2024年 4月 25日 (木)

和歌山の公立高校、宇宙専門コース新設...生徒は全国から募集! 宇宙×地域創生のポテンシャルは?(鷲尾香一)

地方創生の現状打破への施策として期待

   宇宙に関心のある生徒を全国から募集する「宇宙探究コース」の新設は、急激な少子高齢化、過疎化に苦しむ地方での地方創生のあり方にとって、ひとつのモデルケースとなりそうだ。

   同様の取り組みとして、たとえば、いちごの収穫量が1968年から53年連続で日本一を維持する栃木県が、農業大学校に日本で初めて「いちご学科」を創設するなど、さまざまな広がりを見せている。

   人口減少により疲弊し、活力が失われていく地方の活性化対策として、かつてはIターン、Uターン、Jターンなどの施策で若者を地方に呼び戻そうとしたが、徒労に終わった。

   その後、地方の効率化などをお題目に市町村合併が進み、「広域連携」が流行り言葉となった。しかし、広域連携で生み出されたのは、地方銀行の合併・連携程度で、地方の構図が大きく変化することはなかった。

   地方創生が叫ばれて久しいが、その具体策といえば、大都市から距離的に近く、交通の利便性の高い一部の地方で、都会からの移住が進んでいる程度だ。相変わらず、主力の地方創生策は観光地や特産品を中心としたものに終始している。

   かつて、筆者は関東地方のある県知事に「何かいい地方創生策はないか」と聞かれたことがある。その時、筆者は東京に近いのだから、高齢者が最も安心して過ごせる県作りを行い、東京から高齢者の移住を促すことを提案した。

   世界最高水準の高齢者医療を提供する病院と介護施設を作り、東京の富裕層を呼び込む。それにより、高齢者が生活や余暇を楽しむために必要な施設や人員が必要になり、若者の仕事が増加する、といった具合だ。

   夢物語と言えばそれまでだが、現状を打破するためには、観光地や特産品ではない施策が必要だろう。

   約1万5000人の町の生徒数約270人の高校が、世界や宇宙を標榜した先進的な取り組みを行っているのだから、自治体単位であれば、もっと独自の政策が打ち出せる可能性があるのではないか。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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