2024年 4月 17日 (水)

<シンクロナイズドモンスター>
B級怪獣映画と思って見たらサイコサスペンス

©2016 COLOSSAL MOVIE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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   ニューヨークでWEBライターとして働いていたものの、現在は失業中のグロリア(アン・ハサウェイ)。毎晩酒におぼれて悪酔いし、ついに同棲中の彼氏・ティム(ダン・スティーヴンス)に愛想を尽かされて、家から追い出されてしまう。仕事も家もなくし、仕方なく故郷の田舎町に戻ってきたグロリアだったが、そこでばったり幼なじみのオスカー(ジェイソン・サダイキス)と再会。彼が経営するバーで働くことになり、新たな生活を築き始める。

   一方、時を同じくして、韓国・ソウルでは巨大怪獣が突然現れて街を破壊していた。世界が騒然となり、グロリアもテレビやパソコンに映し出される怪獣の姿に息をのむが、次第にこの怪獣が自分の動きとシンクロしていることに気づく。

   酒グセの悪いダメウーマンなヒロインをアン・ハサウェイが演じ、自らが製作総指揮も務めた異色コメディ。監督はスペイン出身のナチョ・ビガロンド。

   まず気になるのが、世界を混乱に陥れる謎の巨大怪獣が人間とシンクロしているという設定の奇抜さ。これは新手のB級怪獣映画?!と思いきや、主演はアン・ハサウェイということで、それだけでどんな物語なのか興味が湧く。しかも『マイ・インターン』のような皆が憧れるキャリアウーマンでもなければ、『レ・ミゼラブル』の清純にして短命な美女でもない、失業中の酒におぼれるダメウーマン。でも、そんな役ですらアンが演じるとスクリーンは華やかになり、ついつい引き込まれる。やはりあの目力と笑顔は最強だ。

   ストーリーそのものについては、最初は世界を混乱に陥れた怪獣だったが、グロリアがシンクロする仕組みを解明し、次第に市民から愛される怪獣へと変化していくのが面白い。さらに、グロリアが酔った勢いでオスカーとバーの仲間にその仕組みを話してしまったことで、今度はオスカーとシンクロする巨大ロボットも加わり、事態はさらにハチャメチャに・・・。

   中盤まではこんな感じで、結局、どうやって収拾をつけるのだろうと思っていたら、じつはこの映画、後半からが本題だった。そもそもなぜグロリアとオスカーの2人はソウルの巨大怪獣と巨大ロボットとシンクロできるのか、なぜ「怪獣」と「ロボット」なのか、その鍵となるのが、グロリアが忘れていたオスカーとの過去の思い出だった。堅実で優しいオスカーが、じつはなかなか複雑な人物だったことが明かされ、ストーリーは次第にサイコサスペンス調になっていく。

   コメディタッチなB級怪獣映画とサイコサスペンス、極端にテイストの違う両者を、最後はうまく織り交ぜながら落着させたところはじつにお見事。さらに「お酒は飲み過ぎるとロクなことがない」、女性にとっては「男選びは慎重に」という風刺も効いて、思いのほか厚みのある作品だった。

おススメ度☆☆☆

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