オミクロン急拡大で儲かる人、泣く人...内閣府「景気ウォッチャー調査」を深読み

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「オミクロン株の拡大で街中から高齢者が消えた。人出もめっきり少なくなり、ゴーストタウン化してきている」(北陸地方の商店街)
「小学校などの休校が相次いでいる。昼食需要として冷凍食品、カップ麺、菓子パンなどが急に売れ出した」(北海道のスーパー)

   内閣府は2022年2月8日、「街角の景況感」といわれる今年1月の「景気ウォッチャー調査」を発表したが、人々の景気実感を示す指数が前の月より19.6ポイント下落し、37.9となったことで東日本大震災に次ぐ大幅な下落幅となった。

   多くの生活者が景気後退にあえぐ中でも、ごく少数だが逆に「景気が良くなった」と答えた人がいる。どんな商売の人がウハウハ状態なのか。公開された景気ウォッチャー調査から明暗を読み解くと――。

  • 景気はどうなる(写真はイメージ)
    景気はどうなる(写真はイメージ)
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「人材派遣」と「職安」が好景気な理由は?

   内閣府の景気ウォッチャーは、飲食店主、スーパー営業マン、タクシー運転者など、全国のさまざまな業種から選んだ2050人を調査対象としている。景気の状態について、次の5項目で評価する。今年1月の結果を見ると、ひと月前の昨年(2021年)12月の割合と比べると、いかに人々の「景況感」が急激に悪化しているかわかる。

(1)良くなっている(今年1月は1.1%、昨年12月は7.2%)
(2)やや良くなっている(11.9%、同39.3%)
(3)変わらない(35.7%、同37.8%)
(4)やや悪くなっている(31.9%、同12.4%)
(5)悪くなっている(19.3%、同3.4%)

   内閣府のホームページを見ると、全ウォッチャーの評価とコメントを見ることができる。大半が(3)「変わらない」以下の「悪くなっている」人だが、13%だけ「良くなっている」と答えた人がいる。まず、その「ウハウハ」組から見ていこう。

   意外なことに景気のいい話が一番目立つのは「人材派遣会社」「公共職業安定所」(ハローワーク)といった求人を扱うところだ。こんな生の声が寄せられている。

人材派遣や職業安定所が意外に「好景気」(写真はイメージ)
人材派遣や職業安定所が意外に「好景気」(写真はイメージ)
「注文数が2割程度増加している。既存の客の注文に加え、新規企業からも注文が入っている。また、採用が決まったことで登録をやめる派遣登録予約者が、前月よりも目立つ」(九州・人材派遣会社)
「コンビニ等の販売員や、小売、生鮮食料品、青果などのスーパーでの求人が目立っている。年末年始に向けて募集が落ち着いている建設関連や製造業は稼働が止まっているが、堅調である」(北関東・人材派遣会社)
「IT系企業を中心に、前年より内々定が早く出されているようだ」(南関東・民間職業紹介機関)
「輸送用機械器具製造業の求人数は、完成車メーカーにより差はあるものの、半導体部品の供給不足の影響が改善傾向にあるなどの理由から、前年同月と比べ増加が続いている」(東海・公共職業安定所)

大学、専門学校にも「好景気」の波

   経済が悪化すれば、解雇されて職を求める人が増えることを考えると、当然の結果かもしれない。その一方で、コロナが落ち着けば、新年度から採用が活発になるという予想もある。そうした求人増の動きが学校の就職課や、求人広告を載せる新聞社を喜ばせている様子が浮かび上がる。

大学も景気のいい話が多い。キャンパスで談笑する女子学生(写真はイメージ)
大学も景気のいい話が多い。キャンパスで談笑する女子学生(写真はイメージ)
「2023年の新卒予定者を対象とした学内合同企業説明会は、各業界からの出展申込みが軒並み好調であり、企業側の新卒採用意欲の回復がうかがえる(北海道・大学)
「新年度を迎え新たな採用計画の下で、募集活動を行う企業が増えてくる」(沖縄・専門学校)
「数か月前と比較すると、少しずつではあるが求人広告の出稿件数が上向いている」(北陸・新聞社)

   また、一時は、「ウッドショック」(木材価格の高騰)で原材料不足に悩んでいた家具業界も落ち着きを取り戻したように読み取れる。

「新型コロナの第6波が生じているが、競合各社で積極的な新店舗展開や新ビジネス展開を進める様子がみられることから、景気はやや良くなっている」(北海道・家具製造業)
「ウッドショック、コンテナ不足の影響を受けて現場工事の進捗は遅れているが、受注量が回復している」(四国・木製品製造業)

