2024年 4月 26日 (金)

福島原発被害拡大の張本人・菅直人を殺人未遂で訴追できるか

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「後進国だったら裁判にかけ、死刑という話につながりかねない」

   この物騒な発言の主は「サンデー毎日」の「A級戦犯 菅直人の刑事責任」の中の溝手顕正・自民党参院幹事長である。東日本大震災から1年をふり返る特集を各誌がやっているが、内容は似たり寄ったりである。その中で、菅直人前総理を「殺人未遂に問えないのか」とタイトルを打った毎日が目立つ。

   原発事故を検証する「福島原発事故独立検証委員会」が2月28日に公表した約400ページに及ぶ文書には、原発事故当初、菅政権中枢がいかに混迷していたかが詳細に書かれている。とくに菅首相は事故直後は斑目春樹内閣府原子力安全委員長としか話さず、怒りっぽく独善的なやり方で終始し、「国民への情報が遅れ、マイクロマネジメントにまで走った。全体として不合格と言わざるをえない」と断じている。

   菅首相は2010年10月に中部電力浜岡原発で行われた防災訓練で対策本部長を務め、そのときにSPEEDI(緊急迅速放射能影響予測システム)を用いているにもかかわらず、福島原発事故では活用せず被曝を拡大させてしまった。女房役の枝野幸男官房長官は何ら根拠がないにもかかわらず、記者会見で「(放射能汚染は)ただちに影響が出るものではない」という無責任な発言を繰り返した。さらに事故の対応を議論する際に議事録もとっていなかったのである。

   そこで編集部は「政治の根本は国民の生命と財産を守ることだ。人命を最優先すべき政治家が、白血病になるほどの放射線量と知りながらパニックを恐れて放置・隠蔽した場合、『殺人未遂』に問える可能性はないのか」と疑問を持ち、元最高検検事で筑波大学名誉教授の土本武司に聞きに行く。土本は「適用するなら業務上過失傷害か業務上過失致死でしょうが、因果関係の立証は非常に難しい」とする。

   だが、「国会事故調査委員会」のようなところが、国会に対して菅の証人喚問を要請し、そこで嘘をつけば偽証罪で刑事責任が問える。また、東京地検特捜部に、この問題を捜査したらどうかと水を向けている。大震災から1年が過ぎようとしているのに瓦礫処理も遅々として進まず、原発事故の完全な収束の見通しも立たない。無責任な政治家の象徴として菅や枝野を証人喚問することは賛成である。原発事故は人災である。被災者はもちろん日本人全体が泣き寝入りしてはいけない。

放射能除染これから30年、30兆円の利権争奪

   もう一本、原発事故関連で目に付いたのは「週刊ポスト」の「『放射能コワイ』で暴騰する『東北除染30兆円利権』の争奪戦」の記事。福島第一原発20キロ圏内で始まった除染作業は、待遇面から見ればいい条件である。1日2万円、4時間労働で無料宿泊施設に泊まれて労災も適用されるのだ。

   野田佳彦総理が「除染をしっかりすることが福島の再生につながる」と号令をかけ、費用を1兆円規模としたことから、ゼネコンの間で除染利権の争奪戦が起きているという。政府が示した工程表は、2014年3月末までに放射線量を半分にし、長期的には年間1ミリシーベルト以下を目指す。だが、民家の屋根などの線量は3割程度しか下がらず、1ミリシーベルト以下まで除染するとなると20~30年はかかるから、その総額は30兆円にも上るだろうというのである。

   大手ゼネコンにとってはよだれが垂れるおいしい話しなのだ。しかしウクライナやベラルーシを訪れた福島県の調査団は、「除染を実施したがコストがかかりすぎて効果がなかった」と報告している。結局、ゼネコンだけが儲かることになりはしないか。もっともな指摘である。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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