2019年 8月 17日 (土)

安倍首相の「お友達案件」になってきた吉本騒動―官民ファンドや大阪万博に手を突っ込む大崎洋会長は政商か

印刷
糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   「ふりむくな うしろには夢がない ディープインパクトがいなくなっても すべてのレースは終わるわけじゃない 人生という名の競馬場には 次のレースをまちかまえている百万頭の名もないディープインパクトの群れが 朝焼けの中で追い切りをしている地響きが聞こえてくる」

   1975年、ハイセイコーが引退した時、寺山修司がつくった「さらばハイセイコー」を、ディープインパクトに変えてみた。歴史的な名馬が7月30日(2019年)早朝、17歳の若さで突然亡くなってしまった。寺山が生きていたらなんと歌うのだろう。

   武豊はディープの走りを「翼を広げて飛ぶがごとく」と評した。その名前のように、「強烈な印象」を競馬ファンに残して旅立った。引退レースとなった有馬記念の夜、西船橋の居酒屋で芋焼酎のお湯割りを3杯呑んだ。ディープの単勝で儲けたささやかな祝杯だった。

新規事業に「クールジャパン機構」から100億円出資

   吉本興業の芸人たちの闇営業問題は、この会社の前近代的な体質批判にまで広がっている。なかでも朝日新聞が熱心で、7月31日の朝刊では、芸人養成所(NSC)の合宿に参加を希望する研修生たちに、「合宿中の負傷、これに基づいた後遺症、あるいは死亡した場合、その原因を問わず吉本興業に対する責任の一切は免除されるものとする」と記された誓約書に署名するよう求めていたことを報じた。

   吉本側は、担当者が代わったために修正前の規約を渡してしまったなどと釈明しているが、これまでの吉本騒動報道を見ている限り、納得する人間はほとんどいないだろう。

   今週の週刊文春は、吉本のドンといわれる大崎洋会長が、政治家や官僚との付き合いを深め、ビジネスの幅を広げていることを報じている。財務省出身で民主党の衆院議員だった岸本周平は、吉本の経団連入りを仲介した。三重県知事だった北川正恭の元秘書は、現首相補佐官の衛藤晟一や菅官房長官を紹介。タレント・ヒロミの所属事務所の社長を介して萩生田光一官房副長官をというふうに、着々と政界人脈を築き上げていったという。

   もちろん、大阪の維新の会とは蜜月で、大阪万博ではダウンタウンがアンバサダーとしてオファーされ、維新の選挙応援に吉本の芸人が行くことも珍しくない。

   そうした中で、3年前には盛山正仁法務副大臣がなんばグランド花月に、今年の7月には山下貴司法務相が吉本新喜劇に登場し、その前の4月には、G20への協力を求めるためと謳って、安倍首相が吉本新喜劇に出演した。6月上旬には、西川きよしが新喜劇のメンバーを連れて官邸を表敬訪問している。

   まさに"政商"といってもいいのではないか。官邸肝入りで2013年に設立された官民ファンド「クールジャパン機構」との122億円にも及ぶ巨額ビジネスにも入り込んだというのである。経済産業省が所管するこの機構は、出資金693億円のうち政府出資金が586億円にもなるが、累積赤字が179億円にもなっていて、<「今回の"闇営業問題"を受け、吉本の泉正隆専務は『一連の事業にはすでに吉本も多額の資金を投じている。今後、百億円(NTTと組んだ教育コンテンツ等を国内外に発信する事業に、機構から最大で百億円の出資が見込まれている=筆者注)が入って来なければ、支払いが滞ってしまう可能性がある』と危機感を口にしていました」(芸能プロ関係者)>という。大崎ワンマン体制が大風呂敷を広げたはいいが、闇営業問題を始め、多くのほころびが目立つようになってきている。

   発端になった闇営業問題だが、フライデーが報じた宮迫博之と金塊強奪犯の野口和樹被告とのツーショット&ギャラ飲み疑惑を、宮迫は野口とは知らないで写真を撮らされただけだと弁明していたが、野口がフライデーに、写真を撮った後、「一緒に乾杯してシャンパンを飲んだ」と証言したため、宮迫は沈黙してしまう。

