2024年 4月 18日 (木)

地域には、こんないいネタが転がっていた! 【朝礼のネタ本はこれだ!】

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   【5月の特集 朝礼のネタ本はこれだ!】会社で朝礼があり、毎日何かを話さなければならない役職者にとって、ネタ探しは大変だろう。そんな人のために、5月は「朝礼のネタ本」を随時紹介していきたい。

   有名人のエピソードや雑学系のネタばかりでは、飽きられてしまうだろう。全国のちょっといい話を集めたのが、本書「47都道府県の底力がわかる事典」である。月刊「文藝春秋」の連載「地方は消滅しない」をまとめたもので、各都道府県から1つずつ、地域で頑張っている取り組みを紹介している。

   とりわけ地方の企業では、どこでも人口減少が問題になっているだけに、関心を持たれるに違いない。

「47都道府県の底力がわかる事典」(葉上太郎著)文藝春秋
  • 「地方」は見どころがいっぱい!(写真は、名古屋城)
    「地方」は見どころがいっぱい!(写真は、名古屋城)
  • 「地方」は見どころがいっぱい!(写真は、名古屋城)

高齢化率全国ナンバーワンの村の「炭グルメ」

   著者の葉上太郎さんは、地方自治ジャーナリスト。全国紙記者を経て、2000年に独立。著書に「日本最初の盲導犬」、「石巻『津波拾得物の物語』」、「都知事、不思議の国のあるじ」などがある。

   町おこしや移住者の話のほか、ユニークな名産物の話が多い。どこから読んでもいいが、自分の住む地方の話から紹介していくと、親近感を持たれるだろう。本書から、いくつか紹介しよう。

   群馬県南牧村は1000メートル級の山々に囲まれた村だ。人口約2000人のうち65歳以上が1227人だから61.3%が「高齢者」という高齢化率全国ナンバーワンの村だ。この村は今、「炭グルメ」の村として売り出している。

   村の森林組合が、間伐材で炭を焼く機会を1995年頃に導入。できた炭を菓子店に持ち込んだ。炭を入れた饅頭は、ざらざらとした炭が舌に残り、とても食べられたものではなかった。微粉に加工すると使えるようになった。飴、パイ、饅頭、くず湯、麺と広がり、炭ラーメンは県外からも客が来るほどの人気に。

   すべて売れ行きのいい商品ばかりではない。地域おこしの商品は、少し売れなくなったら、販売を止めてしまうのが常だが、南牧村ではそうではない。「あるものを大事にして、じっくり育てる」という昔からの行動原理で、創り上げた「炭グルメ」商品を作り続けているという。「高齢者の多さも捨てたもんじゃない」と結んでいる。

「待ち残し」で残ったまち

   大分県臼杵市は人口3万8000人ほどの小さなまちだ。古いまちで、戦国大名の大友宗麟が城を築いた16世紀から、旧城下町の町割りは変わっていない。江戸時代だけでなく、明治、大正、昭和の木造建築物が軒を連ねる。そんなレトロな雰囲気に惹かれ、約3年前から毎年200人ほどが移住しているという。

   時代がまちに合ってくるまで、待ち、残そう。前市長はそうしたまちづくりを「待ち残し」と呼んだそうだ。

   もともと昭和初期から「まちを残そう」という住民運動があったというから先進的だ。大分県は江戸時代、小藩が分立した。臼杵藩は5万石と小さかったが、人材育成に力を注いだという。作家の故野上弥生子も臼杵で生まれた。生家は改修され、「野上弥生子文学記念館」になった。

   こうした動きに突き動かされ、市はまち並み保存に乗り出す。保存が難しくなった建物の公有化を進めた。ただ、「待つ」だけでなく、臼杵の人々は積極的に残してきたのだ、と葉上さんは評価している。

ごみリサイクル率日本一の鹿児島・大崎町

   鹿児島県大崎町はごみのリサイクル率が82.0%と12年連続で日本一となった町だ。かつてはごみ焼却場がなく、埋め立て処分場に何でも捨てていた。その処分場が2004年の満杯予定まで持たないことがわかり、延命のため、1998年から瓶、缶、ペットボトルの3品目から分別を始めた。

   多品目の分別を進めるにあたり、細かな品目は、月に一度の資源ごみ回収日に、集落ごとに収集場に持ち寄り、話し合いながら分ける「共同分別方式」にした。

   分別品目は現在、27にまで増えているという。住民たちは月に一度の資源ごみ回収を楽しみにしている人もいるそうだ。

   分別のカギを握っているのは、ごみの6割を占める生ごみだった。堆肥化のための有機工場も作り、発酵させ、完熟堆肥にしている。菜の花を栽培し、菜種油は使った後で回収し、軽油代替燃料のBDF(バイオディーゼル)にし、ごみ収集車で使うというシステムが完成した。

   分別されたごみの売却益は年間約800万円。埋め立て処分場も40~50年分延命した。また、町役場はリサイクルシステムの「輸出」を始めた。インドネシアの自治体の分別リサイクルを支援している。

   このほかに、「借金の町」をキッズパワーで元気にする青森県大鰐町、原発事故をアルコールツーリズムで乗り越える福島県二本松市(旧東和町)、日本最強の海女集団がいる石川県輪島市海士町、関西最大のアマゴ養殖場を集落が経営する奈良県野迫川村など、各地の「いい話」が印象に残った。

   政府が打ち出す「地方創生」の施策は成功しているとは言えない。もともとあったものを人々の知恵と努力で生かしている例が本書に多いと思った。そんな地域の成功例は、企業でも参考になるのではないだろうか。

   誰でも朝礼でスピーチできる職場だったら、そんなアイデアを話してみてはどうだろうか。正規のプロジェクトだと根回しに時間がかかるし、発議者も限定される。朝礼なら言った者勝ちだ。つまらない朝礼の場が一転する可能性もある。そんなことまで空想させるパワーあふれる一冊だ。

  「47都道府県の底力がわかる事典」
  葉上太郎著
  文藝春秋
  1320円(税込)

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