2024年 4月 26日 (金)

経済界も反旗! 菅政権のコロナ対策「無茶ぶり」と「脅し」に無言の抗議(1)

「高齢者のワクチン接種に社内診療所を使わせろ」
「在宅ワークを達成させるために、企業の名前と数字を公表する」

   やることなすこと、行き当たりばったりのくせに、要求だけは「脅し」まがいの上から目線......。

   政府の新型コロナウイルス対策に協力を惜しまなかった経済界も、さすがに堪忍袋の緒が切れたようだ。

   各自治体の知事の反乱に続き、経済界にまで反旗を翻され、お先真っ暗の菅義偉首相。大丈夫か、ニッポン!

  • 経済界に「脅し」で在宅ワーク率7割を達成させようとする西村康稔経済再生担当相
    経済界に「脅し」で在宅ワーク率7割を達成させようとする西村康稔経済再生担当相
  • 経済界に「脅し」で在宅ワーク率7割を達成させようとする西村康稔経済再生担当相

高齢者のワクチン接種に会社の診療所を開放せよ

   ことの発端は、河野太郎行政改革担当相(ワクチン担当大臣)が2021年5月13日、企業にワクチン接種のために企業内診療所の提供を求めたことだ。

   毎日新聞(5月13日付)「河野太郎氏 企業にワクチン接種の協力要請 診療所や産業医活用」は、こう伝える。

「河野太郎行政改革担当相は5月13日、経団連の冨田哲郎副会長(JR東日本会長)と会談し、企業の診療所や産業医を活用した新型コロナウイルスワクチン接種の促進を要請、地域の高齢者らに対する接種にも協力を求めた。冨田氏は会談後、記者団に『企業にとってもワクチン接種は重要な課題だ。最大限協力したい』と述べ、加盟企業に対し早期に働きかけを行う考えを示した」

というのだ。冨田氏は記者団に、

「工場団地など複数の企業で共通の医療施設を活用することもできる」

と強い協力姿勢を示したのだった。

   政府が企業の診療所向けに供給を考えているのは、米モデルナ製のワクチンだ。読売新聞(5月26日付)「職場接種にもモデルナ製、産業医らが社内の診療所で実施...家族も対象に検討」によると、話はさらに具体的になった。

「厚生労働省は、米モデルナ製のワクチンを大規模接種会場に加え、職場での接種にも活用する方針だ。現在接種が進む高齢者や、基礎疾患を持つ人などの優先接種と並行して実施する可能性もある。職場での接種は、(1)産業医らが社内の診療所で実施(2)外部の機関に委託し、会議室などで実施(3)提携する外部の医療機関で実施、などさまざまなパターンを想定。複数企業が合同で実施したり、社外の施設を借りて接種したりするケースも認める。社員の年齢による優先順位の制限は設けず、家族を対象に加えることも検討している」

   大企業の中には社内診療所があり、常駐の医師や派遣された産業医などが治療にあたっているところが少なくない。そうした診療所を地域の人に開放してワクチン接種の場にするばかりでなく、従業員やその家族も併せてワクチン接種を進めようという計画なのだ。

事前の打診なしでいきなり「無茶ぶり」する政府

企業の社内診療所を高齢者接種の場にしようとする河野太郎ワクチン担当相
企業の社内診療所を高齢者接種の場にしようとする河野太郎ワクチン担当相

   日本経済団体連合会の冨田哲郎副会長は「協力したい」と乗り気だったが、現場の企業幹部たちからは「現実を知らない空論だ」と猛反発が起こったのだった。産経新聞(5月26日付)「経済界、事前打診なき政府の『無茶ぶり』に困惑」が、たまりにたまっていた財界人の怒りをこう伝える。

「新型コロナ感染拡大の抑制に向けた取り組みをめぐり、経済界が政府からの突然の要求に困惑している。政府は今月(5月)に入り、在宅勤務などのテレワークの企業ごとの実施水準の公表や、企業の診療所を使った地域住民へのワクチン接種を経済界に要請。しかし、経済界は企業活動の実態を踏まえれば、満額回答での実施は難しいとの立場だ。これらの要請は担当大臣が経済界との会談の場で事前の打診もなしに打ち出した経緯もあり、政府の調整力不足への不満も出ている」

   産経新聞はまず、社内診療所を地域の人々のワクチン接種の場にすることに関して、こう指摘する。

「河野太郎大臣は経済界に対し、企業が所有する社内の診療所や病院を活用し、社員だけでなく、地域住民も対象にしたワクチン接種への協力を要請した。日本経団連の冨田哲郎副会長は、ほぼ全面的に協力する考えを示した。だが、経済同友会からは、企業内診療所での地域住民接種はセキュリティー面で課題があり、難しいとの声も上がる。日本商工会議所の三村明夫会頭は『中小企業では産業医は掛け持ちのケースが多く、(職場での)職域接種自体が難しい』と指摘する」

   近所の大勢の高齢者に会社の中に入ってウロウロされたら、セキュリティーも何もあったものではない。ライバル会社の人間が入ってこないとも限らない。診療所で接種するとしても、待機するための会議室なども用意しなくてはならない。だいいち、予約の受付や順番の案内、整理などは誰がやるのか。そのために多くの社員を割いては会社の事業に支障が出てくる。

(福田和郎)

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