2024年 5月 6日 (月)

「東芝」経営再建...「物言う株主」経営陣入り、非上場化の流れ加速か 企業価値高める「最善策」の模索続く

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

外資だけの買収は事実上困難、産業革新投資機構(JIC)と組む可能性も?

   それでも非上場化に進むとすれば、短期的利益重視の「物言う株主」から、特定のファンド(1社でなければファンドなどの連合)が丸ごと会社を買い取ることで、物言う株主との調整に費やしてきたエネルギーを、前向きの経営再建に向けられる意味は大きい。

   他方、買収資金は、今後の東芝の利益をあてにして借り入れることになるが、買収価格が過大になったり、買収後に順調に収益を上げられなかったりすれば、事業売却など資産の切り売りや人員削減を迫られる可能性もあり、東芝という会社がじり貧になっていくかもしれない。

   また、これまでの記事でも指摘してきたように、原発や防衛関連事業など日本の安全保障に重要な事業を抱える東芝のような企業の買収は、改正外為法に基づく政府審査の対象になる。

   このため、外資だけの買収は事実上、困難とみられる。買収額は3兆円ともいわれる巨額の案件だけに、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)も買収に名乗りを上げており、JICと組む提案もあるといわれる。ただし、JICの資金は税金だから、政府(経済産業省)の事実上のOKが必要だ。

   3月に就任した島田社長は6月初め、データビジネスを新たな核とする経営方針を発表した。デジタル技術とハードの両方を持つ東芝の強みを生かして、「モノづくりができるIT企業」を目指すものだ。「理にかなった戦略」(6月29日、日本経済新聞社説)と評価は高いが、ゆっくり時間をかけている余裕はない。

   収益改善の状況をにらみ、経産省の意向も慮りながら、非上場化を中心とした再建策の検討が進むことになる。(ジャーナリスト 済田経夫)

<東芝年表>
2015年 4月 不正会計が発覚
2016年12月 米原発事業での巨額損失を公表
2017年12月 6000億円の第三者割当増資
2020年 1月 子会社で不正会計が発覚
2021年 4月 英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる買収提案が判明/車谷暢昭社長辞任、綱川智会長が社長に復帰/CVCが買収提案を事実上撤回
2021年 6月 20年の株主総会の運営が不公正だったとの調査報告書公表/株主総会で永山治・取締役会議長らの取締役再任否決
2021年11月 会社を3分割する方針を公表
2022年 2月 3分割計画を2分割に修正
2022年 3月 綱川智社長が事実上引責辞任、島田太郎氏が後任に就任/臨時株主総会で2分割計画否決
2022年 5月 再建計画の提案締め切り、非上場化8件などの提案
2022年 6月28日 定時株主総会でファンド幹部2人を含む13人の取締役を選任

<J-CASTニュース バックナンバー>
「東芝」経営再建、投資家から8件の「非上場化」提案...このまま買収の方向で進むのか? 今後を左右する3つの「論点」とは(2022年06月12日付)
いばらの道続く「東芝」経営再建の行方 「2分割」「非上場化」否決...またも戦略練り直し急務(2022年4月3日付)
可決するか? 東芝「2分割」案 臨時株主総会に向けて続く関係者間の激しい駆け引き(2022年2月22日付)
株主が「ノー」前代未聞の異常事態! 東芝経営に「救世主」は現れるのか?(2021年7月4日付)
混迷続く東芝、「過保護」の実態が明るみに 経産省が「物言う株主」に圧力(2021年6月21日付)
社長辞任、CVC買収断念... 混迷の東芝はどこへ行くのか!?(2021年4月24日付)
東芝2兆円買収 CVCキャピタルの提案は「混迷」から脱出するチャンスなのか?(2021年4月13日付)
東芝経営陣の正念場 「物言う株主」が揺さぶる「不利益な議決権行使」の実態解明のゆくえ(2021年3月27日付)
選任賛成率、異例の「57.96%」 物言う株主に悩まされる東芝・車谷社長のかじ取り(2020年8月25日付)

姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中