2024年 4月 24日 (水)

ソニーがEVに参入 トヨタや米テスラ、中国BYDに独VWだけじゃない熾烈な競争に「勝算」は?

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   ソニーグループが電気自動車(EV)に参入する。吉田憲一郎社長が2022年1月4日、世界最大級の家電IT見本市「CES」(米ラスベガス)の開幕に合わせて、新会社「ソニーモビリティ株式会社」を今春に設立し、量産化を検討すると発表した。

   EVは「脱炭素」の流れが強まるなか、ガソリン車に比べて技術的な障壁が低い。アップルの参入もウワサされており、IT企業など異業種を交えたEVの競争環境は激変しそうだ。

  • ソニーのEV「VISION―S」(画像は、ソニーグループのニュースリリースより)
    ソニーのEV「VISION―S」(画像は、ソニーグループのニュースリリースより)
  • ソニーのEV「VISION―S」(画像は、ソニーグループのニュースリリースより)

ソニーEV、半導体とエンタメが強み

   ソニーの参入は既定路線と見る向きが多い。ちょうど2年前、2020年1月のCESでEVの試作車「VISION―S」(4人乗りセダン)を披露していた。この時、「自社のセンサー技術や音響設備をアピールするために製作した」と説明されたが、一定の自動運転が可能なことも公表され、一般道の試験走行を2020年12月のオーストリアを皮切りに欧州で始めていた。

   今回は新たにスポーツタイプ多目的車(SUV)の試作車もお披露目し、吉田社長は

「EVの市場投入を本格的に検討していく。AI(人工知能)やロボティクス技術を最大限に活用し、モビリティー(移動)の可能性をさらに追求する」

と宣言した。

   試作車には、ソニーが得意とする車載用センサー計約40個を搭載し、周辺の環境を詳細に把握するとともに、自動運転を見据えて高速通信規格「5G」を採用。さらに、臨場感のある音楽や映像を楽しめるなどエンターテインメント機能の高さも特徴にしている。

   自動車の家電化という予測は、21世紀初頭からさまざまに語られてきたが、EVがそれを現実化しつつある。エンジンという複雑で、高い安全性と環境への負荷の軽減を求められる装置がいらないEVは、部品数もガソリン車の半分ほどに減り、新規参入の壁が格段に低い。

   新興の米テスラが一躍販売台数で先行、これをGMと中国メーカーの合弁企業「上汽通用五菱汽車(SGMW)」が50万円を切る格安EVで追い上げ、中国の比亜迪(BYD)、独フォルクスワーゲン(VW)など従来からの自動車大手が続く構図。この争いに異業種も続々名乗りを上げている。

バイドゥやシャオミ、台湾の鴻海も...... 続々参入

   中国では21年1月、ネット検索大手の百度(バイドゥ)がEVの製造販売に乗り出すと発表。3月にスマートフォン大手の小米科技(シャオミ)もEV分野に10年で100億ドル(約1兆1500億円)を投じる方針を表明、華為技術(ファーウェイ)もEV関連事業への参入を進めているとされる。

   さらに、10月には、アップルのiPhone(アイフォーン)の受託製造サービス(EMS=Electronics Manufacturing Services)最大手である台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が、地場の自動車メーカーとの合弁会社で開発中のEV試作車を台北市内で公開し、将来的にアップルとの提携が取り沙汰される。

   今回のCESでも、韓国LG電子がワンボックスカーのコンセプトモデルを公開し、米半導体大手インテルなどは特定の条件で運転を完全自動化するEVを24年までに中国で発売すると発表――といった具合だ。

   これら異業種は、たとえばホンハイが部品調達力、アップルやファーウェイはソフト開発力に定評があるなど、それぞれ強みがあり、別の強みを持つ企業などとの提携も含め、EV戦略を進めるとみられる。

   ソニーの強みは、試作車にも反映しているように、半導体とエンタメだ。半導体とは、スマホのカメラなどに使われ世界シェアトップの画像センサーで、自動運転で周囲の交通状況を把握する用途があり、飛躍的な需要の拡大が期待される。

   自社開発EVで技術力を高め、他の部品と組み合わせて「モジュール化」して外販し、将来の稼ぎの柱にすることも狙っているとみられる。

根付くか!? EVのEMS化

   エンタメは、完全な自動運転が実現すれば、移動中の車内の楽しみ方として大きな可能性がある。試作車が映画や音楽を楽しめる設備を搭載しているのも、新たな車内の楽しみ方を探る狙いがあるという。

   エンタメや犬型ロボット「アイボ」などで培った課金ビジネスモデルもソニーの強みで、EV自体、またその中でのエンタメで課金モデルを生かすことも検討課題だ。

   ソニーの場合、EV量産化といっても、実際に大手自動車メーカーのように自前で自動車生産ラインを持つのではない。今回の試作は自動車のEMS大手「マグナ・シュタイナー」(オーストリア)に委託したが、量産化でも、基礎構造体(車台=プラットフォーム)をマグナ社に任せるほか、世界的な部品大手の独ボシュなどとも協業する見通しだ。

   ソニーが構想するようなファブレス化。つまり、スマホや半導体で当たり前になった自社工場を持たないでEMSなどに生産を任せる仕組みがEVでどこまで根付くか――。

   トヨタ自動車など大手自動車メーカーは基本的に自前での生産を目指す。なにより、航続距離などEVの性能を大きく左右する次世代の電池「全固体電池」の実用化で、どこが優位に立つかが、今後のEVでの競争に大きく影響するのは間違いないが、そうした技術開発を含め、EVにおいてどんな事業モデルがベストか。その答えは、まだ出ていない。(ジャーナリスト 済田経夫)

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