仕事で賢く使うには?...東洋経済「ChatGPT」、エコノミスト「世界金融危機」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする(「週刊ダイヤモンド」は先週合併号のため今週は休み)。

ChatGPTで仕事に革命を

   4月17日発売の「週刊東洋経済」(2023年4月22日号)の特集は、「ChatGPT仕事術革命」。すべてのホワイトカラーの仕事に革命をもたらすと言われる、話題のChatGPTについて大特集を組んでいる。乗り遅れないためには必読だ。

   ChatGPTをどう使ったらいいのか? 何を質問するのか、どう質問するかにちょっとした工夫が必要だという。賢い使い方として、こんなポイントを挙げている。

・人間が事実関係をチェックした文章を基に作文や要約をしてもらう
・入力する文章を工夫する
 1 あなたは「〇〇です」と役割を決める
 2 最高のアウトプットを出力するよう伝える
 3 「文字数は〇〇字以内」「簡潔な文章で」などと制約条件を決める
 4 何度も対話を重ねる
・精度がイマイチなら日本語でなく英語で入力する

   お薦めしない使い方としては、ネット検索の代わりとして、事実を知るために使うことだ。聞く内容によっては、まことしやかにウソを交えてくることがあるので、グーグルなどのネット検索の代わりには使えない。

企業での「使用黙認」が危険

   企業での導入も進んでいるようだ。パナソニック コネクトは、2月から米オープンAIのAIアシスタント機能を国内全社員に導入したという。使えるのはGPT-3.5とChatGPTで、入力した情報がAIの学習に使われない米マイクロソフトのクラウドサービスを利用している。

   用途ごとにプロンプト(入力文)のテンプレートが用意されており、どう質問したらよいかわからない社員でも、利用のハードルは低くなっている。利用開始から1カ月間の質問数は5万5000に達したという。

   企業での使用について、元警察官僚でZホールディングス常務執行役員の中谷昇さんが、いくつか注意している。

   情報漏洩を防ぐために、個人情報や社外秘の情報を入力してはいけないのは、もちろんである。なぜなら、ChatGPTを含む無償の生成AIでは、ユーザーが入力した情報がAIの学習に使われてしまうことがあり、そのまま第三者に出力される可能性があるからだ。企業が利用するなら学習に使われない有償での利用が安心だ。

   使用を黙認している状態がいちばん危険だと警告する。企業としての利用姿勢を明確にし、利用を許可する場合は「利用ガイドライン」を策定する必要があるという。承認者を定めること、入力する際、出力されたものを利用する際のリスクを列記することが、最低限行うことだ、としている。

   このほか、無料で使えるAIツールも紹介している。多言語翻訳の「DeepL」、音声認識・文字起こしの「CLOVA Noteβ」などだ。

マイクロソフトとグーグルが覇権争い

   パート2では、生成AIの業界地図をまとめている。現時点で市場を支配しているのはオープンAIとマイクロソフト、エヌビディアの3社だ。

   ChatGPTの開発元であるオープンAIは、非営利のAI研究機関だが、2019年にマイクロソフトが出資した。マイクロソフトは自社の検索・クラウドサービスに最新のGPTを組み込み、驚異的なスピードで誰もが使えるAIサービスを生み出している。AI半導体の世界シェア8割を握るのがエヌビディアだ。マイクロソフトとも提携している。

   この先、マイクロソフト連合に対抗できるのは、GAFAMのうち、アルファベット(グーグルの親会社)やメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)だという。両社は対話型AIの開発に不可欠な大規模言語モデル(LLM)を独自に開発している。中国の百度(バイドゥ)やアリババグループなども米企業を追い上げている。

   パート3では日本企業でのビジネス活用を紹介している。

   弁護士ドットコムではChatGPTと連携したチャット法律相談を5月に立ち上げる。強みは法律相談サイト「みんなの法律相談」に蓄積された121万件のデータベースだという。サービスは当面無料で提供し、よりよい回答をChatGPTに学習させる。