   闇営業問題をきっかけに勃発した吉本のお家騒動は、日頃から吉本に不満を抱いていた芸人たちから批判が噴出し、加藤浩次のように、「今の体制が続くなら吉本を辞める」といい出す者も出てきた。こうした非主流派と、松本興行といわれるほど大崎と親しい松本人志、吉本とは少し距離を置く明石家さんま、暴力団との付き合いで芸能界を引退した島田紳助までが登場してきて、山口組分裂のような様相を呈してきているのである。

   週刊新潮は、社説で吉本批判をする朝日新聞に向けて、「従軍慰安婦誤報」をした朝日新聞が偉そうにと、逆切れする始末。古手の芸人・西川のりおに加藤浩次批判をさせ、島田紳助は「俺の出番は終わったわ」といい、惜しまれて引退した上岡龍太郎の昔の「芸人ちゅうもんはなんや言うたら、落ちこぼれ人間ですよ。社会のはみ出しもん。アウトロー。いわば暴力団と一緒ですから」という言葉を引用し、山口組の組員と兄弟杯を交わし、暴力、不祥事を重ねても、芸人として愛され、51歳で亡くなった横山やすしを懐かしむ。

たけしが久しぶりに怪気炎「反社と付き合ってゴメンナサイってのも、ポーズだけか」

   いろいろな人がこの件に関して喋っているが、週刊ポストのビートたけしがとてもいい。<「こんな話、最初に『カネがもらえるっていうんで行きました。相手の素性は詳しく知らなかった』と頭を下げて、少しの間反省期間を作りゃあ大きな問題にはならなかった。それが、保身のために言い逃れをしてしまった。まずはそれが1番の失敗だよ」>

   2人が会見で大泣きしたのは芸人として失格だという。<一度そんな目で見られてしまった芸人が、見る人を心から笑わせられるか? 芸人はバカだと思われてもいいし、ワルだと思われたって構わない。だけど、同情されちゃ商売にならない>

   吉本興業への批判は鋭い。<芸人ってのは"猿まわしの猿"なんだよ。猿が人を噛んだからといって猿に謝れというバカはいない。飼ってるヤツが謝るのが道理だ。吉本興業のトップは、そんな"猿"を6000人も飼っているっていうのに、今回の対応には呆れたね。(中略)

   この岡本って社長はダウンタウンのマネージャーを長くやってたクセに、その辺をまるでわかってない。それとも、わかっていても自分には置き換えられないのか? どちらにせよ芸能事務所の社長とは思えないほどの"間抜け"さだ。これで普段から偉そうに振る舞っていたとしたら、そりゃ『何言ってやがる』と反感を買っていたのも当然だよ。

   あと、吉本興業からすりゃ、若手芸人の待遇について触れられたくなかったのも対応が遅れた原因のひとつだろう。

   オイラが漫才やってたころから、『吉本のギャラ配分はひどい』ってのは有名だったからね。最近じゃぁ事務所とタレントの取り分の比率が9対1だったって話が出てきてるけど、それすら怪しいよな。(中略)

   オイラがいた太田プロで事務所6のタレント4だったかな。太田プロに引き抜かれるときにオイラは最低保障として月16万円を約束してもらったはずだよ。で、売れ始めてからはガンガン文句を言って、ギャラ配分を五分五分にしてもらったかな。

   時代も違うし、裏付けがあるわけじゃないけど、吉本の待遇が悪いのは間違いない。国と組んでウン十億円というカネが動く事業をしていたりするのにギャラは上がらない。一方で、騒動の収集に動いたダウンタウンの松本がやってる映画で赤字を垂れ流してもおとがめなし。それは面白くないのもいるだろう」>

   吉本興業のもつ根深い病根を抉る。<「さっき言ったように、芸人ってのは『猿まわしの猿』だ。だけど、待遇まで猿扱いじゃたまらない。経営者は猿がいなきゃ食えなくなることを自覚しなきゃ、芸能事務所はおかしくなるよ。(中略)

