2024年 4月 26日 (金)

産休明けに「仕事の負荷を下げてほしい」と相談してきた女性部下...どうしたらいい?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE 7】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE 7」では、「産休明けに『仕事の負荷を下げてほしい』と相談してきた女性部下」のケースを取り上げます。

  • 産休明けの女性部下に「仕事の負荷を下げてほしい」と言われたら?(写真はイメージ)
    産休明けの女性部下に「仕事の負荷を下げてほしい」と言われたら?(写真はイメージ)
  • 産休明けの女性部下に「仕事の負荷を下げてほしい」と言われたら?(写真はイメージ)

「仕事の負荷を下げていただきたいのですが...」

【上司(課長)】相談があるとのことだけど、どんなことかな?
【Aさん】実は、申し訳ありませんが、仕事の負荷を下げていただけないかと思いまして...。
【上司】えっ! そうなの...。やはり産休明けで、これまでどおりの仕事ではきついのかな。
【Aさん】はい...。保育所の送迎もあり、残業もできません。子どもの具合が悪ければ、遅刻・早退やお休みを頂くことにもなります。夫は協力的なのですが忙しい職場なので多くを頼れず、自信がありませんので...。
【上司】子どもさんが小さいから、何かとたいへんだよね...。
【Aさん】そこで、短時間勤務にして頂き、在宅勤務も上限まで行いたいと思います。職場の皆さんにご迷惑をかけずに済む範囲の仕事にしていただきたいと思いまして...。
【上司】そうかぁ...。これまではリーダー役で頑張ってくれていたのにね...。
【Aさん】はい...。とても残念なのですが。どうぞ、よろしくお願いいたします。

   産休明けの女性部下から上司への相談事例です。部下からは、育児に時間がとられることから時短勤務や在宅勤務を希望すると同時に、仕事の負荷を下げてほしいとのこと。

   企業において、出産・育児と仕事との両立支援施策も拡充されてきました。それでも、子育てをしながら従来通りの業務をこなすのは、並大抵のことではありません。女性部下の申し出は、切実なものと考えられます。

   さて、あなたがこのCASEの上司なら、どのように説明しますか?

すぐに申し出を認め、できるだけ仕事の負荷を下げる?

   部下思いの上司としては、次のように対処するかもしれません。

   「Aさんの申し出はもっともだ。特に女性のライフステージ上では、仕事より育児や家庭が優先の時だろう」と考え、「よし、分かった! Aさんの希望どおりに人事と調整し、短時間勤務と在宅勤務の手続きを進めよう。また、仕事も無理なリーダー役から負荷の少ない仕事に改めよう!」と快く応じる。

   ものわかりのよい上司であれば、当然の対応のように思えます。しかし、この判断は本当に部下のためになるのでしょうか。

   40代後半~50代の男性管理職で仕事一筋に働いてきた既婚上司の場合、自分が一家の大黒柱で、妻は専業主婦かパート職などの場合も少なくありません。育児や家事を担った経験は少ないでしょう。

   そのため、内心では「社員として給料を得ている以上、家庭の事情はあれども仕事の責任を果たして当然」と考え、Aさんのような状況や訴えを、申し出のままに受け止めてしまう場合もあるのではないでしょうか。

   そして、「結局、女性は仕事より育児や家庭が優先」と決めつけてしまいがちです。その結果、女性部下を中核人材として育成することを諦め、できるだけ育児に専念してもらおうとするのです。

女性部下の本音を聞き、真の両立支援への道を共に考える

   しかし、育児期の女性は、すべて仕事より育児や家庭が優先と考えているのでしょうか。たしかに育児の負荷は高まるものの、責任ある役割を担いたい、キャリアを断線させたくないと考える人もいるのではないでしょうか。

   本当は、仕事も育児も共に頑張りたい。でも職場に迷惑をかけられないので、苦渋の判断で短時間勤務や仕事の負荷軽減を申し出ているかもしれません。その点に留意し、まず部下の本音をよく聞いてみることです。

   つまり、女性部下の表面的な申し出をそのまま鵜呑みにしないことです。とはいえ、従来通りの仕事を従来通りの働き方で続けることにも無理があります。

   子育て中の社員が短時間勤務になっても、退社後の生活の負担はたいへんなものです。Aさんの場合、夫は協力的とはいえ多忙な職場とのこと。社会的には男性育休の取得も奨励されていますが、現実の壁はまだ高いのです。

   そこで、上司としては、「長時間で責任の重い仕事」か「短時間で責任の軽い仕事か」という二者択一の発想から脱しましょう。「短時間で責任の重い仕事」という第三の選択肢を考えるのです。

   上司は、部下と一緒に仕事の棚卸しと進め方の見直しを行い、育児や夫の協力など家庭の状況等もよく聞き、キャリアアップできる役割と働き方を共に考える伴走者になってほしいと思います。

誰もが活躍し続けられる職場改革の一環として取り組む

   具体的には、部下の仕事を、止めてもいいもの、改善すべきもの、他者と分担できるもの、本人がさらに深め伸ばしたいもの、などに仕分けていきます。

   そして、短時間勤務や在宅勤務でも十分に本人の力を発揮でき、チームや会社に貢献できる仕事を取捨選択していくのです。ITツールをうまく使えば、在宅でもリアルタイムでのやりとりや会議参加などもできるでしょう。

   メンバーに動いてもらうことが本分であるチームリーダー役だからこそ、在宅で継続することも十分可能なはずです。また、メンバーとオンラインミーティングで仕事の目的をしっかり共有し、要所要所で相談を行っておけば、チームはまわっていくでしょう。

   こうした新しいチーム運営が実現すれば、仕事と育児の両立社員の活躍のみならず、リモートワークを取り入れた働き方改革のモデルにもなるでしょう。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著「本物の上司力~『役割』に徹すればマネジメントはうまくいく」(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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