「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。今回の「CASE28」では、報連相ができない?! 仕事がブラックボックス化する新入社員の教育に悩むケースを取り上げます。週次で「報連相」のアクションプランを立てさせる<報連相ができない?! 仕事がブラックボックス化してる新入社員...どう育てる?【上司力を鍛えるケーススタディCASE28(前編)】(前川孝雄)>の続きです。新入社員に報連相のスキルを身につけさせるための、有効なトレーニング方法を紹介しましょう。上司またはOJTリーダーが、毎週の定例ミーティングなどで、新入社員に「今週の報連相計画」を立てさせるのです。まず「何を、いつ、誰に」報連相するのがよいかを新入社人に考えさせ、必要なアドバイスをして予定を定めます。必要であれば、報連相の予行演習をして要点整理をサポートしてもよいでしょう。そのうえで、1週間の「報連相」実践を続け、次週のミーティングで振り返りを行います。うまくできた部分とできなかった部分の相談を受けたうえで、今後の改善策を考えさせ、さらに次の取り組みへと進めていきます。こうして報連相の相場観を作らせていくのです。なお、予め計画できる報連相は一部であって、突発的に生じるものについては、柔軟に対応するように伝えておきます。OJTチェックリストを活用する以下に、上司やOJTリーダー用の「報連相を向上させるためのチェックリスト」を例示します。まず上司自身が内容を咀嚼し、職場や仕事の状況に合わせて加除し、新入社員育成に役立ててください。《報連相を向上させるためのチェックリスト》【報告向上のチェックポイント】□案件名→結論→補足説明→感想の順番で内容を報告しているか?□案件名で目的を伝え、上司・先輩の焦点を定めやすくしているか?□途中経過も報告しているか?□上司・先輩の反応が薄いからといって、報告が雑になったり、回数が減ったりしていないか?□定例ミーティングなどの時間を利用して、週1回程度は報告をしているか?□上司・先輩のスケジュールを把握して、都合のよい時間に報告しているか?□「。」を適度に挟み、一文節を短くして、簡潔に報告しているか?□補足や弁明をする時は、一通りの報告の後に「一言だけ言わせてください」と言ってからにしているか?(言い訳は最後に、簡潔に)□メールでの報告の場合、後ほど口頭でフォローしているか?(特にCC送信のみになっていないか?)□内容に合わせてメモや付箋紙など、アナログツールも利用しているか?□相手のルールや価値観に合わせて報告方法を選んでいるか?【連絡向上のチェックポイント】□案件名→事実→相手への影響→相手への依頼→締め切りの順番で伝えているか?□電話や対面の場合は、相手に案件名や時期・時間を伝えているか?□相手にどんな影響を及ぼすか、伝わっているか?□相手への影響度が高いものから伝えているか?□相手への負担の大きいものや、自己都合での連絡は、対面で話しているか?□相手に動いてもらう連絡の場合、内容と締め切りを明確にしているか?□相手のメリットは明確になっているか?□一方的に伝えるだけでなく、相手の疑問点も聴いて解消しているか?□情報共有で済むものはメールなど相手を拘束しないツールを選んでいるか?□相手が返事の要不要を迷う表現をしていないか?□返事を露骨に催促したり、開封確認のメールを送って、相手に負担を与えていないか?【相談向上のチェックポイント】□案件→事実→背景→自分の意見→相手の意見伺いの順番で相談しているか?□事実と感情を分けているか?□自分の意見や仮説を否定されても、素直に耳を傾けているか?□自己主張や提案は断定せず、相談形式で伝えているか?□相手に、テクニックではなく、真心や一所懸命さで向き合っているか?□相手と意見が対立した場合は、頭から否定せず、違いを認めながら話を進めているか?□相手と意見が対立した時は、視野を広げ、共通の目的に照らして建設的に議論しているか?□相手と意見が対立した時は、主張と譲歩を織り交ぜながら議論を進めているか?□内容に合わせて相談の場所を選んでいるか?□忙しい上司・先輩には「ながら聴き」(歩きながらなど)できる場面を相談に使えないか?□内容によっては、終業後のほうが相談に適していないか?※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。【プロフィール】前川孝雄(まえかわ・たかお)株式会社FeelWorks代表取締役青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶパワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人企業研究会研究協力委員、一般社団法人ウーマンエンパワー協会理事なども兼職。連載や講演活動も多数。著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる痛快!「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。
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