化学肥料の原料価格が高騰する中、神戸市が下水の汚泥から「リン」を回収する能力を倍増させた。市では、2013年から東灘処理場(東灘区)で回収施設を稼働させてきたが、25年4月には玉津処理場(西区)でも施設が本格稼働した。市によると、新施設の稼働で「全国最大のリン回収規模」を誇るという。
回収したリンは肥料の原料として活用されている。今後もリン回収施設は増強予定で、市外にも肥料を流通させたい考えだ。
元々は配管を詰まらせる「厄介者」だった
肥料の3要素は「窒素、リン酸、カリ」。いずれも多くを輸入に頼っている。食糧安全保障上の課題がある上、価格も国際情勢に左右されやすい。このうち、リンは下水処理を行う上では「厄介者」だった。リンとアンモニアとマグネシウムが結合すると、結晶物が配管の中で成長して、詰まらせる原因になっていたためだ。
そのため、市では、リンを下水汚泥から回収して活用する研究を11年から進めてきた。具体的には、汚泥をタンク内で発酵させて分解し、メタンガスなどを取り出した後の「消化汚泥」に水酸化マグネシウムを混合して、リン酸マグネシウムアンモニウムの結晶を回収する。これを「こうべ再生リン」と名付け、肥料メーカーに販売する仕組みだ。東灘処理場の施設は13年に稼働し、年間100トン回収できる。メンテナンスで停止した期間もあるため、24年には75トン回収している。
肥料はJAを通じて市内向けに「こうべハーベスト」と銘打って販売。「こうべ再生リン」の配合割合に応じて「野菜・花用」「水稲用」「酒米用」がある。学校給食用の「きぬむすめ」や、「山田錦」向けにも使用されている。