2018年 7月 20日 (金)

日本にたまり続けるプルトニウムどうする? 核燃料リサイクルは破綻、核開発への疑念も

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   原発の使用済み核燃料から取り出される核物質プルトニウムがたまり続けている。日本にはすでに47トン、原爆6000発分がある。これを理由に核物質を持ちたがる国が出ては......と米国からも懸念の声があがる。原発から吐き出される「核のゴミ」の最終処分場はおろか、低レベル汚染物質の中間貯蔵施設建設さえほとんど進まない現状に加えて、さらに危険度を増すプルトニウムを作り続けるとはどういうことだろうか。

   原発から出る使用済み核燃料を再処理工場でプルトニウムにして、次世代原発の高速炉で再利用するという「核燃料サイクル」が、日本の原子力政策の根幹だ。ところが、その高速炉「もんじゅ」がトラブル続きで廃炉が決まった。

 

   だったら普通の原発で再び使おうという計画も、東日本大震災の福島原発事故で頓挫。そこへ青森県六ケ所村にある再処理工場が来年度以降、本格稼働する。プルトニウムがさらに年8トン増えることになる。こんな無茶な話にストップがいっこうにかからない。

 

   日本のプルトニウム開発を例外的に認めた日米原子力協定の起源は来年(2018年)7月まで。米国は自動延長を認める方針だが、9月にワシントンで開かれたシンポジウムでは「日本はどうする気か」「日米で話し合う必要がある」などと指摘が続出、米側のいらだちがあらわになった。

 

   米国との交渉の最前線に立ってきた坂田東一・元文科省事務次官は「うまく進んでいない現実は認めざるを得ない」という。

   国連総会でも日本のプルトニウムをめぐる軋轢が表面化した。中国が「日本が核開発に乗り出す可能性がある」と懸念を表明した。核兵器を持つ中国が懸念とは自分の有り様を棚に上げておかしな話だが、国際社会に不安を与えていることは事実だろう。

   「近隣諸国の不安が高まる。これは地域の安全保障の問題だ」(元米国防総省のヘンリー・ソコルスキー氏)、「日本にプルトニウムについて働きかける必要がある。日本も議論をするいい機会だ」(ブラッド・シャーマン米下院議員)

 

   トランプ政権は日本にプルトニウムをどう消費するのか説明を求める方向という。

   さらに、朝鮮半島情勢もある。オバマ政権の元高官は「韓国が日本を口実に同じことをしたがっている」と話す。米国は去年(2016年)、韓国にプルトニウムを取り出す研究を初めて認めた。北朝鮮の核武装に対抗して韓国がいずれ核開発に乗り出すと問題視する動きが米国議会で表立ってきた。

 

   長崎大学の鈴木達治郎教授は米国から非公式に伝えられた懸念について、テロの標的、核武装、開発競争の3点を挙げる。「韓国が開発の権利を主張すれば、米国は認めるしかない」「中国は平和利用と称して生産する」といった可能性が現実にあるという。

 

   プルトニウムは去年から国の管理事業になった。鈴木教授は「これまでの消費を増やす対策から、柔軟に生産を調整するという考え方をしっかり公約することが大事です」と語る。それで減らなければ、核燃料サイクルの見直しが必要になるという。

 

   だが、対策はこれだけではないだろう。原発そのものの廃止という選択肢がふくめて話を、なぜしないのか。原発ありきを前提にした枠内での論議から教授もNHKも一歩も出ないつもりだろうか、疑問がわく。原発がある限り使用済み核燃料はたまり続ける。

見直しはパンドラの箱を開けること

 

   核燃料サイクルは米国、インド、ドイツがすでに断念した。今もこだわるのは日本とロシアだ。

 

   ロシアは、最も研究が進んでいるといわれる。最先端の高速炉「BN-800」が去年から本格稼働した。20年で8000億円をかける国家プロジェクトで「21世紀に向けた投資」としているが、もう27回も事故を起こした。

 

   日本が政策を見直そうとしたことはある。元経産省官僚で民主党政権でエネルギー政策の立案にあたった伊原智人氏は「考え直すタイミングはあった」というが、使用済み核燃料を保管する青森県に「約束が違う。核のゴミ捨て場ではない」と反発されてしまった。

 

   使用済み核燃料を各地の原発に送り返しては、スペースがすぐにいっぱいになる。止めることの難しさに直面して、不安だらけの政策が続けられてきた。

   「見直すといった瞬間に、パンドラの箱を開けたくない力が働く」と伊原氏は語る。資源エネルギー庁は「核燃料サイクルの完成が最良の政策」と今も主張している。

 

   鈴木教授は使用済み核燃料を再処理するだけでなく、ゴミとして直接捨てる柔軟さが必要と問題提起する。では、どこに捨てるのだろうかまでは、少なくとも番組中には触れなかった。

 

   取材してきたNHK科学文化部の内山太介デスクは「米国との関係や北東アジアへの影響にもかかわらず、多くが語られてこなかった」と指摘して、専門家だけでなく「私たち」が広い視点に立って考える必要を強調した。

   「不安を感じます。いま改めて考えるときにきています」と言った武田真一キャスターの感想はその通りだ。「トイレのないマンション」にもたとえられる核のゴミをどうするのか、プルトニウム温存の核燃料サイクル政策は続けていいのか、問わなければならない。

*クローズアップ現代+(2017年10月30日放送「"プルトニウム大国"日本~世界で広がる懸念~」)

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