が緩んでおり、それが実体経済の産業を活発にしているのだ。

   金融、エンタメ、旅行といった業種も伸び始めている。それを後押ししているのは、バイデン大統領による経済対策と、米連邦準備制度理事会(FRB)のゼロ金利政策である。

   もちろん問題点もある。一つは、株価があまりにも高くなったため、さすがに「バブル」なのでは、という懸念の声が出ていることだ。

   S&P500の500社のPEレシオ(株価を一株当たり利益で割った数字)は平均40倍を超えている。2010年からの10年間、PEレシオが20倍前後で推移したのに比べると、倍増しているわけだ。

   株価が40年分以上の利益を上回っている、というのは高すぎるという見方は当然あり得る。今はコロナ禍後の開放感が支配しており、「バブル」という言葉はそれほど聞かれないが、何らかのきっかけで株価が大きく下がり始める可能性は考えておく必要がある。

   実質的な問題点もいろいろある。インフレへの懸念、金利の上昇の可能性、借金が国のレベルでも企業のレベルでも大きく増えていること、原材料価格の高騰、賃金の上昇、バイデン政権に対する心配、コロナ禍が本当に収束するか、といったことだ。

   もう一つ最近の重要な問題は、バイデン米大統領が富裕層に対してのキャピタルゲイン課税(資産価格の上昇分にかかる税金)を大幅に強化することを発表したことだ。これには二つあって、一つは100万ドル以上の利益を得ている投資家については、現行の税率23.8%から39.6%に引き上げるというもの。これに連邦税が加わると43.4%となり、さらに州税も加算されると50%を超える場合も出てくる。

   もう一つは、プライベートエクイティなどの投資家が得た収入に対し、これまで最大で23.8%というキャピタルゲイン課税の税率を適用していたのを、通常の所得税の37%を徴収するというものだ。

   バイデン政権にしてみると、国内のインフラ整備に莫大なカネがかかるので、少しでも国民に、その中でも富裕層に負担してもらいたいと考えるのは当然だ。株式のキャピタルゲインは富裕層が利益を得ている割合が圧倒的に高いので、そこを狙い撃ちにした。あまりにも広がった貧富の差を叩くという政策的な意図も、そこにはある。

米国株は魅力的な投資対象だけど......

   そこで今後の投資戦略であるが、私としては今後1、2年の期間では、まだまだ米国株の株価は上がっていく可能性が高いというふうに考えている。コロナ禍後の復旧が本格化していく中で、産業は復興していき、人々は前向きな気持ちを持ち続けられるであろう。また、キャピタルゲイン課税が強化されたからといって、資金が大きく逃避する可能性は低いとみている。

   しかし、株価が大きく上がったということは、下落する可能性がその分増えたということでもある。今後、何らかの事柄が引き金になって大きく株価が下がっていく可能性を今まで以上に考えないとならない。

   2022年くらいまでに、そのような事態が起きる可能性は低いと思うが、コロナ禍の例を考えても、これから何が起きるかは誰にも予測ができない。要注意のレベルが上がったということだ。

   結論としては、米国企業の株式は引き続き魅力的な投資対象であると考える。米国株ほど安定して上昇が見込まれる投資対象は他にほとんどないと思う。しかし、下落のリスクは増大しているので、株価が大きく下がっても大丈夫なように、米国株以外の資産を上手にまぜて、リスクを分散していくことが大事になる。

   昨年末は「アメリカの株を買いなさい!」と言い切ったが、今はそこまでは断定はできず「アメリカの株はまだまだ行ける」というくらいの感じである。今後は、これまで以上に米国政府の動向を注意深く見ていく必要がありそうだ。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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