「次の首相は誰だ?」――。菅義偉首相の突然の退陣表明で注目を集める自民党総裁選。新型コロナ禍の出口は見えず、国民の強い不満が渦巻くなかで、衆院選をにらみながら「選挙で勝てる顔」選びが始まっています。嬉々として暗躍する長老議員や、選挙を控えて右往左往している若手議員たちの姿に、当初感じた「新鮮味」は薄れる一方ですが、海外メディアはどう見ているのでしょうか?今のところ関心を集めているのは、あの「異端大臣」のようです。英紙は河野太郎氏を「政治的異端者」と報じる菅義偉総理大臣の自民党総裁選、出馬断念を受けて幕を切った自民党の「ポスト菅レース」。河野太郎行革担当相や岸田文雄前政調会長、石破茂元幹事長に加えて、高市早苗前総務相など新たな顔も加わって「混戦」の様相を呈してきました。レースの勝者予想が日々コロコロと変わるなか、海外メディアは各候補者をどのように報じているのでしょうか?今のところ、海外の注目を集めているフロントランナーは「この人」のようです。TaroKono,thepoliticalmaverickwhocouldbeJapan'snextprimeminister(政治的異端者である河野太郎氏が、日本の次期首相候補に:英紙ガーディアン)maverick:異端者、一匹おおかみ記事では、河野太郎氏のことを「outspoken」(ずけずけものを言う)、「socialmedia-savvy」(ソーシャルメディアに精通している)と紹介。「SNSで多くのフォロワーを持ち、若者の人気が高い」河野氏が、次期首相選びの先頭を走っていると報じています。Japan'svaccineczarTaroKonois'mostpopularpick'toleadgovtafterSuga(日本の「ワクチン皇帝」こと河野太郎氏が、「ポスト菅レース」で一番人気だ:インドメディア)czar:皇帝、権力者菅首相の退陣意向表明を受けて共同通信社が急遽実施した「次の首相候補」に関する世論調査で、河野太郎氏がトップだったことを取り上げた報道が目立ちました。やはり「国民人気」は大きなインパクトがあるようです。それにしても、「ワクチン大臣」ならぬ「ワクチン皇帝」とは面白い表現です。一部メディアで報じられている河野太郎氏の「独裁ぶり」を表していて、ひねりの効いた見出しだと感心しました。単語一つで伝わるニュアンスが異なることを示す「好例」だと思います。関心度はイマイチ?個性なき「ただの候補者」たちそれでは、他の候補者のことはどのように報じられているのでしょうか?早々に総裁選への出馬を表明した岸田文雄氏の評価は......?Japan'srulingpartyleadershipcontendersvowtodefeatdeflation(日本の与党総裁の候補者が、デフレ打開を誓った:米ブルームバーグ通信)contender:候補者vowto:~を誓うJapanPMcontenderKishidatargetsincomedisparity日本の首相候補岸田氏が所得格差是正を掲げた:ロイター通信)う~ん、残念ながら岸田氏については、ただ単に「contender」(候補者)と紹介しているメディアがほとんどでした。さらに、「高市候補の政策と同じ」と評している記事もあり、「個性のなさ」が伝わってきます。次に、河野太郎氏と並び「国民人気が高い」とされる石破茂氏への海外メディア評を見てみましょう。RivalcampmightbackJapan'sKono(ライバル陣営が日本の河野氏を支援するかもしれない:ロイター通信)Japan'sKonomaygetrival'sbackinginPMrace(日本の河野氏は、次期首相レースでライバルの支持を得る可能性:ブルームバーグ通信)石破氏が正式に総裁選への出馬を表明していないこともあり、石破氏にフォーカスした海外メディアの記事はあまり見当たりませんでした。今のところ「河野氏のライバル」と評されている石破氏ですが、混沌としたレースはまだまだ続きそうです。今後の展開によっては「大本命」に化ける可能性もあり、そうなったら海外メディアの報じ方もガラッと変わることでしょう。最後に、すっかり影が薄くなってしまった菅首相に関する話題です。自身が「開催は国際公約」とまで言い切った東京パラリンピック開催期間中に、突如退陣を表明した菅義偉首相。「策士策におぼれる」を地で行くような退任劇を海外メディアはこのように伝えました。JapanesePMYoshihideSugaresignsaftercriticsblasthisresponsetoCovid-19(日本の菅義偉首相は、新型コロナウイルスの対応への対応が強く非難されて、退陣する)blast:爆風、強い非難Japan'sprimeministerhasbeenforcedfromofficeduetothegovernment'shandlingofcoronavirus(日本の首相は、新型コロナウイルス対策のせいでオフィスから追われることになった:英メディア)印象に残ったのは、「淡々と」退陣表明を伝えるメディアが多かったことです。世界中の注目を集めるパラリンピック開催中の電撃発表は、もっと驚きをもって報じられてもよさそうですが、国内外の注目はすでに「次の首相候補」に移っているようです。(井津川倫子)
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