2024年 4月 23日 (火)

歯止めかからぬ円安・資源高! 追い風の「三井松島HD」の次の一手? 〈その1〉(慶応義塾大学 八田潤一郎さん)【企業分析バトル】

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   【7本目】食品に始まり、雑貨、クルマ......。相次いで身の回りのモノが値上がりし、気づくとステルス値上げしていることも珍しくない。

   説明するまでもなく急速に進んでいるインフレによるものだが、改めてこれがインフレかと身に染みる思いだ。足元の米長期金利の推移をみると、複数回の利上げによるインフレ抑制のシナリオが織り込まれている水準といえるが、金利差のみならず逆資源国通貨としての側面もあわさり、当面「米国金利高+ドル高円安+コモディティ高」は日本に直撃し、その影響は計り知れない。

   近所のガソリンスタンドの価格も見るたびに上がり、7年ぶりの高値という異常事態になっている。日銀の「2%の物価上昇」目標に向けて動き出したと手放しに喜べるはずもなく、ディマンドプルインフレよりも、明らかにコストプッシュインフレの側面が強く出ている。

   石炭・エネルギーを中心に住宅資材や衣類などを傘下に抱え、東証第1部に上場する三井松島ホールディングス(HD、福岡市)に、注目した。

  • 原油価格の高騰に歯止めがかからない!
    原油価格の高騰に歯止めがかからない!
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燃料資源の急騰、石炭までも波及

   直近で急騰しているのは、天然ガス・原油をはじめとする燃料資源だ。急激な経済活動の動きと異常気象にともなう冷暖房使用の増加に対して、供給が追い付かない。大型ハリケーン「アイダ」の上陸、物流停滞など様々な要因が挙げられるも、「グリーンインフレーション」すなわち、脱炭素に向けたグリーンとインフレを重ねた造語ができるほど、脱炭素の副作用だともいわれている。

   脱炭素は燃料資源の使用を抑えるのだから、需要減による価格低下というシナリオとも一見思えるが、皮肉にもむしろ脱炭素の流れ加速によるコスト負担を強いられることになった。

   従来からコロナによる需要減を見込み、化石燃料開発への投資を控えてきたが、その後の経済活動の回復を受けても脱炭素の世界的潮流を踏まえて、その投資控えが継続している。供給が大幅減となったまま、需要が大幅増となったため、エネルギーの高騰を招いた構図だ。名だたる機関投資家も環境負荷の大きい企業へのダイベストメントを打ち出しており、この潮流は変化しないだろう。

   個別にみると、原油はOPEC(石油輸出国機構)が増産に消極的、天然ガスは一時的な生産障害や気候問題、パイプライン「Nord Stream 2」問題などを除いても、環境負荷が小さい代替エネルギーとして存在感が高まっており、原油・天然ガスともに引き合いが強い。

   加えて、石炭価格までもが急騰しているのが、直近の動きだ。安価で安定供給できるも環境負荷も大きく、旧来型エネルギーとして敬遠されてきた石炭の市況が歴史的な高値圏で推移している。

   背景にあるのが中国の電力不足問題で停電や工場の操業停止が相次ぐなど深刻な事態となっている。中国では石炭火力発電が依然として主力であり、世界の石炭使用の多くを同国が占めているが、中国政府も他国同様、環境対策強化に乗り出したことで、石炭で発電しづらいという事情がある。

   さらに炭鉱の水没や炭鉱事故続発による規制強化などで石炭採掘が鈍り、石炭価格が上昇したことで収益悪化を嫌う電力会社が発電所の稼働率低下を招いたことも一因だ。石炭の輸入も豪中関係の対立深刻化という、外交上の理由で滞っており、代替輸入先の他国も気候・輸送の問題で十分な量の確保に至らず、輸入石炭価格の上昇も招いている。

   中国の石炭爆買いに加えて、高騰している原油・天然ガスに代わり、一時的に相対的に安価な石炭へのシフトも相まって、国際的にも価格が急騰している石炭市況だ。尚、足元では中国政府が価格抑制に乗り出しおり、価格の急落もあるが、引き続き値動きの荒い展開となっている。

石炭価格Global price of Coal, Australia 推移(出所:FRED ECONOMIC DATAより)
石炭価格Global price of Coal, Australia 推移(出所:FRED ECONOMIC DATAより)

   参考リンク FRED ECONOMIC DATAより

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