2024年 4月 24日 (水)

【上司力を鍛える】使いこなせなければ、いまや部下育成もチーム作りもできない「ITツールの習熟化」《後編》(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力トレーニング』~リモートワークで働きがいある職場を創る」では、リモートワーク下での「支援型マネジメント」について説明してきました。

   前回までをおさらいすると、第1のポイント:部下の仕事の「責任の明確化」、第2のポイント:部下の「仕事の具体化」、第3のポイント:上司の「反応の意識化」を取り上げてきました。

   リモートワーク下での「支援型マネジメント」の第4のポイントが、「ITツールの習熟化」であることを紹介した《前編》は、各ツールに相応しい役割と利用シーンを概観しました。

   《後編》では、《前編》を踏まえて、さらにITツール利用のルール化や、ツール習熟化への心構えを解説していきましょう。

  • 若手世代はITツールでのコミュニケーションに慣れている
    若手世代はITツールでのコミュニケーションに慣れている
  • 若手世代はITツールでのコミュニケーションに慣れている

ツール利用のルールを定め、共有する

   各ツールの特性に応じた効果的な利用方法の見極めが進んだら、チーム内での具体的な利用ルールに整理しましょう。表はその整理に使えるフォーマット例です。

   具体的な会議や報・連・相などの情報内容別に、目的や参加メンバー、どのITツールを利用するかルールを定めます。これをメンバーで共有することで、コミュニケーションロスを防ぐことができ、ツールの有効活用にも役立つのです。

   職場で必要な情報交換の内容や特徴、利用できるツール、今後強化したいコミュニケーションの方法など、実状に沿って検討を行い、前向きなルールを定めてください。

「リアルでしかできない」との固定観念を見直す

上司:「最近はリモートワークばかりの巣ごもり状態で、大変じゃないか? うまく情報交換もできないだろうし、仕事は大丈夫か? やはり、リアルで働くが一番だろう」
部下:「いえ。通勤時間が減りストレスもなく、仕事に集中できて、とてもはかどっています。必要な情報交換や資料の入手は、メールや社内のデータ共有システムで十分できますし」
上司:「そうか...。でも、メンバーどうしの雑談や相談もしにくくなって、不安だろう。寂しいと思うこともあるんじゃないか?」
部下:「チームのメンバー同士のちょっとした雑談や相談は、チャットで毎日やり取りしていますよ。先週も有志でオンライン飲み会をやって、結構盛り上がったんですよ?」
上司:「えっ!そうなのか...(不安で寂しいのは、こっちだけか?。飲み会に声くらいかけてくれてもいいのにな?)」

   リモートワークに関するある意識調査では、「上司は寂しく、部下は気楽」という象徴的な結果が目を引きました。自分自身がリアル・コミュニケーションだけで仕事をしてきた昭和世代の上司は、とかくリアルが一番と思いがちです。また、部下の様子が見えづらく、報・連・相が不十分と感じる不安もあるでしょう。

   しかし、若手世代はITツールでのコミュニケーションに慣れており、子育てや介護などと仕事を両立する部下なら、リモートワークのほうが効率的と考えることもあるでしょう。上司は「リアルこそ重要」という自分の固定観念を見直し、意識ギャップをも乗り越えていく心構えが大切です。

リモートとリアルは不可分な相互補完関係。ITツールの習熟化度合いが企業差となる

   さらに押さえておくべきは、ITツールによるリモートと対面によるリアルのコミュニケーションは、互いにトレードオフの関係ではなく、相互補完関係にあると心得ることです。

   否応なしにITツールの活用が始まった頃は、いかにリアルをITツールに置き換えるかに捕らわれがちでした。しかし今では、それぞれの長所と短所を認識したうえで、両方を上手に組み合わせて活用し、相乗効果を高める視点が大切になってきているのです。

   本連載の前半で取り上げた、期初の育成面談や任用(動機づけ)面談、また、要所での振り返りなど、節目のコミュニケーションはリアルでしっかり行うのが適切かもしれません。一方、この面談などで信頼関係ができていれば、日常の報・連・相やミーティングはリモートで十分行えます。

   最近の各種調査でも、完全リモートではなく、週に数日の出勤と在宅勤務を組み合わせる職場が多い傾向が示されています。

   グループ企業内の会議や研修に、全国オンライン方式を導入したことで、従来の社員を一堂に集める方法の限界を超えた事例もあります。また、オフィスワークのみならず、工場でのリモートワーク導入を検討する企業も出てきました。さらに、居住地を問わないことで、全国の優秀人材の採用に乗り出した企業も現れています。

   ITツールの習熟化と有効活用の差が、企業力の差に現れる時代にも入っているのです。

※マネジメント改革を実現する「上司力」の詳細をさらに詳しく知りたい方は、拙著「本物の上司力~『役割』に徹すればマネジメントはうまくいく」(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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