「私たちの気持ちを全然わかってない!」総スカンを食らった新米上司が、左遷先で見つけたマネジメントの本質とは?【部下の心を動かした『胸アツ』エピソード「6」中編】(前川孝雄)

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プロジェクトは迷走し、「担当を替えろ」会社の指示まで

   新たな仕事のプロジェクトが始まると、最初はMさんの頑固さに周囲が振り回されることもあり、メンバーから不満の声が上がりました。

   本人も、慣れない仕事に悩むこと度々でした。なにより初めてのチャレンジでもありプロジェクトは迷走し、成果もなかなか出せませんでした。

「プロジェクト担当者のMさんの経験不足が、うまくいかない原因なんじゃないか。そもそも彼女はいつも頑固で仕事の態度が後ろ向きだというし、担当者を替えたらどうだ」

   管理職会議でも、懐疑的な声が多々...。とうとう決裁者である部門長から、課長のAさんに担当替えの指示が出ます。

「なかなか成果を出せなくてすみません。すべては、課長である私の責任です。今期の課長としての人事評価は最低ランクにしてください。ただ、担当のMさんだけは続けさせてほしいんです。お願いします。
Mさんは、決して後ろ向きなんていうことはありません。本人は頑張っているんです。勇気を出して、私に『やりたい』という気持ちを打ち明けてくれたんです。途中交代させることなく、やりきらせてあげたいんです」

   Aさんは、関係部署など周囲にも「もう少し彼女にやらせてほしい」と働きかけ続けます。Mさんの相談に乗ったりしては、時に弱音を吐きそうな彼女に「自分がやりたいといった仕事だろう。一緒に走り切ろうよ」と言い続けました。

   試行錯誤が続く日々でしたが、半年も経つ頃、しだいに周囲からMさんへの文句が出ることはなくなっていきました。むしろ、彼女独自の頑固さは仕事への強いこだわりとなり、決して投げ出そうとしない姿勢に誰もが感心するようになっていました。

   それとともに、着実に成果も上げるようになっていったのです。Aさんが管理職の会議でプロジェクトの報告をすると、周りからも前向きな声が増えるようになっていきました。

   ある管理職会議が終わったあと、会議室を出がけに部門長がAさんにこう声を掛けました。

「あのマーケティングプロジェクト、あきらめずに続けてよかったな。あの担当のMさん、彼女のこだわりの強さはすばらしいね」
「ありがとうございます。担当替えをとどまっていただいた部門長のおかげさまです」

   Aさんはこう受け答えしながら、内心では「どの口が言うかな。頑固だから替えろと言っていたのに」と苦笑いしました。

   Aさんは、その後2年と経ずに本部に異動になりました。いみじくも、オシボリを投げつけられて左遷されたキャリアから再起を果たしたかたちです。

   ところが...しばらくすると、Aさんのもとに、ある思わぬ知らせが入りました。

   この続きは<「私たちの気持ちを全然わかってない!」総スカンを食らった新米上司が、左遷先で見つけたマネジメントの本質とは?【部下の心を動かした『胸アツ』エピソード「6」後編】>で取り上げていきます。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)をご参照ください。

※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等約40冊。最新刊は『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)。

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