「ニューノーマル・マネジメント」へのヒント
「組織風土と制度はクルマの両輪」と公言してはばからず、その後も副業許可や最長6年の育児休業および介護休業制度などを続々と導入。青野氏自ら率先して3度の育児休業を取得するなど、多様性を尊重する風土の定着を積極的に進めています。
青野氏が手掛けた改革の真意を追いかけてわかるのは、氏がサイボウズで行なってきたことは「真」のダイバーシティに他ならないということです。
ダイバーシティは我が国の多くの企業がテレワークに先立って、その取り組みを意識し始めた新たなマネジメントのキーワードです。しかし実際のところ、正しい理解をもって取り組んでいるケースは圧倒的に少なく、大半は「女性活用しています」的なポーズであったりして、本来的な趣旨である多様性の尊重からはほど遠いのです。
すなわち青野氏の経営哲学から逆算的に教えられるのは、テレワークというもの自体が本来は「多様化=ダイバーシティ」支援の重要ツールであるということなのです。
それに対して、今のコロナ禍における企業のテレワーク対応はどうでしょう。感染防止がその導入のきっかけであったとしても、コロナ禍環境1年を経て徐々にテレワーク推進からリアル中心に逆戻りしつつあるビジネス環境をみるに、大半の企業においてはテレワークを「多様化=ダイバーシティ」と結び付けては考えてられていないと思え、なんとも残念な印象を拭えないところなのです。
経営者としての大きな挫折から、多様化をキーワードとした経営改革の一環でテレワークを10年前に本格導入し、真のダイバーシティ経営の実現に取り組んで成果をあげてきたサイボウズ青野社長。彼の経営哲学は、アフターコロナに向けたニューノーマル・マネジメントのあり方を探る大きなヒントとして、多くの企業経営者に知って欲しいと思うところです。(大関暁夫)