携帯電話ショップは依然として好調

   携帯電話ショップや固定電話などの通信関係も依然として好調だ。

「引っ越しに伴う新規契約の増加と、在宅ワークによるネット回線の申込みが増加している」(東海・通信会社)
「新型コロナの感染拡大状況に左右されるものの、3月決算期の会社が多く、駆け込み需要は相応にあるとみている」(北陸・通信業)
「コロナで来客数は減っているものの、販売量は落ちていない」(四国・通信会社)

   なかには、数か月前があまりにひどかった分、落ち着きを取り戻しつつあることで「良くなった」と喜んでいる社もあった。以下のようなコメントが寄せられている。

「ホテルの10月の販売室数が前年比72%減だったのに対し、1月は販売室数が前年比39%増とプラスに転じている」(沖縄・観光型ホテル)
「1月の主要客からの受注量は前年並みであるが、落ち込みがひどかった3か月前に比べると、大幅に増加している」(中国・輸送用機械器具製造業)

「予約ゼロ」「仕事なし」の旅行関係

   これに対して、「ガックリ」きている業界をみると――。

   まず旅行関係の落ち込みが深刻だ。

「まん延防止等重点措置が適用されてから、入りかけていた一般宴会はストップ、入っていた予約もキャンセルが相次ぎ、最悪の状況だ。個人宿泊もしかりで、どんどん減少の一途をたどっている。1月末~2月に、3~4日間の全館休業をせざるを得なくなった」(東海・観光型ホテル)
「年末年始までは航空需要が堅調に回復していたが、1月中旬からのオミクロン株の感染拡大により、ビジネス需要、観光需要が急激に減退した。道民割などの需要喚起策も休止となり、感染拡大が落ち着くまで回復が期待できない」(北海道・旅行代理店)
「感染爆発と、県の旅行補助キャンペーン中断のため、旅行の受注はゼロになった。今後も復活する見込みはない」(東海・旅行代理店)
やはり旅行関係の景気が心配だ(写真はイメージ)
やはり旅行関係の景気が心配だ(写真はイメージ)

   飲食店も打撃を受けている。

「1月上旬は、東京都内の感染者数がかなり増えたが、その割には変わりなく客が来店してくれた。まん延防止等重点措置が適用されてからは、予約が立て続けにキャンセルとなり、予約数がゼロとなってしまった」(南関東・レストラン)
「1月だけで70~80名分のキャンセルが出ている。客がまったく来なくなっており、開店休業が続いている」(東北・レストラン)

   タクシーやバスの運転手も厳しい状況が続いている。

「前々年比80%まで回復していたのに、けた違いの第6波が到来したことで人出が大きく落ち込んだ。外出や外食の機会が一気に縮小している」(北海道・タクシー運転手)
「当地にまん延防止等重点措置が適用されたことで、みな外出を避けている。夜の街も閑散としているため、売上が減少している」(北陸・タクシー運転手)
「オミクロン株によって、すべての仕事がキャンセルになっている」(甲信越・貸し切りバス)

卒業アルバム関連は厳しいか...

   小売業界もピンチに陥っている。とくに、かき入れ時の新年度シーズンなどを控え、あてが外れた面もある。

「コロナ次第だが、おそらく入学式、卒業式を中心としたセレモニーのウェア、お祝いや祝い返しのギフトといった関連の需要、そして新生活、旅行、外出などに関連した買い物は低迷するとみられ、厳しい動きになる」(北陸・百貨店)
「大豆や油の価格が高騰し、値上げのニュースがどう響いていくか。ガソリンも高値を維持しているので、野菜全般の仕入価格も高くなり、価格転嫁せざるを得ない状況だ」(東海・スーパー)
「来客数が平日の夕方から夜にかけて大きく落ち込んでいる。前倒しで売り尽くしセールを行っているが、効果が出ていない」(近畿・家電量販店)
スーパーも厳しさが見てとれる(写真はイメージ)
スーパーも厳しさが見てとれる(写真はイメージ)

   イベントを当て込んでいたさまざまな業界の悩みも深刻だ。

「第6波の影響でイベント関連の印刷物が中止になり、急激に動きがストップしている」(南関東・印刷産業)
「折り込みチラシが年明けから減ってきている」(東海・新聞販売店)
「また自粛ムードになれば、感染拡大が収束しない限り、よくなることはない(甲信越・ボウリング場)
「年度末の学校行事の撮影や、卒業アルバム関連の動きは悪くなることが予想される」(南関東・映像制作)
「会議が次々とキャンセルになっているため、仕事が減っている」(東北・アウトソーシング企業)

   最後に、街の個人事業主の嘆きの声を紹介したい。

「テレワークが増加して、コピー出力の需要は減少している」(近畿・コピーサービス業)
「予約のキャンセルが相次ぎ、お店がガラガラの状態である。特に、当店に多い高齢のお客は、感染を恐れてかなり外出を控えている」(近畿・美容室)

   なんといっても美容院は、お客と美容師さんのお喋りが憩いの場なのだが、それがままならない状況もあるようだ。

(福田和郎)

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