2024年 5月 5日 (日)

会社としての目標を示しても受け入れない部下...どう対処する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE18(前編)】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE18」では、会社としての目標を示しても受け入れない部下のケースを取り上げます。

  • 会社としての目標を成し遂げるために、上司がすべきことは?
    会社としての目標を成し遂げるために、上司がすべきことは?
  • 会社としての目標を成し遂げるために、上司がすべきことは?

「会社・本部の正式決定こそが目標だ!」

【上司】第2四半期の職場の目標は、以上のとおりだ! 頑張って取り組もう!
【部下】しかし、第1四半期の目標が未達だったのに、第2四半期にこの目標では、さらに難しいのではないですか?
【上司】組織としての目標は、めざすものだろう。最初からあきらめていてどうする!
【部下】けれども、前回未達の要因を分析した上で根拠のある目標を立てないと、また未達に終わると思うのですが...。
【上司】しかたないだろう。本部が全体として必要な目標を決める。そして、それを各現場が分担する。それが会社であり、目標というものだ。
【部下】では、本部が組織として決めた目標の根拠は何ですか?
【上司】何っ!?、そ、それは...。上が正式に決定したということに尽きるだろう!
【部下】......。(なんだ、それじゃ単なる受け売りだけの伝書鳩じゃないか!)

「伝書鳩上司」になってはいけない

   会社全体の今期の目標が決まり、その分担数値が現場に降ろされました。しかし、真面目な部下は、現場として達成できる根拠の見通しがないと、安請け合いはできないとの意見。それに対して上司は、「組織の決定事項だから」と言うばかり。部下は「それでは、単なる伝書鳩では?」と憤慨しています。

   自分が中間管理職である場合、あるいは事業トップでも経営からの命令に服する立場の場合、CASEの上司のような状況に置かれることは、少なくないでしょう。会社全体としての目標の策定は必要事項であり、現場管理職がスタッフとの間で板挟みになるのは珍しいことではありません。

   ただし、上層部からの目標や情報を部下に伝える際には、重要なポイントがあります。それは必ず「あなた自身がどう考えているか」「その目標や情報について今後どう対応していくつもりか」も合わせて伝えることです。

   「本部が決めたことだから」「上層部が言うことだから」と、ただ伝達するだけでは、経営層と現場のメンバーをつなぐあなたの役割は果たせません。「伝書鳩上司」になって、一方的に伝えていると、部下は「結局、上層部の顔色を見ているだけだろう」と不信感を抱きかねず、信頼を失うことにもつながります。

顧客志向で、ビジョンにもとづいて語る

   あなたが部下にメッセージを伝える時は、それが上層部からの命令であろうと、必ず組織のビジョンに立ち返り、あなた自身の言葉を使って語ることが大切です。常に組織の存在目的である「顧客」や「社会貢献」を志向することが一貫した態度を作ります。

   たとえば、経営層から「今期は目標の7割しか達成できていない。来期は目標達成に向けてさらなる営業力の強化を図る」という方針が示されたとします。これをただ伝えれば、ただでさえ成績が上げられず苦しんでいる部下たちは、うんざりするだけでしょう。

   しかし、あなたが以下のように話したら、どうでしょう?

「前期はコロナ禍の影響も残り、営業成績も伸びていない。だが、お客様も厳しい状況にあるだろう。こういう時こそお客様の課題をよくヒアリングして、喜ばれるお役立ちにつながる提案を持っていくことが必要だ。目標達成もこのエリアの市場性を考えて不可能ではないと思う。前期は〇〇社で大型受注があったが、その成功要因を分析したところ、他社での同様の拡販はできると考えている。大変だが、お客様への訪問回数を増やし、企画を磨いていきたい」

   このように、組織のビジョンに立ち返って語るなら、部下も受け止め方が変わってくるはずです。

   つまり、上層部の意志を適切に「翻訳」し、組織の存在目的とすり合わせながら伝えることが必要なのです。

   では、「よき翻訳者」であるためには、どのような心構えで臨むべきか。<会社としての目標を示しても受け入れない部下...どう対処する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE18(後編)】(前川孝雄)>で、さらに解説していきます。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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