2019年 7月 21日 (日)

遠くに北極星を仰ぎみて

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■『医療制度における公的保険と民間保険の役割』(田近栄治責任編集「フィナンシャル・レビュー」)

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   本書は我が国の医療保険制度改革の参考に資することを念頭に、海外の医療保険制度、とりわけ公的保険と民間保険の役割について調査した文献を編集した論文集である。この論文集が出たのが2012年であるから、決して新しい論文ではない。ただ、オランダ等の医療保険制度改革を紹介するなかで詳しく紹介された「管理競争」の枠組みは、現在も我が国の医療保険制度改革を考える上で重要な参照点となりつづけている。いわば、北極星の役割を果たしている。

海外事例から医療保険制度改革の方向性を探る

   本書によると、オランダ等では医療保険に競争原理が導入されている。被保険者(一般国民)は自由に保険者を選ぶことができ、保険者は医療機関と交渉することで cost effectiveな医療サービスの提供に努める。効率のみでは割り切れない社会上の考慮事項、例えば、年齢、疾病構造、所得によって純粋な民間保険では保険提供のなされない恐れのあるグループに対しては、「リスク構造調整」という手法により、競争原理との整合性を確保しつつ、保険の提供がなされるようにしている。リスク構造調整とは、病気になる確率の高い社会グループを加入者とする保険者に事前にその分の財源を配分するものである。この「事前」ということが肝であり、これによって保険者の予算制約をハード化することができる。予算制約の中で保険者が努力することで、保険者機能が高まり、資源の効率的な活用に資するというものである。

   我が国の医療保険制度は皆保険の実現など社会的公平性の担保において一定の成果を収めている。他方、職域等により加入すべき保険が決められ、選択の余地はない。保険者と医療機関の間の交渉は中央に集約されており、競争原理が働く余地は限られている。リスク構造調整は導入されておらず、公費投入の目的・ルールが明確ではなく、財源配分は事後的なものであり、保険者機能が十分に発揮されているとは言い難い。

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