   菓子メーカーの江崎グリコもAI活用に本腰を入れている。

   全社員を対象にデジタル教育を行い、データ収集・分析手法やAIの知識を習得し、自らデータを活用できる人材を増やすという。「健康」という付加価値を高めるのが目標だ。

   ChatGPTは、「まとめる」「読む」「書く」「話す」ことの効率化、高度化を実現するツールだ。文系人材でも工夫次第でプログラミングコードを書かせることもできるという。AIを操縦する力が求められるようだ。

忍び寄る世界金融危機

   「週刊エコノミスト」(2023年4月日号)の特集は、「忍び寄る世界金融危機」。インフレ退治に向け、米国が政策金利を引き上げ始めてから1年。急激な利上げの影響が米国の地銀破綻というかたちで現れた。欧州ではクレディ・スイスが事実上の経営破綻。これは金融危機の予兆なのだろうか。

   米金融業界は、邦銀への影響に関心を高めているという。

   注視しているのは、米国債への投資額が大きい、ゆうちょ銀行と農林中央金庫だ。ゆうちょ銀行は運用資産の34.9%にあたる77兆円を米国債など外国債券に投資している。農林中金の外国債券も24兆円に上る。

   ゆうちょ銀行と農林中金は米国債の投資額が大きいため、投資活動に変化があれば、米国債市場に影響が出かねないので、米当局もメディアも関心を持たざるをえないという。

   米シリコンバレー銀行(SVB)は、全預金の9割近くが2日で流出するという衝撃的な取り付けを起こした。同誌によると、長谷川克之・東京女子大学特任教授は、「SVB破綻を同行固有の問題として片づけるのは危険だ。背景にある預金と債券の2つの危機を乗り切るには、議会の預金保護と中央銀行の金融緩和が必要になるが、容易ではない」と見ている。

   米連邦準備制度理事会(FRB)ですら見誤るほどのリスクの再評価と金融のゆがみが進行中であり、日銀の植田和男・新総裁にはFRBを他山の石として、景気、物価、金融のバランスへの配慮がこれまで以上に求められている、と注文をつけている。

   SVBやクレディ・スイスが経営難に陥ったなかで発動された「ベイルイン」という仕組みについて、解説している。

   ベイルインとは、金融機関が発行する永久劣後債や優先出資証券について、経営が悪化した場合には元本を削減したり、普通株に転換したりすることである。

   リーマン・ショックの反省から規制強化がされた一方で、複雑になりすぎた仕組みに専門家からも戸惑いの声が出ているという。

   今回、クレディ・スイスの破綻によって実行されたAT1債のベイルインは、投資家を大きく動揺させた。クレディ・スイスの株式は、買収するUBSの株式と交換されることになったものの、AT1債については全額減価、すなわち元本がゼロになる。

   BNPパリバ証券チーフクレジットアナリストの中空麻奈氏は、「債券・債権者のリスク許容度を狭める」として、AT1債の無価値に異議を唱えている。

どうなる日銀? どうなる日本株?

   第2部では、植田日銀始動についての寄稿が載っている。北村行伸・立正大学データサイエンス学部長は、「欧米の金融不安が強まる中、政策金利は引き上げられない」と見ている。その一方、AIの利用が進み、金融業や銀行のビジネスモデルが大幅に変わることが予想され、臨機応変に対応できる人材として植田総裁に期待している。

   これに対し、森永卓郎・獨協大学経済学部教授は、岸田政権に忠実な植田総裁は1年以内に利上げを実行、「令和恐慌」の可能性を警告している。

   日本株はどうなるのか? 「緩和縮小で、国債の利回り急上昇・日経平均下落」「金利上昇で、地銀再編、自社株買い企業に注目」「脱デフレで、家計の消費や企業の投資が活発に」など、エコノミストがさまざま予測している。

インバウンドが急回復

   第2特集は、「インバウンド再始動」。想定をはるかに超えるベースでインバウンド(訪日外国人観光客)が回復。中国人抜きでコロナ前の6割が回復し、年内にコロナ前の水準に戻るという。追いつかないのが空港やホテルの受け入れ態勢だ。

   この流れを活かすために地方での高付加価値旅行を提案している。

   特定の観光地に外国人客が殺到し、生活に支障で出ることもあった、コロナ前を思い起せば、同じ轍は踏みたくないと多くの人は思うのではないだろうか。そのためにも新たな投資が求められている。(渡辺淳悦)

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