日本人「薄っぺら」に… 「辺境」内田樹モテモテの理由
昨2009年末、私のところへ、元いた講談社から「企業年金に関するお知らせ」が届いた。要は、業績が悪いので年金の利率を下げたいという要請だ。100周年を迎えたというのに、売上げ減少に歯止めがかからず、ここ10余年で2000億あった売上げが1300億程度までに落ち込み、昨期は100年にして初めての大赤字を出したと聞いている。
JALもそうだが、まずやるべきことは、ここまで経営を悪化させた旧・現経営陣の責任をハッキリさせることだ。そうでなくてはOBの1人として、利率引き下げは了解しがたい。オーナー企業、非上場企業でも、説明責任をきちっと果たさなくては、自社の週刊誌で、他の企業の批判をできなくなる。
参院選は結局読めない?
さて、新年に並んだ週刊誌のいくつかは、早くも今夏の参議院選挙の票読みをしている。「参院選完全票読み!『当落データ』を公開する」(「週刊ポスト」1月15・22日号)は、3人の選挙通に予想させている。有馬晴海氏は民主76、自民26。福岡政行氏は民主45、自民48。野上忠興氏は民主71,自民29。福岡氏だけが、潮目が変わり、新自民党が、事業仕分けに反対した元宇宙飛行士の毛利衛さんやノーベル賞学者を候補に揃え、2人区、3人区に、小沢幹事長が2人擁立する作戦がマイナスに働くと、民主党惜敗もあると読む。
文春は「鳩山民主『ニッポン制圧』」として、宮川隆義政治広報センター社長に予測させている。宮川氏は民主党圧勝、選挙後の議席は、民主127議席、自民76議席になると読む。
参院自民のドンといわれた青木幹雄氏も、今回は出馬すら定かではない。しかし、朝令暮改を繰り返す鳩山首相も安泰ではなく、予算成立と引き替えに辞任もありえるし、今後、鳩山不況が現実のものになれば、この選挙予測は大逆転もあるとする。
新年号には、その年の顔ともいうべき人を登場させる企画が多いが、今年は「日本辺境論」(新潮新書)の著者、内田樹氏がモテモテのようだ。
毎日は「日本人と辺境」という身も蓋もないタイトルではあるが、内容はなかなかいい。バブルが崩壊し、日本経済は低迷、将来に希望を持てない若者が増えたことについて問うと、「労働や学習を過剰に経済合理性で動機づけようとしたことが原因です。『努力すればカネになる』という努力と成果の相関を求めるあまり、いつのまにか『人間はカネのために努力する』という薄っぺらな人間観が定着した。そんなチープでシンプルな目的のために生涯にわたって努力し続けられる人間なんかいません」とバッサリ。
朝日でも内田氏はこう語っている。
「これから日本が目指すべき目標は『質のよい後退戦』だと思います。年老いて、気力体力が失われてゆくことは個人にとっても別に不幸なことじゃない。それが自然の理なんですから。むしろ、これを奇貨として、人類史上初めての『たたずまいの端正な隠居国家』の実現を国家目標に掲げるほうがいい。俗世の欲得でじたばたしている『若者』たちを温かく見守りながら、大所高所から静かな口ぶりで味のあるアドバイスをする『隠居国家』こそ日本のあるべき未来像だと私は思います」