2024年 4月 24日 (水)

欧米に「逆経済制裁」科すプーチン大統領 バックに途上国の共感が...でも、経済面で「中国の半植民地になる」とのエコノミスト指摘

ロシア制裁を機に、西側諸国と途上国との軋轢強まる

ドル決済ができなくてもロシアへの打撃にならない?(写真はイメージ)
ドル決済ができなくてもロシアへの打撃にならない?(写真はイメージ)

   ノードハウス氏のリポートと同様、西側諸国の主要国で構成するG7サミット(主要7カ国首脳会談)が機能不全に陥り、ロシア制裁を機に西側諸国と途上国との軋轢が強まっている、と懸念するのが野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏のリポート「問われる世界のリーダーによるG7サミットの意義」(6月27日付)には、こうある。

「ロシアのウクライナ侵攻、先進国による対ロ制裁を契機に、先進国と新興国との間には一気に軋轢が強まっている。そのため、G7は有効な対策を打ち出すことが難しくなっており、この点は今回のG7サミットでも改めて浮き彫りとなっている。(中略)ウクライナ産の小麦に依存するアフリカ・中東諸国の国々は、価格高騰のみならず、戦争の影響でウクライナ産の小麦の入手が難しくなっている。そうしたもとで、多くの国が輸出制限を実施していることが、食料危機をより深刻化させている」

   国際食料政策研究所によると、ウクライナ侵攻以降、新興国を中心に合計26か国が、食料や肥料に対して全面的な輸出規制を導入している。各国政府にとって食料輸出規制は、物価高騰に対する国民の怒りを和らげ、国内供給を確保する手だてになるからだ。

   このため、世界的に食料価格の高騰に拍車をかけている。しかし、G7サミットでは、食糧問題は議論の中心にはならなかった。

   木内氏は、

「G7サミットではバイデン米大統領が途上国へのインフラ整備支援を打ち出したが、これは、中国の『一帯一路戦略』に対抗するものだ。世界経済が抱える課題に対応するというよりも、先進国の利害に強く関わる政策だ。世界のリーダーたちが、国を超えて世界全体が抱える諸問題への対応を推進する、という本来のG7の意義は後退してしまっているのではないか」

と懸念を示す。

   また、G7サミットで議論された対ロ追加制裁の中に、ロシア産石油の取引価格に上限を設ける案もあったという。なぜなら、欧米諸国はロシアからの原油輸入の禁止・制限措置を決めているが、それにより原油価格が上昇し、逆にロシアを利する羽目になったからだ。

「フィンランドに拠点を置く独立系の『エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)』がまとめた報告書では、ロシアの戦費は1日あたり約8億7600万ドルと見積もられている。
一方、CREAは、ロシアはウクライナにおける紛争が始まった2月24日から6月3日までの100日間に、化石燃料の輸出で970億ドルの収入があったとしている。1日に換算すれば9億7000万ドル程度である。(中略)ロシアの戦費は化石燃料の輸出による収入で賄われたことになる」

   木内氏は、ロシア産石油の取引価格に上限を設ける制裁は現実的ではない、というのだ。

「取引価格を一定水準以下に抑えることを、石油タンカーでの船舶保険の利用条件とする案が浮上しているという。しかし、そうした枠組みが本当に有効に働くかどうかは疑問だ。実際には、ロシア産原油の輸出を抑制することに一定程度働く一方、一段の価格高騰を招くことにはならないか」
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