営業の最終ステップ「クロージング」の前に...成約させるには「値引き」してもいいものなのか?(大関暁夫)

オプション提案だけは、その場で受け入れてもらう「小さな応諾」がほしいワケ

   そして、とりあえずそのオプション提案だけは、原則その場で受け入れてもらう「小さな応諾」を取り付けます。すなわち、提案本体の諾否をオプション実行後に先延ばしにしつつも、オプション実行により、相手をこちらに引き寄せて成約確率を高くさせるのです。

   これは「セールス」ステップを「セールス」だけで終わらせずに、同時に部分的な「お試し提案」や「導入提案」を受け入れさせることで、一歩手前に相手を導く「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれるものです。

   一度開いたドアを簡単に閉めさせないように、ようやく開いた隙間に足を挟み込んでドアを閉めさせない、という意味から名付けられたものです。

   「セールス」ステップを「セールス」だけで終わらせてしまった場合、諾否回答をもらうまでの時間は相手にとっては、提案を本当に受け入れていいのか、何か問題があるのではないかという、ネガティブな検討を加える時間に他ならないのです。

   すなわち、「セールス」から諾否回答までの時間を長くすれば長くするほど、ネガティブな検討の量が増えるわけで、成約の確率は下がってしまうとも言えるのです。

   そうさせないためには、「セールス」内容だけで諾否を判断させずに、オプション実行を付加することで、具体的なポジティブ材料を提供する。こうしてネガティブな検討材料を減らしてしまうことが、最も効果的なやり方になるのです。

   ですから営業チームとしては、「セールス」実行前に個々のセールス提案について、「小さな応諾」材料となるオプション提案を検討することが重要になるのです。

大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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