2022年 5月 25日 (水)

なぜティアは「感動葬儀」を続けられるのか? 「最期のありがとう」を支える人財育成の秘密

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   日本で一番「ありがとう」と言われる葬儀社になる――。

   そんなスローガンを掲げて、故人と遺族に寄り添う「感動葬儀」を手掛けているのが、今年(2021年)創業25年目を迎えた株式会社ティア(愛知県名古屋市)だ。

   新型コロナウイルスの感染拡大は葬儀業界にも影響し、ティアも一時は事業面で厳しい環境にあった。でも、「後悔のないお別れ」は多くの人にとっての自然な思い。そんな心情も重なってか、名古屋市内を中心とする同社では、葬儀件数が伸長したという。

   呼び水となったのが、創業以来のわかりやすい価格体系。そして、地道に続けてきた質の高い「感動葬儀」だ。セレモニーディレクターと呼ばれる社員たちが、遺族の思いに耳を傾けて、故人の人柄にあった「哀悼と感動のセレモニー」を作り上げている。

   もっとも、彼らがこの「究極のサービス業」をやり遂げるには、たしかな教育プログラム、先輩たちのサポートが欠かせない。知られざる「感動葬儀」の舞台裏とは――。

  • 自身の経験も踏まえて「大事なのは人生観、仕事観、死生観」と語る冨安徳久社長
    自身の経験も踏まえて「大事なのは人生観、仕事観、死生観」と語る冨安徳久社長
  • 自身の経験も踏まえて「大事なのは人生観、仕事観、死生観」と語る冨安徳久社長

「最愛の人を亡くした『人』に寄り添えるのは『人』」

「新型コロナウイルスの影響は、多くの人が『死』について考えるきっかけになったと思います。誰にでも訪れる『死』があるからこそ、自分にとって幸せな『生き方』は何か、あらためて考える機会になったと思います」

   こう切り出したのは、「命の授業」の話し手としても知られる、ティア代表取締役社長の冨安徳久(とみやす・のりひさ)さんだ。

   もっとも、同社の事業環境に目を向けると、2020年9月期(2019年10月~2020年9月)の業績は、2006年の上場以来、初の減収減益を経験するなど、厳しさがあった。緊急事態宣言下の2020年春ごろは、葬儀は不要・不急の集まりではないとされたが、集まりにくい雰囲気があったからだ。しかし、ティアでは2020年7月以降、名古屋市内を中心とする既存店で、次第に葬儀件数が伸びたという。

「葬儀は、二度とその人と会えなくなる、最期のお別れの場。緊急事態宣言下では、その本質に思いが至らず、本来呼ぶべき人(親戚や友人知人など)が参加できないケースも散見されました。でも、やっぱり葬儀は、大切な人をお見送りする、やるべき儀式。私たちは感染予防対策を万全にして、社員を通じてお客様に『後悔しないようにお別れしてください』とお伝えした。そうした働きかけも、葬儀件数増につながったのだと思います」(冨安さん)
「相手のことを本気で考えられる人、根が明るい性格はこの仕事に向いている」と冨安社長
「相手のことを本気で考えられる人、根が明るい性格はこの仕事に向いている」と冨安社長

   コロナ禍の業績を支えたのが、「感動葬儀=ティア」の認知度だろう。現場を任されているセレモニーディレクターは、故人と遺族に寄り添う姿勢を貫いてきた。ティアの葬儀は「人」によって、差別化されているといってよい。

「どんなに時代が進んでデジタル技術が発達しても、最愛の人を亡くした『人』に寄り添えるのは『人』。これは、いつまでも変わらないと思います」(冨安さん)

   冨安さんは「人材」ではなく、「人財」と表現し、社員には大きな期待と信頼を寄せている。だが、どんな人にも、右も左もわからない「若かりし日」があったはずだ。

   そこで大事なのは、教育。ティアには、独自の社員研修プログラム「ティアアカデミー」がある。これは、冨安さん自身の現場経験(著書『最期の、ありがとう。』(Wonder Note刊)にも詳しい)なども踏まえて、つくられたもの。期間は中途入社で1~2か月、新卒の場合は6か月(導入研修)に及ぶ。

「大事にしているのは、いわゆる『徳育』の観点です。いまは、学校で教わる機会も減っていると思います。つまり、人としての社会性、倫理観――思いやりや誠実さです。最愛の人を亡くされたご遺族の気持ちに寄り添う私たちの仕事には、なによりも大切なことだと信じています」(冨安さん)

その時、遺族はどんな気持ちか? 真に寄り添うための「グリーフサポート研修」

   研修が始まると、マナーやモラル、葬儀に関する基礎知識などを学ぶほか、ロールプレイング形式での模擬通夜・葬儀などが盛り込まれている。模擬通夜・葬儀は、本社横にある研修専用施設「ティア・ヒューマンリソース・センター」で、本番さながらの雰囲気の中で実践経験を積む。

ティア・ヒューマンリソース・センター(THRC)3階には、通常と同規模の葬儀式場があり、研修時にはここで経験を積む
ティア・ヒューマンリソース・センター(THRC)3階には、通常と同規模の葬儀式場があり、研修時にはここで経験を積む

   各研修を担当する、人財開発部・部長の横井規浩(よこい・のりひろ)さんは、

「とくに新人向けの教育では、『守破離』でいえば、『守』の部分を大事にしています。まずは基礎となる『型』を身に着けてほしいので、行動や作法の理由を丁寧に教えています。そのうえで、目指しているのは、自分で考える力を身に着けること。研修はその土台づくりの場となっています」

