2024年 4月 19日 (金)

外国人観光客受け入れ再開へ...経済再生とコロナ対策の両立が課題 夏の参院選も控え、政府は難しいかじ取り

   外国人観光客の受け入れについて、政府は早ければ2022年6月にも再開する方針だ。

   新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、これまで観光目的の入国は禁止してきたが、経済再生との両立を図るためにも再開を認める時期が来たと判断した模様だ。

   観光業界からは「海外に比べて対応が遅すぎる」と不満の声が出る一方、感染拡大につながらないかという懸念は依然根強く、政府は難しいかじ取りを迫られそうだ。

  • 外国人観光客の受け入れに期待は大きい(写真はイメージ)
    外国人観光客の受け入れに期待は大きい(写真はイメージ)
  • 外国人観光客の受け入れに期待は大きい(写真はイメージ)

上限数は現在の2倍、1日2万人案が有力か

   外国人の入国は現在、商用や就労、留学などを目的した場合に認めているが、観光目的の入国は対象から外している。しかし、国民のワクチン接種が進んでいるのに加え、欧米やアジア各国では外国人の受け入れを容認する動きがかなり広がってきており、受け入れの方向にかじを切ったとされる。

   政府は外国人観光客の受け入れと同時に、現在は1日1万人としている入国者数の上限も引き上げる方向で調整している。

   上限数は現在の2倍の1日2万人とする案が有力とされる。また、空港の検疫は現在でも混雑している状況にあり、入国者数の増加でさらに混乱する可能性があると見て、入国時の検査も見直す方針だ。

   現在、訪日客はすべてウイルス検査が必要としているが、母国でワクチンを3回接種しているなど、条件次第で検査対象から外すことなどが検討されている。

円安の影響からも一刻も早い受け入れに期待

   コロナ禍が起きる直前まで、外国人観光客は日本にとって貴重な収入減だった。政府は観光を経済の柱とする「観光立国」を掲げ、訪日客数を2020年に4000万人、30年には6000万人とする目標を示していた。

   コロナ禍前まで訪日客は順調に伸び、19年には3188万人になった。その消費額は4兆8000億円に上り、観光産業などへの波及効果は7兆8000億円に膨らんだとされる。

   しかし、コロナ禍によってこうした収入減を一気に失い、観光や航空業界などは深刻な痛手を被っている。

   これまでも経済界から早期の受け入れ再開を求める声が上がっていたが、最近では外国人の入国制限を緩和する国が増加。5月の大型連休も多くの日本人が海外旅行を楽しんだこともあり、「日本だけいつまで『鎖国』を続けるつもりか」(観光関係者)などの不満が強まっていた。

   とくに、このところ為替市場で円安が進んでおり、「外国人が訪日すれば従来以上のお金を落としてくれる可能性がある」と、一刻も早い再開を期待する声が高まっていた。

   ただ、受け入れの再開によって、感染拡大につながる懸念はある。このため、観光業に関係ない人などは、安易な再開を危ぶむ声が上がる。「感染動向と政権支持率の動きは連動しており、夏の参院選を控えて政府はかなり慎重に対応せざるを得ないだろう」(政治関係者)との指摘もある。

   ただでさえ足元の感染者数は大型連休の人の移動の影響か、当面は感染拡大必至との見方もある。今後の感染状況次第では、受け入れ再開のシナリオは修正を余儀なくされる可能性もある。(ジャーナリスト 済田経夫)

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