2020年 7月 12日 (日)

つらい境遇の人々に徹底して寄り添う 凄まじき奮闘の記録

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毎日酷使する現代人の目にビルベリー由来アントシアニン!

■『日常生活支援 サポートハウスの奇跡』(林真未著、東京シューレ出版)

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   畏友の推薦で出会った本である。

   「聞きなれない出版社だな」と思いつつ発注して数週間。ようやく届けられた本の奥付を見ると、本年5月20日初版発行とある。発刊後直ちに推した所以を畏友に聞けば、本書の主人公のみならず著者も知人という。身近な友人の輪がこうした方々にもつながるのか、と感心したものである。

   以上、本書をご紹介するにあたり、評者にはこうした間接的なご縁がある旨を先ず明示しておく。ご縁があるからと宣伝するつもりは毛頭ないが、無意識のバイアスまでは排除できまい、との趣旨である。

山本氏の活躍と苦悩

   本書は、山本実千代氏の奮闘の記録である。

   行政の縦割りや機能不足の故に苦しんでいる人々に支援の手を差し伸べる活動は、古くから存在する。明治21年、日本初の更生保護施設を創設した静岡の篤志家・金原明善氏の事績は好例だ。

   だが、ここまで徹底して寄り添う支援はそうあるものではなかろう。

   石川県金沢市でそうした活動の拠点として「日常生活支援サポートハウス」(通称サポハ)を運営する山本氏に出会い、その活動に感動した著者・林真未氏が、4年がかりで書き上げたのが本書である。

   筆致を見れば著者もまた相当な熱量の持ち主と推測される。山本氏の熱量が著者に伝播したか、あるいは相互に共鳴したか。本書は両者の見事な連携の賜物とお見受けした。

   それはサポハの支援の記録であるとともに、山本氏の半生記でもある。

   壮絶な人生を歩んできた山本氏は、見ず知らずの他人への支援を惜しまない。苦労してきたからこそ辛(つら)い境遇の人々に寄り添えるのだとしても、支援の実態は生易しいものではない。むしろ、凄まじい、の一言である。

   どう凄まじいか。リストカットを繰り返す少女に対し、これを止めさせるべく山本氏が自身の手首を切って見せた、というエピソードはその一例である。

   そこにあるのは、生命のぶつかり合いである。他者への関わりの中で、徹底して正対する覚悟である。

   結果的に、その少女の人生を立て直すには至らなかったことを、山本氏は悔やんでいるという。だが、祖父母、母親に虐待され、ひたすら孤独であった少女の心に、氏が一条の光を差しかけたことは間違いない。少女の手紙の一節「この人は、今までの大人とちがうと思いました」に、そのことが顕れている。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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