アメリカ・オバマ大統領は大統領就任のときから広島訪問に意欲的だったという。「核なき世界」でノーベル平和賞を受賞した「プラハ演説」(2009年)の直後にも、「広島訪問」の可能性に言及していた。被爆者たちも「戦争・原爆の悲惨さを自らの目で確かめて欲しい」と広島訪問を望んだ。
阻んでいたのは米退役軍人たちの団体だ。彼らの主張はこうである。「原爆投下は多くの米兵の命を救った。米国やアジアを相手に戦争を始めたのは日本だ」
しかし、若者を中心に米国の世論も変化しはじめた。「クローズアップ現代+」はオバマ政権の巧みな世論対策に注目した。
駐日大使、国務長官を訪問させて瀬踏み
オバマ政権はまず2010年に、当時のルース駐日大使を初めて広島の平和記念式典に参加させた。この時、最も注目していたのは日本の世論だった。原爆投下への謝罪を求める声が高まれば、米国の世論を刺激してしまうからだ。しかし、ルース大使は意外な反応に驚いた。「私が退席するとき、被爆者の多くの方々は拍手をしてくれました。私は驚きとともに敬意を抱きました。日本の国民や政府は謝罪を求めていないと感じました」
ケネディ大使になってからも毎年式典に参加させた。こうしたことで、米国の世論に変化が起きていた。2015年の世論調査で「原爆投下を正しかった」と見る人は全体の56%で、これを年代別に見ると、65歳以上は70%に対して、18歳から29歳では47%だった。
そして、先月(2016年5月)、広島で開かれたG7外相会議に出席したケリー国務長官は原爆資料館に足を延ばした。展示物の説明を一つ一つ丁寧に読み、予定時間を大幅に超えた。この時、ケリー長官はこう言っていた。「帰国したら、私が見たことと広島に来ることの重要性を大統領に必ず伝える」