2024年 5月 6日 (月)

ジリジリ上がり続ける物価...苦しさは人それぞれ違うのに、ナゼ賃上げは一律「○%」なの?【vol.21】(川上敬太郎)

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中小・零細企業の賃上げが進まなかったとしたら、大手との賃金格差が広がっていくのでは?

   そんな中でも、早々と賃上げ宣言している大手企業の存在は頼もしい限り――なのですが、ここでふと疑問が生じました。大手企業の賃金水準って、そもそも高かったのでは? それと、もしも大手企業だけ賃上げできて、中小・零細企業の賃上げは進まなかったとしたら、賃金格差がどんどん広がっていくではないですか。

   あと、賃金格差の観点から考えると、「○%アップ」という賃上げの仕方も、ヘンだなって思います。もし5%賃金アップした場合、そのまま年収に当てはめると1000万円の人なら50万円の賃上げ。一方、300万円の人は15万円の賃上げなので、35万円も差が開いてしまいます。

   物価上昇対策をうたいながら、比較的余裕がありそうな高所得者の賃上げ額の方が多く、より苦しいであろう低所得者の賃上げ額の方が少ない施策って、どうなんでしょう。かえって苦しさ、格差が広がってしまいそうです。

   より苦しい状況にある労働者たちの代弁を労働組合に期待したいところですが...厚生労働省発表の労働組合基礎調査の概況によると、2022年の推定組織率は16.5%。ということは、83.5%の労働者には代弁者がいないということになります。

   さらに、組合員の66.6%は1000人以上の大手企業に勤めている人たち。企業規模が小さくなるにつれて比率は下がり、99人以下の企業に勤める人はわずか2.3%しかいません。この人たちの声って、どこまで反映されているのでしょう。

   などとブツクサ言っている間にも、ジリジリ値上げは生活を圧迫し続けています。物価上昇への余力も苦しさも、置かれている境遇によってそれぞれ異なるのに、例年と同じように賃上げ一律○%アップ!とか、労働者をザクっと一括りにするやり方って、やっぱりムリがあると思います。

   それでも、賃上げ自体はありがたいことなのですが...代弁されずに埋もれてしまっている大勢の労働者の声には、誰か耳を傾けてくれているのでしょうか。(川上敬太郎)

川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家
男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌「月刊人材ビジネス」営業推進部部長兼編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。
雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する「働く主婦・主夫層」の声延べ4万人以上を調査・分析したレポートは200本を超える。
NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディアへの出演、寄稿、コメント多数。
現在は、「人材サービスの公益的発展を考える会」主宰、「ヒトラボ」編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。
1973年生まれ。三重県出身。
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