競技プログラミングではNO.1のAIでも社長業は「不可能」
次に壇上にあがったのはAtCoderの高橋氏。AtCoderは、プログラミングコンテストをオンラインで毎週開催している。高橋氏自身、Google Hash Codeという世界大会での優勝をはじめ、ICFPCという国際会議が主催するプログラミングコンテストでも7回優勝するなど、輝かしい戦歴を持っている。
そんな高橋氏が、「AtCoder World Tour Finals」という大会で、OpenAIのAIと人間が対決したエキシビションマッチを通して考えたことを次のように語る。
「2025年大会で(エキシビション参加した)OpenAIは2位(に相当する得点)だったんですが、(1年後の)2026年大会ではOpenAIが全問正解。完全にわれわれ人間がボコられました。ところが業務の現場におけるAIはそれほどの存在感がないのです。AIはアルゴリズムでは世界一のはずなんですが、非エンジニアがAIで最適化プログラムを構築したという話は聞いたことがありません」
さらに高橋氏は、AIに「社長はお前がやれ。そして俺に指示を出せ」という課題を出す実験を行ったことがある。パソコンには社長業に必要なすべての情報が集まるようにしたのだが......。
「あまり社長をやれる感じはしなくて、プログラミング能力としては『ジュニアエンジニア』レベルでした。つまり、指示した課題を遂行する能力はすごく高いのですが、人間のように自発的に動くことは難しい。『指示待ち社員』のような印象を持ちました。将来的にAIはもっと進化するとは思いますが、現状では、このあたりにITエンジニアの生きる道が示唆されていると思いました」
すなわち、AIにいかに指示を出せるか、いかに使いこなすかで、仕事の内容や質が変わってくると、高橋氏は予測する。
「AIを使うことにより、従来の10倍のタスクが可能になるだろうと言われています。いまあなたが所属する会社が、ITのそうした動きに対応しようとしない場合どうなるのか。もしAIを使いこなし、10倍の速さで仕事をする会社が現れてしまったら、太刀打ちできず、あなたの会社は潰れてしまう危機に立たされます。つまり、AIが人の仕事を奪うというよりは、AIを使える人に奪われることに気をつけた方がいいというわけです」