フタを開けてみたら自民党の単独過半数維持で終わった衆議院選挙。自民党は選挙前の276議席から若干議席を減らしたものの、単独で国会を安定的に運営できる「絶対安定多数」の261議席を確保しました。一方、野党第一党の立憲民主党が「野党共闘」の効果もむなしく苦戦を強いられたなか、国内外で注目を集めているのが日本維新の会です。とりわけ海外メディアが注目したのは、「right-wing」(右派)で「Twitter-friendly」(ツイッター使い)と評される「あの政治家」でした。岸田政権ピンチ?!「維新の嵐」が大阪を一掃!2021年10月31日に行われた衆議院選挙では、自民党と立憲民主党がそれぞれ議席を減らすなか、日本維新の会が選挙前の約4倍にまで議席数を伸ばすという結果に終わりました。事前の予想をはるかに上回る維新の会の躍進ぶりには、海外メディアもかなり驚いたようです。RightwingpopulistssweepvoteinOsaka(右派のポピュリストが大阪の票を根こそぎさらった:英紙ガーディアン)rightwing:右派、保守派populist:大衆主義者、ポピュリストsweep:嵐が吹きまくる、焼き尽くすIshinnearlyquadrupleditsseatsto41andbecomethethird-largestgroup日本維新の会が4倍近く議席を増やし、第三党になった:ブルームバーグ通信)quadruple:4倍に増える「aweep」は、「箒などで掃く」という意味の動詞ですが、嵐が吹いて「一掃する」とか「場所を焼き尽くす」といった意味もあります。今回は、「維新の嵐が吹いて票を根こそぎさらった」というニュアンスが近いと思います。ガーディアンは、善戦が期待されていた立憲民主党が早々に立ち消える一方で、「atinylocalparty」(小規模な地域政党)に過ぎなかった維新の会が、次から次へと議席を確保していったと伝えています。面白いのは、維新の会が「商人の町」として知られる大阪を、右派ポピュリズムの「citadel」(砦)にした、と評していることです。さらに議席を4倍近く増やした維新の躍進ぶりが、全体的に面白みに欠けた選挙で、「themostintriguing」(最も興味をそそる話題)だったと報じています。同紙は、岸田文雄首相が掲げる「分配」について反対の姿勢を表明している維新が勢力を増すことは、岸田政権にとって「anathema」(呪い)になるのではないかと報じています。当事者である私たちにとって、不安定な政権運営は避けて欲しいところですが、メディア的には「興味をそそる」展開なのでしょう。46歳の吉村知事は「ポップスター」海外メディアも注目する維新の会の躍進ぶりですが、その立役者として名を轟かせているのが大阪府の吉村洋文知事です。「日本政界の期待の星」とまで賞するメディアが現れました。Japan'srisingpoliticalstarisayounggovernorfromOsaka,whoisthefaceofaright-wing,populistparty(日本政界の期待の星は、大阪の若い政治家で、右派とポピュリスト政党の顔だ:インサイダー)吉村知事といえば、うがい薬が新型コロナ対策になると発信した「イソジンうがい会見」を思い出します。意地の悪い(!)海外メディアのことですから、もちろん「うがい薬のパニック買いを引き起こした」と、暗い過去を押さえることは忘れません。それでも、高いコミュニケーション能力とリーダーシップでコロナ禍を率いて、「ポップスターのような人気」を博するに至った、と報じています。さらに、110万人を超えるフォロワー数を誇る「Twitter-friendly」(ツイッターフレンドリー)な政治家であり、46歳という彼の年齢は、「政府の主要な5つのポストが平均71歳の政治家で占められている(インサイダー)」日本において、群を抜いて若いという点も強調されています。46歳の若き「ツイッター使い」の「右派政治家」。今のところ、海外メディアは「お手並み拝見」といったスタンスでしょうか。それでは、「今週のニュースな英語」は「quadruple」(4倍に増える)を取り上げます。「double」(2倍)、「triple」(3倍)と比べてあまりなじみのない単語ですが、これを機にインプットしておきましょう。Ourstockearningquadrupled(我々の株の利益が4倍になった)Thepopulationofthecityhasquadrupled(市の人口が4倍に増えた)Thepopulationofthecityhasquadrupledinthelast30years(市の人口は、この30年間で4倍に増えた)Thecostoflivinghasquadrupledinthelast20years(生活コストはこの20年間で4倍に増えた)それにしても、今回の衆議院選挙でも政権交代は実現しませんでした。コロナ禍での与党の政治手腕が厳しく問われ、動きが激しい他国の選挙と比べたら、日本の選挙は話題性に乏しいのでしょうか。海外メディアの注目を集めるのが吉村府知事だけ、というのも何となく寂しい気がしました。(井津川倫子)
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