夢の治療は金次第―画期的新薬も高すぎて使えない!

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   医療の発展は目覚ましく、最近はとりわけ「桁違いの技術革新」(濃沼信夫・東北大学大学院・医科系研究科教授)が進んでるそうで、画期的な薬や検査が続々登場してるようだ。ところが、そんな「夢の治療」によって、患者と(国家)財政が追い詰められている――というのが今回の放送の趣旨である。

   問題は、有り体に言って「おカネ」だ。たとえば、抗がん剤の年間費用は250万円~1000万円(保険負担も含んだ額)になるケースがある。新しい薬は「開発・製造に新しい技術を用いることや、ターゲットとなる患者を絞りこむので、個々の薬剤の価格は高くなる」(濃沼信夫教授=前出)からだ。この経済的な負担で「夢の」治療をやめざるをえない人もいる(この番組でよく聞かれる言葉『○○な人が増えている』は使っていなかった)。

白血病が治った!でも、続かなかった薬代

「結局、貧乏人は長生きできないのかな」

   昨年2010年11月に、長年連れ添った夫(58歳)をなくした女性は取材にそう話した。ともにパスタ店を営んでいた夫が10年前、慢性骨髄性白血病にかかり、医師から余命4~5年と言われた。

   画期的な分子標的薬「グリベック」が状況を変えた。この薬を使うと、血液検査の数値は1か月で正常範囲に戻った。夫は「オレ、病気じゃねえよな」と話し、薬を飲み続けなければいけないということ以外、普通の人と変わらない様子に見えたという。

   しかし、グリベックは高かった。当時、年間で約450万円(保険負担含む)かかる薬だ。通常の患者負担3割の健康保険だと負担額は135万円。実際は高額療養費制度が適用されて50万円の負担だった。店の経営が順調なうちはまだよかったが、近所に大型店舗ができた影響で客足が遠のき、収入は月25万円に落ち込んだ。そのなかから薬代で月4万円の出費は大きな痛手だ。

   経済的な苦境などで妻に迷惑をかけて「すまない」という気持ちを抱き続けていた夫は3年前、妻に黙って薬を飲むのを止めてしまったという。中断している間に癌が進行し、後に薬を再開したが、すでに薬は効かなくなっていたそうだ。

「医療がどんどん進歩してよくなってるのに、自分たちの生活がままならないから払えないで、長生きできないなんて、ちょっと理不尽ですよね」

   女性は悔しそうな目で話した。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2011年1月25日放送「問われる『夢の医療』~追い詰められる患者と財政」)

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