前編のCASE「ちゃんと真面目に仕事してるのか?」をもとに、上司の部下に対する対応のあり方を考えてみましょう。ポイントは、上司が部下の思いを正しく捉え、価値観を知ること。その上で、ハラスメント予防のあり方を定め、日常的に予防することです。部下の思いを正しく捉える(価値観を知る)◆上司と部下との会話参考リンク:「部下の仕事ぶりがわからない!リモートワークでのマネジメントのコツとは?〈前編〉」J-CASTニュース会社ウォッチ2021年9月28日付(1)リモート下のコミュニケーションに配慮がほしい在宅勤務で、上司から業務指示や報告の督促を連日メールされ、ストレスを増幅させる部下が増えています。部下は上司の指示メールに対し、悪い報告や悩みの相談は返しにくいものです。また、勤怠状況の把握のため、朝夕の連絡を強制されたり、パソコン上の管理ソフトで常時状況をチェックされるなどの監視強化で、メンタルを病んでしまう部下も出かねません。リモート下ゆえに、上司からすると悪意はなくとも、部下からすると配慮に欠けるコミュニケーションに憔悴してしまう例が増えているのです。(2)在宅勤務のストレスを理解してほしい在宅勤務は、通勤などから解放され働きやすい一方で、ストレスも大きいものです。CASEのように、仕事と生活の切り替えが難しく、家族への気遣いが絶えません。仕事の片手間に家事や育児に対応せざるを得ず、夜になってやっと落ち着いて仕事に取り掛かれるケースも少なくないのです。また、在宅中の光熱費や通信費など、家計への負担もかかります。プライバシーへの過渡な介入は禁物ですが、こうした部下のストレスや悩みには、十分な配慮が必要です。ハラスメント予防の心構え(あり方を定める)(1)責任の明確化 ~信じて任せた仕事の当事者は部下自身と心得る上司の職責意識からとはいえ、部下に仕事を任せきれず、常時監視しようとする手法では、リモートワークが新常態となる職場のマネジメントはうまくいきません。これからの上司に求められる役割は、部下に指示命令し仕事を強いることではありません。部下と仕事の目的をしっかり共有し、これに沿って部下が自律的に働くことを支援することです。信じて任せた仕事の当事者は部下自身であり、上司は結果責任を取るのです。会社としての、業積評価や人事制度の改定も必要です。(2)仕事の具体化 ~脱あうん! 非言語コミュニケーションを言語化するこれまでの日本企業にありがちだったのは、上司がすべてを語らずとも部下が「あうんの呼吸」でその真意を理解し、空気を読んで行動すべしとするムラ社会的な風土です。しかし、リモートワーク下では、それは通用しません。「部下が自分の考えを理解してくれない」と嘆くのではなく、自分のメッセージを明瞭に言語化し伝える工夫が必要です。「あとで営業状況を報告して」などの曖昧な依頼ではなく、「○日までに○○エリアのお客様のご要望を、箇条書きにして提出してほしい」と、具体的に伝えるのです。日常的な予防を図る(やり方を変える)(1)反応の意識化とツールの熟達化 ~コミュニケーション技法を磨くオンラインでは、お互いの反応がわかりにくく、つい「話しすぎ」や「聴きすぎ」になり、コミュニケーション・ラグが生じます。そこで、話すスピードや声のトーンを時々変化させ、身振り手振りを加えて伝わりやすさに配慮しつつ、「理解できたか」「質問はないか」とこまめに質問し、相手の反応に気を配ります。相手の話を聴く際には、多少オーバーリアクションでも頷きや言葉の繰り返しなどで、相手の話を理解していることを伝えましょう。また、メールやチャット、ZoomやTeams、社内SNSなど、ITツールを各特性に応じて使いこなせる熟達化が不可欠です。上司が率先し、遠隔でのコミュニケーション力を磨きましょう。(2)遠隔での仲間化 ~タコツボ化させないネット・ファシリテーションに努める在宅勤務が長引くと、メンバー間のコミュニケーションも希薄になり、仕事がタコツボ化しがちです。任せた仕事の当事者は部下自身とはいえ、チーム内の連携・協働の力を低下させてはいけません。そこで、上司には、遠隔でもメンバー間の情報交換や報連相の活性化を促し、援け合って仕事を進めるネット・ファシリテーションを意識することが求められます。オンライン・ミーティングでメンバー全員の発言を促したり、メンバー間や他部署との連携が進むように積極的にアドバイスを行うなど、組織や仕事の目的に向けて共に働く仲間意識を盛り上げ、組織エンゲージメントを高める役割も重要になるのです。(前川孝雄)※職場のハラスメント予防についてさらに詳しく学びたい方、また職場での研修導入を検討される方は、弊社FeelWorksが開発した「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶパワハラ予防講座」をご参照ください。
記事に戻る