「東京モーターショー」から名称をあらため、4年振りとなる「JAPANMOBILITYSHOW(ジャパンモビリティショー)2023」が11月5日(一般公開日)まで東京ビッグサイトで開催されている。自動車会社からサプライヤーその他、多様な産業やスタートアップが集結、来場者に日本のモビリティの未来を期待させるイベントとなっている。前回開催の「TOKYOMOTORSHOW2019」における192社の出展・参加を大きく上回る過去最高の475社を突破したという。今回、日本のプロダクトデザインをリードしてきた、コンセプターの坂井直樹さんが「ジャパンモビリティショー」を取材、J-CAST会社ウォッチに寄せた特別寄稿をお届けする。日本勢はEVに出遅れ...ショーのためのコンセプトカー目立つ私(坂井)が行ってみた印象は、晴海での開催が最後となった「第27回ショー東京モーターショー」(1987年)を彷彿とさせる多くの来場者を迎え、久しぶりに元気なイベントになったことだ。新生「JAPANMOBILITYSHOW2023」は、自動車業界の枠を超えて、陸も空も宇宙もモビリティショーの名の通り、EVから未来までを堪能できる。日本の主要自動車メーカーをはじめ、海外メーカー、さらにはトラックやバスなどの産業向けの乗り物などの最新モデルを披露する展示会だった。そして、「自動車」という括りを「モビリティ」に広げることで、エアモビリティや地上走行ロボットなどが加わることとなった。会場に足を運んでみて、イベント名称が「モビリティ」と変わったように、自動車のみならず、あらゆる移動手段の未来を見ることができた。私は、自動車/モビリティは100年に1度の「大変革期」に入ったと見ている。テスラが先鞭をつけた電気自動車が急加速しており、ハイブリッドカー「プリウス」によって環境の時代を切り開いたトヨタでさえ、今後は発売する車の半数以上を電気自動車にするという決断を行っている。そんな中で開催された「JAPANMOBILITYSHOW2023」。エンジン車から電動車へのシフトは明確となり、すでに「電動化は不可避の流れ」であることを実感できる「EVショー」だった。しかし、残念なことは日本勢がEVに出遅れ、実車を充分には出せずにショーのためのコンセプトカー(模型)が目立ち、その現実感は希薄といえるかもしれない。ぜひ盛り返してほしい。思えば、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、あと27年しかない。トヨタのBEVファクトリーが2026年に投入予定のレクサスブランドの次世代BEVで、まず日本車のEV戦争での勝ち負けが決まる、と私は見ている。次の時限爆弾として、2035年までに「ガソリン車の新車販売を禁止」、そして2050年のカーボンニュートラルの実現も控える。EV戦争にはタイマーが付いているのだ。動きの速い海外勢...BYD、メルセデス・ベンツ 発売時期、価格が明確...EV購入を前提の見学者の姿も一方、国外勢の中で特に元気だったのは、中国EV企業世界2位のBYDだ。プレスデイに壇上に立ったBYDオートジャパンの東福寺厚樹社長は、ブレードバッテリーなどBYDのEV技術を力強くアピールした。また、メルセデス・ベンツと共同開発したミニバンEVのDENZA「D9」と、4モーター駆動でその場で360度回転できる電動オフロード高級SUVである仰望(ヤンワン)「U8」を自信を持って紹介した。メルセデス・ベンツでは高級オフロードSUVであるGクラスを完全に電動化した「EQGコンセプト」や「AMGC63SEPERFORMANCE」などをアピール。AMGC63はすでに1660万円で受注しているモデルだし、EQGはコンセプトモデルながら2024年には欧州で発売、日本にもできるだけ早く導入することを明示している。また、BMWはSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)と呼ぶコンパクトSUVの新型「X2」と、そのBEVモデルである「iX2」をJMS2023で世界初公開。iX2は「2024年第2四半期導入予定」であるものの、すでに742万円(税込)という価格も発表済み。