2024年 5月 2日 (木)

企業の株価・投資に大きく影響、融資受けられないことも...加速する「カーボンニュートラル」

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日本が注目する洋上風力発電、水素、アンモニア

   本書は、こうした動きの中で変革するエネルギー産業、自動車産業など各業界の取り組みをコンパクトにまとめている。

   たとえば、洋上風力発電。国土の狭い日本では再エネ普及には制約があるとされてきたが、日本は世界第6位の排他的経済水域を持つ世界有数の海洋国家だ。海上はさえぎるものがなく、日本の海洋は風況もよいとされ、洋上風力発電のポテンシャルは非常に大きいという。

   海底に基礎を形成して風車を建てる「着床式」が欧州の浅い海などで導入されており、日本でも秋田県沖などで建設が進んでいる。日本の深い海にも対応可能な「浮体式」の検討も始まった。

   洋上風力発電の事業規模は数千億円、部品数が数万点と多く、関連産業への波及効果が大きいという特徴があり、日本の得意とするものづくり産業が実力を発揮できる分野だ、と前田さんは期待している。

   日本が注力している分野の1つが水素だという。水素は反応過程でエネルギーを生み出すが、化石燃料と異なり、CO2を排出しない。また、製鉄業では、石炭使用が課題になっているが、石炭の代わりに水素を使って製鉄を行う水素還元法という手法もあるそうだ。

   ただ、水素は可燃性の気体であり、取り扱いが難しい。

   また、生成方法別に、化石燃料からCO2排出を伴いながら抽出する「ブラウン水素」、その過程でCO2を回収して生成する「ブルー水素」、再エネ起源の電力を使って生成する「グリーン水素」などがあるが、いずれも非常にコストが高く、市場競争力を高めるには10分の1までコスト低下が求められるというから、課題は大きい。

   政府のグリーン成長戦略で重要視されているのが、アンモニアだ。

   大量輸送が難しい水素を、輸送技術が確立しているアンモニアに変換して輸送し、利用する場所で水素に戻すという手法が研究されている。また、石炭火力に混ぜて燃やす混焼技術で、CO2排出を抑制する開発も進んでいる。

   このほか、日本の先端的な脱炭素技術として、高性能モーターで世界一のシェアを持つ日本電産、CO2の高速処理技術で世界最高速度をたたき出した東芝、植物より効率がいい人工光合成技術を持つトヨタ自動車グループ、電力ロスを低減するパワー半導体で世界トップクラスのシェアを持つ三菱電機と富士電機、東芝デバイス&ストレージなどを紹介している。

   物流業界では、佐川急便が中国製EVを2022年から順次導入している。日本のスタートアップ企業が設計・開発を行い、そこから委託を受ける中国企業が生産するという水平分業型の生産モデルを構築。7200台の軽自動車すべてをEV化すると発表した。

   もはや、脱炭素の流れは私たちの生活の近くまで及ぼうとしている。

(渡辺淳悦)

「60分でわかる! カーボンニュートラル超入門」
前田雄大著、EnergyShift監修
技術評論社
1210円(税込)

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