2024年 4月 27日 (土)

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岸田首相は「消費増税論」を大いに語れ!

   キシダノミクスには「分配論」はあるが、その前提となる「財源論」から逃げている、消費増税を大いに語るべきだ、と主張するのは東京財団政策研究所研究主幹の森信茂樹氏だ。

   「岸田新総理の『分配』と『成長』を読み解く」(10月18日付)で、こう指摘する。

「所信表明演説で岸田総理は、具体的な分配戦略として以下の4つの柱を挙げた。第1に、働く人への分配機能の強化のため賃上げを行う企業への税制支援の抜本強化(法人税減税)。第2に、中間層の拡大と少子化対策で、奨学金制度の改革、子育て支援。第3に、看護・介護・保育などの現場で働く人々の収入を増やすため、安価だった公定価格を見直し、賃金を引上げる。最後に、財政の単年度主義の弊害是正だ。
第1~第3の施策はすべて国の財源を必要とする。しかし総理は財源(負担)に一切触れていないので、国債(借金)の追加発行で賄うということになると考えられる。筆者は、以下の2つの理由から、社会保障の将来像と消費税の議論を解禁すべきと考える」

として、消費増税の議論を大いに進めるべきだ、と2人の元総理の名前を挙げた。小泉純一郎氏と安倍晋三氏だ。森信茂樹氏はこう続ける。

「小泉総理は、『自分の代に消費税は引き上げない』といいつつも、議論は解禁したので、経済財政諮問会議を舞台に『上げ潮派』と『財政健全派』との大議論が行われた。数年にわたり喧々諤々(けんけんがくがく)の大議論が続いた。その結果が、社会保障・税一体改革の基盤となり、さらには財政目標としてプライマリーバランスの重要性が認識されることにつながった。
第2は安倍政権の経験だ。安倍政権は消費税嫌いで、10%を超えて消費税を引上げる議論は封じた。しかし、前政権(民主党の野田政権)の下で消費税の10%への引上げが立法化されていたことが要因だが、結果として、社会保障の充実に取り組むとともに、欧米のような格差拡大を何とか防いできた」

   そして、そのことが安倍氏の史上最長の政権誕生につながったという。だから、森信茂樹氏は最後に、こうクギを刺している。

「分配政策と成長政策は、どちらが先というわけではない。中長期的な絵を描いたうえで、両方を同時に実行していくことが必要ではないか。そのためには、消費税議論は避けられない」

   さらには、岸田総理が就任早々に決断した金融所得税制の見直し延期について、こう添えている。

「これ(金融所得税制の見直し)はパンデミックを経て変化した世界の潮流の下で、垂直的公平性を高め所得再分配を行うことだ。現に米国や英国では、富裕層への負担増、キャピタルゲインの課税強化の方向で議論が進んでいる。
今回、金融所得税制については具体論を議論する前に先延ばしとなったわけだが、『分配』を標榜する政権としては、あまりにも早すぎる方向転換と言えよう。岸田政権は難題を先送りする内閣だという評価になれば、より大きなものを失ったといわざるを得ない」

(福田和郎)

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