これからの時代に求められるリーダーの在り方とは――。変化の時代の中で、このテーマはいまこそ向き合う必要があるでしょう。ここ数年、リーダーを取り巻く環境は大きく変化しました。かつては、「経験がある人」「答えを持っている人」「強く引っ張る人」がリーダーとして評価されてきました。
しかし、いまは違います。市場の変化は激しく、正解はすぐに陳腐化します。デジタル領域では、メンバーのほうが圧倒的に詳しいケースも珍しくありません。加えて、働き方の多様化により、同じチームの中でも価値観やキャリア観が大きく異なっています。
従来型の「トップダウン型リーダー」は限界
このような状況の中で、従来型の「トップダウン型リーダー」は限界を迎えつつあります。リーダーがすべてを判断し、指示を出し、統制するというモデルは、スピードと多様性が求められる現場では機能しにくいのです。むしろ、リーダー自身が「わからないこと」を前提にしながら、チームとして最適解を見つけていくほうが、結果として強い組織になります。
では、これからのリーダーに求められるものは何か。私は、「答えを出す力」ではなく、「答えが生まれる場をつくる力」だと考えています。メンバーが安心して意見を出し合い、挑戦し、失敗から学び、次につなげていく。そのプロセスを設計し、支えることこそが、リーダーの本質的な役割になってきています。
最近よく耳にする「サーバントリーダーシップ」「心理的安全性」「自律型組織」といったキーワードも、この流れの中にあります。リーダーが前に立って引っ張るのではなく、メンバー一人ひとりの力を引き出すことに重心を置く。言い換えれば、リーダーは「プレイヤー」から「場づくりの設計者」へと役割がシフトしているのです。
現場で求められているのは、理念ではなく行動
ただし、こうした概念は理解できても、「具体的に何をすればいいのか分からない」という声が多いのも事実です。現場で求められているのは、理念ではなく行動です。たとえば、以下のように。
・メンバーの話を途中で遮らず、最後まで聞く
・結果だけでなく、プロセスや挑戦を評価する
・「どう思う?」という問いを増やす
・小さな成功を言語化し、チームで共有する
・あえて余白を残し、メンバーの工夫を引き出す
こうした行動は一見すると地味ですが、チームの空気を大きく変えます。心理的安全性は、制度やスローガンで生まれるものではなく、こうした日々の積み重ねによって形成されるものです。
今回、私(高城幸司)は新刊『決定版 「リーダーシップのコツ」をマンガでマスターできる本』(Gakken)で、この「小さな行動」に徹底的にフォーカスしました。リーダーシップを特別な才能ではなく、「再現可能なスキル」として捉え、「そのまま使えるコツ」として整理しています。73点のノウハウ解説マンガは、単なる読み物ではなく、「具体的な行動イメージを持つためのツール」です。忙しい中でも短時間で理解でき、そのまま現場で試せる構成にしています。
また、リーダーが直面する現実的な悩みにも真正面から向き合いました。「自分に自信がない」「上司に指名されて戸惑っている」「メンバーが指示を待たずに動いてしまう」「年上の部下との関係が難しい」「業務量が多すぎて回らない」――こうした悩みは、特別なものではありません。むしろ、多くのリーダーが同じ壁に直面しています。本書ではQ&A形式を通じて、そうした悩みに具体的な対処法を提示しています。
特に近年増えているのが、「専門性の逆転」に関する課題です。リーダーよりもメンバーのほうが詳しい領域がある場合、従来の「教える・指示する」スタイルは通用しません。このとき重要になるのは、「理解しているふりをしないこと」です。分からないことは素直に認め、メンバーから学びながら意思決定を行う。その姿勢こそが、信頼関係を強化します。
また、リモートワークやハイブリッドワークの浸透により、「関係性の質」をどう高めるかも重要なテーマになっています。顔を合わせる機会が減る中で、意図的にコミュニケーションを設計しなければ、チームは簡単に分断されてしまいます。雑談の場を設ける、1on1の頻度を見直す、情報共有のルールを明確にする――こうした工夫も、これからのリーダーに求められる重要なスキルです。
リーダー自身をどうマネジメントするか
さらに見逃せないのが、「セルフマネジメント」の重要性です。リーダーは組織の中で最も負荷がかかるポジションの一つです。上からのプレッシャーと下からの期待の間で、常に板挟みになります。その中で、自分自身の状態を整えられなければ、判断の質も、コミュニケーションの質も下がってしまいます。
だからこそ本書では、「リーダー自身をどうマネジメントするか」にも焦点を当てています。時間の使い方、優先順位のつけ方、感情の扱い方、適切な休息の取り方。これらは軽視されがちですが、長期的に成果を出し続けるためには不可欠な要素です。
今回、あらためて確信したことは、「リーダーは最初からできる人ではない」ということです。むしろ、多くの人が戸惑い、失敗し、試行錯誤しながら成長していきます。そして、その過程で最も重要なのが、「小さく試すこと」です。
いきなり理想のリーダーになろうとする必要はありません。今日の会議で一つ問いかけを増やしてみる。明日の1on1で、相手の話をいつもより丁寧に聞いてみる。週に一度、チームの小さな成功を言語化して共有してみる。そうした小さな行動が、やがて大きな変化につながります。
リーダーシップは、一部の特別な人のものではありません。誰もが必要に応じて担う可能性のある役割です。そして、それは「センス」ではなく、「学習」と「実践」によって磨かれるものです。
もし、いまリーダーという役割に不安を感じているなら、それはごく自然なことです。そして、その不安は決してマイナスではありません。「きちんとやりたい」という意思の裏返しだからです。その思いがある人は、必ず伸びていきます。リーダーという役割が、「重荷」ではなく「可能性の広がる機会」として捉えられるようになることを願っています。
【筆者プロフィール】
高城 幸司(たかぎ・こうじ)/株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。