国立大学・大学院への外国人留学生数、5000人以上の増加...コロナ禍前の水準に 「国際化」目標の10%にはまだ届かず(鷲尾香一)

   国立大学協会の調査結果で2023年2月28日、2022年の国立大学の学部と大学院を合わせた外国人留学生が前年比で5000人以上増加し、総学生数に占める比率が新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と同水準の8.0%にまで回復したことが明かになった。

教員数に占める外国人教員の比率は5.6%に上昇

   国立大学では2013年から「国立大学における教育の国際化の更なる推進」を目標に掲げてきた。外国人留学生の受け入れ増加、日本人留学生の派遣増加、外国人教員比率の引き上げ、英語での授業実施科目数の増加などに取り組んでいる。

   その進展状況を把握するため、毎年5月1日現在と11月1日現在の調査を国立大学86大学に実施している。

   今回公表されたのは2022年11月1日現在の結果だ。それによると、外国人留学生数は4万7430人と前年同月比で5158人(0.6%)増加した。人数ではピークだった2019年11月の4万8483人には及ばないものの、総学生数に占める外国人留学生の比率は8.0%となり、ピークと並んだ。

   その内訳は、大学の学部が前年同月比2383人(0.4%)増の1万1507人、大学院が同2775人(0.6%)増の3万5923人となっている。

   国際化の目標としては、2020年までに外国人留学生の比率を10%にすることを掲げていたが、新型コロナの影響で人数では2020年11月に4万835人、比率では2021年5月に6.9%まで減少した。

   ただ、新型コロナでの国を跨ぐ移動の制限が徐々に解除されたことで、外国人留学生の受け入れも回復している。(表1)

   一方、外国人教員は2022年5月時点で前年同月比71人(2.0%)増加して3541人となり、教員数に占める外国人教員の比率は5.6%に上昇した。外国人教員数は2020年、2021年とも新型コロナの影響を大きく受けることなく増加している。

   もっとも、国際化の目標として掲げていたのは、2020年までに外国人教員の比率を倍増させることで、具体的な目標となる比率は6.4%となっていることから、2022年5月時点では達成できていない。(表2)

   英語での授業科目数は、2020年までに大学の学部、大学院とも倍増させることで、学部は7542科目、大学院は1万6136科目となっていた。

   この目標については、学部では2018年度に、大学院では2017年度に達成しており、その後も順調に増加。2022年度では、学部で前年度比865科目(8.5%)増の1万1058科目に、大学院では同863科目(2.7%)減の3万755科目にまでなっている。(表3)

   ちなみに、英語での授業を実施している大学は、国立大学82校中66大学(80.5%)、大学院では86大学中75大学(87.2%)となっている。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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