東京の「社会課題」をスタートアップで解決...「Be Smart Tokyo」中間報告会 スマート東京をめざして

2025年以降も「Be Smart Tokyo」を継続

   障がい者支援としては「Asirase」がユニークだ。視覚障がい者が自由に1人で行きたい時に行きたい場所に行けるというコンセプトで、移動支援のナビゲーションデバイスを開発した。

   靴に小型デバイスを取り付け、それとスマホアプリを連動させて誘導する。行きたい場所を設定すると、前に行くときは足の甲部分を、後方へは踵、右左折は足の側面をそれぞれ振動させる。Asirase取締役COO・香山由佳さんは、

「視覚障がいをもつ方は、最短距離で歩きたいわけではなく、慣れた道、段差が少ない、複雑な曲がり角がない道などを選ぶことが多いのです。そうした人にとっていいルートを推薦する独自技術を開発しました」

と語る。昨年(24年)から1年間で約700台以上が販売され、サブスク契約。満足度が高く、解約率が低いという。

   現在、「Be Smart Tokyo」と進めているのはGPSが届かない屋内のナビゲーション。屋内でも楽しく買い物などを楽しめる試みだ。タッグを組むのは小田急百貨店新宿西口ハルク。店の前でQRコードを読み込み、それによって店内を巡る。その技術をもつスペインのスタートアップ企業と連携して進めているという。今年末からオーストラリア、来年には欧州(ドイツ)、アメリカにも営業をかける。

   一方、認定NPO法人CLACKが事業を進めるのは、教育格差支援のプログラムである。支援対象は中高生。なかでも、貧困、不登校、発達障害などの困難を抱えている子どもたちだ。IT分野の学習やキャリアの伴走支援をし、将来自立・自走できるようにしていく。費用は無料だ。

   ただ、いくらスキルはあっても仕事に結びつけるのはハードルが高い。そこで「Be Smart Tokyo」プログラムで展開するのは、CLACKが企業からITのサービス(たとえば、ホームページ制作、SNS代行、チラシ制作など)といった仕事を受託し、支援する子どもたちに仕事をしてもらい、責任をもって納品して収入を得るという形態だ。そうすれば、学習した成果を発揮することができる。企業側にとっては仕事を発注することが社会貢献になるという、CSRなどブランドイメージの構築につながるようになればと考えている。

   イベントの最後、東京都デジタルサービス局デジタルサービス推進部スマートシティ推進担当課長の大井征史氏はこう挨拶した。

「もともと3年間の計画だった『Be Smart Tokyo』ですが、好評につき、本年度以降も継続します。本年度は『Be Smart Tokyo Inclusive』をテーマにしており、今後も困り事解決に力を注いでいきたい」

   今後どんなスタートアップが現れるのか、楽しみだ。

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