「投資の神様」ことウオーレン・バフェット氏が率いる米大手投資会社バークシャー・ハサウェイが、日本の商社株を買い増したと公表しました。2023年4月に来日した際も「買い増し」を明らかにしていましたが、それから2か月足らずでの「再買い増し」に、驚きの声が広がっています。アクセルを踏むかのようなバフェット氏「日本推し」の理由を、海外メディアは「日本株でボロ儲けしているから」としつつも、「先見の明」は予測できなかったようです。米CNN、バフェット氏が日本株に「湯水のごとくお金をつぎ込んでいる!?」バフェット氏が投資をしているのは、三菱商事、丸紅、住友商事、三井物産、伊藤忠商事のいわゆる「5大商社」です。今回、23年4月と比較して、それぞれ1%超の割合で買い増しをしたことで、米国外では最大の投資先となったようです。海外メディアも相次いでバフェット氏の「決断」を報じていました。BuffettaddstohisholdingsofJapanesetradinghouses(バフェット氏が、日本の商社株の保有率を増やした:ロイター通信)BuffettpoursmoremoneyintoJapan'sstockmarket(バフェット氏は、日本の株式市場にさらなる資金をつぎ込んだ:米CNN)pourmoneyinto~:~にお金をつぎ込む「pourinto~」は、「~につぎ込む」「~に流し込む」という意味です。液体を流し込むというイメージが強いですから、「pourmoneyinto」は、「湯水のごとくお金をつぎ込んでいる」という印象を与えます。CNNは、今回のバフェット氏の「買い増し」が、日本株式市場の高値相場を「propelling」(前進させる)と予測しています。ちなみに、「propel」は「プロペラ」ですから、プロペラの回転羽根がぐるぐる回って、加速させている様子が思い浮かびます。世界中の投資家やビジネスパーソンがバフェット氏の投資先に注目をしていますが、実際、「投資の神様」と称される同氏が日本株に「お金を注ぎこんでいる」影響はかなり大きいようです。CNNは、「バフェット氏が日本商社株を買い増しする可能性は示唆されていたが、予想よりも早く実施されたことで、日本株への楽観感がさらに高まった」とする専門家の分析を紹介していました。バフェット氏の「プロペラ効果」で、日本の株式に対する追い風はますます強まるのでしょうか。バフェット氏が日本商社株への追加投資を発表したのとほぼ同時に、中国の中央銀行が10カ月ぶりに利下げに踏み切りました。米中経済摩擦の懸念も広がるなか、リーマンショック後に世界経済を牽引してきた中国の景気減速が明らかになってきています。さらに、本国米国の景況感も悪化していることも、バフェット氏の「日本推し」を後押ししていることでしょう。保有株を長期保有する手法で知られているバフェット氏は、日本商社株についても「forthelongterm」(長期間)保有すると宣言しています。「商社の保有比率を最大9.9%まで増やす可能性がある」と報じられていますから、バフェット氏の「プロペラ」は、まだまだ回転し続けのかもしれません。「バフェットの資産は3倍に!」専門家も驚いた日本「ネグレクト企業」への「賭け」バフェット氏が日本商社株に「お金を注ぎ込む」理由は、ズバリ「儲かっているから」です。米メディア・ビジネスインサイダーは、わずか3年の間に価値が3倍近くになったと報じています。Buffett'sJapanbetshavenearlytripledinvaluetonorthof$17billioninunder3years(バフェット氏の『日本への賭け』で、わずか3年弱で170億ドルにまで増やし3倍近くになった)面白いのは、日本株への投資を「bet」(賭け)と称していることです。実際、バフェット氏の投資会社であるバークシャー・ハサウェイは、主にアメリカで投資を行っているため、2020年8月に日本の5つの商社株を購入したことは多くの関係者を驚かせました。経済専門紙フィナンシャルタイムズも、20年の日本商社株への投資は、「abetonahandfulofneglectedenterprises」(ネグレクトされてきた複数の企業への賭け)だと受け止められていた、する専門家のコメントを紹介しています。ところが、バフェット氏が最初に購入した時点から、「ネグレクトされていた」5大商社の株式は平均で181%上昇。その結果、バークシャーの保有資産は60億ドルから現在の約170億ドルに膨れ上がり、同社最大のポジションの一部となっているそうですから、バフェット氏の「先見の明」には驚かされるばかりです。こうしてみると、私たちは今、「希代の投資家」が行った「世紀の賭け」を、ライブで味わっているということがわかります。20年当時は、バフェット氏の決断を専門家でさえ「賭け」と称したほど。誰がここまで利益を生むと予測したでしょうか?私も当時、新聞や週刊誌でバフェット氏が日本商社に投資をしたという記事や、日本経済への楽観的な展望を熱く語るインタビュー記事などを読みましたが、世間の受け止めは「半信半疑」だったと記憶しています。「あの時、商社株を買っていたら、今ごろは大儲けしてFIREできたかもしれない」などと、後悔している人も多いかもしれません。私も「先見の明」がなかった一人ですが、それでも、当時、世間から「半信半疑」で受け止められていた投資が、ここまで大きく成長している様子を目の当たりにすると、後悔よりも「あっぱれ」という尊敬の念が先立ちます。ビジネスインサイダーは、商社株の価値が数十年ぶりの高値に達していることや、バフェット氏が商社株のことを「ridiculouslycheap」(バカげたほど安い)と評価していることも伝えています。今のところ、「日本への賭け」が大成功を収めている様子を、専門家は、「winners」(勝者)を選び抜いてきたバフェット氏の長い経歴に、また一つ新たな歴史が加わった、と称していました。株式購入は庶民の手が届かない領域に達してしまった感はありますが、バフェット氏が操る「バフェット劇場」のゆくえはどうなっていくのか。これからもニュースをウオッチして、ライブ感を味わっていきましょう。それでは、「今週のニュースな英語」は、「pourmoneyinto~」「~にお金を注ぎ込む」を使った表現を紹介します。TechgiantsarepouringmoneyintoA.I.テック巨大企業はAIに資金をつぎ込んでいるInvestorspourmoneyintoemergingmarkets投資家は新興国にお金をつぎ込んでいるHeputalargeamountofmoneyintohishobby(彼は趣味に大金をつぎ込んだ)バフェット氏については、「先見の明」だけでなく「広報戦略」の巧みさにも驚かされます。購入先を公表すれば「バフェット効果」を狙った投資を呼び込みますし、「長期保有」を宣言すれば、景気後退の局面でも「バフェット氏は手放さない」という安心感で、株価が下落することはないでしょう。御年92歳になる「投資の神様」が、長年築いてきた実績と信頼がすべてを物語っています。(井津川倫子)
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