2024年 4月 19日 (金)

中国ロックダウン、国内企業の半数「悪影響」 上海が封鎖解除されても中国経済の冷え込み、さらなるリスクに

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   新型コロナを厳格なロックダウン(都市封鎖)で抑え込む中国の「ゼロコロナ」政策が日本企業に深刻な影響を与えている。

   帝国データバンクが2022年5月17日に発表した「緊急調査:中国ロックダウンの影響に関するアンケート」によると、企業活動にマイナスの影響があると答えた企業は半数近くにのぼった。

   とくに、世界最大の物流基地・上海市のロックダウンが大きな打撃を与えている。上海市当局は5月16日、新規感染者数の改善がみられたとして6月中に封鎖を解除すると発表したが、まだまだマイナスの影響は尾を引きそうだ。

  • ロックダウンされた世界最大の物流基地・上海市
    ロックダウンされた世界最大の物流基地・上海市
  • ロックダウンされた世界最大の物流基地・上海市

上海港沖合で順番待ちコンテナ船が「アリの行列」状態

   調査結果によると、中国が行うロックダウンなどの行動制限によって、企業活動にどのような影響があるかを聞くと、「すでにマイナスの影響がある」(35.5%)と「今後マイナスの影響が出る見込み」(12.9%)を合わせて、「マイナスの影響がある」企業が半数近くの48.4%となった=図表1参照。一方、「影響はない」とする企業も約3分の1の33.8%いた。

(図表1)中国ロックダウンの影響(帝国データバンクの作成)
(図表1)中国ロックダウンの影響(帝国データバンクの作成)

   「マイナスの影響がある」と答えた企業を業界別でみると、「卸売」(60.2%)や「製造」(57.7%)、「小売」(49.5%)を中心に、幅広い業界に中国ロックダウンの悪影響が広がっていることがわかる=図表2参照

(図表2)マイナスの影響を受けた主な業界・業種(帝国データバンクの作成)
(図表2)マイナスの影響を受けた主な業界・業種(帝国データバンクの作成)

   企業からは「上海港が使えないため、原料が中国から届かない。他の港も対応が難しくなっており、調整を続けている」(界面活性剤製造、大阪)といった、上海市のロックダウンによるサプライチェーン(物流網)の混乱が、企業活動へ響いているとの声が多くあがった。

   報道によると、コンテナ取扱量世界一を誇る上海港そのものは通常通り稼働している。だが、封鎖管理の厳格化によって、物資を輸送するトラックが港まで入りにくい状態が続く。また、港湾労働者の数も足りず、コンテナ作業が追いつかない状況だ。このため、上海港の沖合では多くのコンテナ船が順番待ちのために停泊。衛星カメラの映像を見ると、長いアリの行列のような光景になっているほどだ。

   さらに、影響の大きい「卸売」と「製造」を業種別に詳しくみると、「化学品製造」(73.8%)、「機械・器具卸売」(66.4%)、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(62.6%)、「機械製造」(56.6%)での悪影響が、とりわけ大きくなっている=再び、図表2参照

   企業からは「客先で使用する部品が入ってこないため、当社への注文品も5月分すべてキャンセルされた」(ガス・石油機器製造、群馬)と、中国からの機械関連などの部品や原材料の入荷の遅れが企業活動に打撃を与えているとの声が多く聞かれた。

「1つの部品が足りないだけですべての生産が止まってしまう」

上海港沖合ではコンテナ船が大渋滞(写真はイメージ)
上海港沖合ではコンテナ船が大渋滞(写真はイメージ)

   「すでにマイナスの影響がある」と答えた企業からは、こんな声が聞かれた。

「中国から冷凍野菜を輸入しているが、ロックダウンで上海からの船便が出港できていない。輸入品が予定日に届かず販売ロスに繋がり業績に影響が出ている(冷凍食品卸売、広島)
「国際物流を生業としているが、特に上海は輸出・輸入ともに重要な港であるため、影響は避けられない。貨物の滞留がここまで長引くとは想像しておらず、上海港より南通市(江蘇省内最大の経済都市)へのシフトも考えているほど影響が大きい」(港湾運送、大阪)
「中国から部品が入らなくなったことで、国内メーカーが製品を完成できなくなっており、他の部品もキャンセルしている」(金属プレス製品製造、兵庫)
「1つの部品が足りないだけですべての生産が止まってしまう企業が多く、直接関係のない我々もそれに巻き込まれている」(金型・同部品等製造、和歌山)
「資材の仕入れはもとより、車両の買い替え時期も大幅に遅れている」(一般管工事、東京)
モータープールで積み込みを待つ大量の自動車。多くの企業にとって物流が止まったことが痛い
モータープールで積み込みを待つ大量の自動車。多くの企業にとって物流が止まったことが痛い

   また、「今後マイナスの影響が出る見込み」と答えた企業からもこんな不安の声が――。

「半導体や部品などの輸入が滞ると、メーカーの売り上げ減少がおき、設備投資意欲が減退する」(熱絶縁工事、大阪)
「中国から輸入する資機材などが品薄状態になることで、物品価格の高騰を招き、購入意欲が弱まりそう」(不動産代理・仲介、埼玉)
「直接の影響はないが、工事に必要な部品などが中国から入荷せず、工事の進行が遅れることで、当社の販売も遅れるという影響は出つつある」(発泡軟質樹脂品製造、栃木)

   一方、「すでにプラスの影響がある」と答えた企業の声はこうだ。

「ロックダウンによって既存取引先で納期遅延が発生したとのことで、自社へ金型および製品の発注依頼があった」(工業用樹脂製品製造、大阪)

   もっとも、こういうケースは、「棚からぼたもち」というのではなかっただろうか。

   帝国データバンクではこう分析している。

「中国・上海市は6月にロックダウンが解除される見込みだが、中国政府が引き続きゼロコロナを続ける事態となれば、生産活動やサプライチェーン(物流網)の停滞、混乱が拡大することが予想される。さらに厳格な外出制限措置などによって、中国経済自体が冷え込む事になれば、今の時点では影響を受けていない日本国内の企業にも、悪影響が広がっていく可能性が懸念される」

   調査は、2022年5月13日~16日にインターネットで行い、1653社から有効回答を得た。うち大企業は210社(12.7%)、中小・小規模企業は1443社(87.3%)だった。

(福田和郎)

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