と話す。

   ちなみに、研修担当者は横井さん含め7人。新卒者は年によってばらつきがあり、例年15人~30人が参加する。

「研修が進むと、実際の現場に行く、実地研修があります。学んできたことが現場でどう役立つか、実習のなかで確認しています。そして、自身の行動がご遺族の役に立つ体験、直接感謝の声を聞く経験などを通じて、仕事のやりがいや意義を感じる大切な機会となっています」(横井さん)
「人と関わることが好き。人の役に立ちたい。気配り、心配りができる人。喜んでもらうために考え抜ける人......そんな人はぜひティアに」と横井規浩さん
「人と関わることが好き。人の役に立ちたい。気配り、心配りができる人。喜んでもらうために考え抜ける人......そんな人はぜひティアに」と横井規浩さん

   また、研修では「グリーフ」について、きちんと学ぶ機会を設けているところも特長だ。グリーフとは、死別による深い悲しみの感情を、自分の中に閉じ込めてしまうこと。これは誰にでも起こりうる正常な反応だ。研修では、グリーフ状態にある時、人はどのように反応するか、心身の状態がどのように変化していくかを学ぶ。

   この研修では、グリーフセミナーインストラクターとして、人財開発部 教育課・課長代理の鷲見志穂(すみ・しほ)さんが手腕を発揮する。鷲見さんは、一般社団法人グリーフサポート研究所認定「グリーフサポートバディ」の有資格者でもある。

「大切な方を亡くした時の反応は、泣いて悲しむだけではない場合があります。泣かない人もいますが、悲しくないわけではない。たとえば喪主として、気丈に振る舞っているのかもしれません。怒ってしまう場合などは、つらさや不安の表れだと考えられます。座学では、表情、言葉、口調などから、ご遺族の置かれた気持ちをとらえるスキルや、元気を取り戻していくプロセスなどを教えています」(鷲見さん)
「人に寄り添う気持ちを大切にする人。コミュニケーションを大切にする人と一緒に、やりがいを持って働けたら」と鷲見志穂さん ※横井さんがリモートで参加
「人に寄り添う気持ちを大切にする人。コミュニケーションを大切にする人と一緒に、やりがいを持って働けたら」と鷲見志穂さん ※横井さんがリモートで参加

   それともう一つ、グループワークによって、グリーフの気持ちを追体験する機会も設けている。

「グループワークは3~4人で一組となって、私がたとえばこんな質問を投げかけます。――あなたが大切な人を亡くした時に、あなたはどうなると思いますか。その経験がある場合は、当時の気持ちを思い出してみてください、と。そのあとで思い出したこと、想像したこと、自分の考えや思いを他のメンバーに話します。周囲は一生懸命に聴くだけ。それが、本人にとっての『気づき』となり、ご遺族への思いやりを持った接し方や、声のかけ方につながるのです」(鷲見さん)

   若い新入社員の場合、家族を亡くした体験、通夜や葬儀へ参列する機会が少ない場合もある。それだけに、こうした場が有効だ。また、セルフケアの観点でも大事だという。「相手の悲しみを受け止めすぎてしまい、自分の気持ちが落ち込み、仕事や生活に影響しないためにも、知識を持つことが大切」と、鷲見さんは話していた。

「私たちの『感動葬儀』に正解はない」

   二人に話を聞くなかで驚いたのは、自社の理念や、それに紐づく行動原則に照らし合わせて、セレモニーディレクターとしてどうあるべきか、研修生には常に考えさせていることだ。

「私たちは何のために仕事をしているのか。会社の理念とあわせて、どんなふうに仕事に生きるのか――新人研修中、そんな問いをよく投げかけています。研修の修了直前には、ティアの理念になぞらえて、どんな行動が人に寄り添うことにつながり、今後に生かせるか、数人のグループ単位で発表してもらいます」(横井さん)

   このプレゼン――理念発表会は、社長をはじめとする役員、次年度の内定者を前におこなう。横井さん、鷲見さんたちも同席し、研修生たちの成長には涙することもあるそうだ。

   もっとも、彼らはようやくスタートラインに立ったばかり。6か月の研修が終わると、次はOJT(On the Job Training)で先輩が指導員として付き、いよいよ現場へ羽ばたくことになる。

   実際に、新人研修を受けた今春入社の伊藤里紗(いとう・りさ)さんは、

「大変なことも心が折れそうになったこともたくさんあるなかで、みんなで協力して取り組んだ模擬通夜や模擬葬儀、大切な人を亡くされたご遺族と接する実地研修を通じて、貴重な経験がたくさんできました」

と、話してくれた。

「研修で自信がつきました」と伊藤里紗さん
「研修で自信がつきました」と伊藤里紗さん

   このような「人財」育成に力を入れるのは、ティアが目指す「哀悼と感動のセレモニー」の質にこだわり続けたいからだ。

「私たちの『感動葬儀』に正解はありません。ご遺族と話して、故人様の好きだったことや趣味を取り入れた葬儀を提案するケースもあります。その時、真摯にご遺族からお話をうかがい、自分には何ができるか考え抜く力が必要。相手のことをどれだけ考えられるか。そして、一生懸命に取り組めるか――それらが『感動』を生むのだと思います」(横井さん)
「ご遺族に対して、通夜や葬儀の一連の流れを適切に説明する――それもまた大切な寄り添い方で、セレモニーディレクターに求められる資質です。それから、通夜・葬儀は社内外の関係者との連携も欠かせません。大事なのが、日頃からの些細なコミュニケーションだったりします。その積み重ねがセレモニーを成功させ、お客様からの『ありがとう』につながると信じています」(鷲見さん)
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