このように国外勢は、すでに現在市販しているものから、すぐ発売できるEV車が多く、さながらメーカー側の販売店のように尋ねれば価格も答える。見る側も、EV購入を前提の見学者も多かった。国内勢の注目株は? ホンダ、ハンドルがない完全無人の自動運転専用車両 Turing、「Teslaを超える自動車メーカーを作る」がミッション!その中でポジティブな印象を与えたのは、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)は、新型EV『AFEELA(アフィーラ)プロトタイプ』だ。このプロトタイプをベースに開発を進め、量産車については2025年前半からの先行受注を開始する。デジタルガジェットという人もいる。あるいは、ソニーとホンダという米国人が好きなブランドだから歓迎されると言う人もいる。日常に関わる公共交通として、ホンダはハンドルがない完全無人の自動運転専用車両「クルーズ・オリジン」で、自由に移動できる「自動運転タクシーサービス」の実現に向け、GM、クルーズと協力してきた。日本国内での自動運転レベル4の自動運転サービスの事業化し、2026年初頭に東京都心部でサービスを提供するという。Turingのブースまた、興味深いブースは「Turing」。彼らは「Teslaを超える自動車メーカーを作る」をミッションとして、AIソフトウェアからのアプローチのベンチャーだ。2030年に完全自動運転EVを1万台量産し、完成車メーカーを目指すという若い人たちの「ビッグマウス」が頼もしい。WHILLのブースWHILL(ウィル)は、WHILL株式会社が開発した次世代型電動車椅子だ。運転免許証の返納後や乗り物から離れた後の生活を想定した近距離用モビリティで、自動運転も設定でき、デザインが美しい。これはいま、街中でも見かけるようになった。そして、空のモビリティも注目だ。電動化や自動化技術が進化し、航空機の世界でも「空の移動革命」を実現するエアモビリティへの期待が高まっている中、SUBARUが提案したのは「より自由な移動」の未来を示したコンセプトモデル。航空宇宙事業も担うSUBARUだからリアリティーがある。三精テクノロジーズ、4足歩行の乗り物「SR-02」がすごい写真左にあるのが、トヨタのスペースモビリティ(プロトタイプ)このほか、「未来の東京を体験できる」というコンセプトのプログラム「TokyoFutureTour」には約200社、スタートアップが90社、その他約200社の自動車メーカーや部品メーカーが参加していた。三精テクノロジーズの「SR-02」その中から、私が関心をもった展示は宇宙、遥か上空、月面探索に関する展示だ。JAXAとトヨタが月面での有人探査活動に必要な有人与圧ローバとして開発している「ルナクルーザー」。そしてロボット分野では、三精テクノロジーズが手掛ける、4脚歩行ライドの新型プロトタイプ「SR-02」は、4足歩行により移動できる乗り物(ライド)だ。まるで手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」の人気エピソード「地上最大のロボット」を浦沢直樹がリメイクしたアニメ『PLUTO』を彷彿とさせる。アメリカのJobyAviation社とトヨタ自動車との協業を2020年に発表し、世界的にも注目されている米国のJobyAviationが手掛ける「ジョビー・アビエーションS4」eVTOL(電動垂直離着陸機)もユニークだ。高速で低騒音の空飛ぶタクシーサービス向けに開発されたものである。(坂井直樹)【プロフィール】坂井直樹(さかい・なおき)WaterDesign代表取締役コンセプター1947年、京都府生まれ。京都市立芸術大学入学後に渡米し、サンフランシスコで「TattooT-shirt」を手掛けてヒット。1973年、ウォータースタジオ社を立ち上げる。1987年、日産「Be-1」のプロデュースで注目を集める。日産「パオ」「ラシーン」、オリンパス「O-product」などのコンセプトデザインに関わってきた。元慶應義塾大学SFC教授、元成蹊大学客員教授。https://water-design.jp/
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