   問題は色々あるけど、吉本がそんな風になってしまった理由のひとつは『芸人養成学校』じゃないかと思う。若いヤツが学費払って『芸人にしてもらう』という仕組みが何か歯車を狂わせたんじゃないか。

   本来は芸人になる素質も運もない人間が、そこを卒業すりゃ自動的に『芸人』と名乗れちまう。そいつらが大成しようがしまいが、学費として取りっぱぐれのないカネが入ってくるおいしいシステムだから、どんどん生徒を募集する。その結果、6000になって過剰な"自称芸人"ができあがるわけだ。そんなヤツラが本当に芸人と呼べるのか。

   岡本社長も『吉本はファミリーだ』なんて気色悪いことを言っていた。そんなバカなことはない、芸能界ってのは弱肉強食の世界だよ。

   誰かが問題を起こして休めば、その分誰かに仕事が回ってくる。『ライバルはいなくなれ』と思ってるのが真っ当な姿なんでさ。(中略)

   加藤(浩次)もそうだし、これで宮迫も亮もみんな辞めないとなりゃこんな茶番はない。『反社と付き合ってゴメンナサイ』ってのもポーズだけだったってことだ。

   この一件は処理を間違うと、吉本といえどちょっと危ないぞ。松本が社内に自分主導の新しい部署を作ればいい、なんて言ってるみたいだけど、そんなの大崎会長の下にいるマネージャーを何人か連れてきて、そいつらに任せて終わりだよ。それじゃあ何も変わらないだろうね。

   だけど『ヤクザと反社との付き合いを絶つ』ってのは、芸能界の成り立ちからして難しいもんがあるよな。

   地方の興行なんて、すぐにヤバい筋の人たちが出てくるのが当然だからね。吉本は今後、そういうのをスパッと断ち切れるのかな」>

   たけしは滑舌が悪くて聞き取れないテレビなど出ないで、活字でこそ持ち味が生きると思う。

「稲垣吾郎を出すなら私は降板」啖呵が売りのマツコの陰湿・・・「5時に夢中!」に圧力?

   私はマツコ・デラックスというタレントがどうも好きになれない。細木数子のような風貌もあるが、マツコの持っている力以上に評価され過ぎていると思っている。その嫌な感じの根拠が、週刊文春の特集でわかった。

   ジャニーズ事務所が、SMAP解散後、出ていった3人を使わないようにテレビ局に圧力をかけたという問題をマツコにぶつけている。マツコはこういい放つ。<「それはさぁ、公正取引委員会が調べりゃ色々出てきますよ。だってテレビ局は使いたくないんだもん。SMAPだから使われていたわけで、SMAPじゃなくなった三人に魅力を感じますか」>

   週刊文春によれば、TOKYO MXの情報番組「5時に夢中!」は、解散後の17年10月24日に稲垣吾郎を生出演させたそうだ。反響は大きく、MX側は稲垣を準レギュラーで起用しようと考えたが、この番組の顔であるマツコが「稲垣を出すなら降板する」と申し入れたというのだ。これこそ"圧力"ではないか。マツコはこう弁明する。

   <「一方的に私が妨害したみたいに書かないでよ。だって、稲垣吾郎が『5時に夢中!』に入って楽しいと思う? いち視聴者として冷静に見れば、旬かどうかわかるでしょう。あの三人は木村拓哉や中居正広とはパワーが違うのよ」

   何でも、マツコはかつてキムタク批判の急先鋒だったという。だが12年以降、事務所に急接近し、<高校時代の同級生でもある木村との共演も果たし>(週刊文春)て、今ではキムタクの自宅へ招かれるほど親しいというのだ。

   事務所側が圧力をかける以上に、やってはいけない見苦しい依怙贔屓ではないか。私が感じていた、なんとなく嫌いというのは、これを読んで、はっきりマツコは嫌いだと確信に変わった。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

今すぐ無料会員に登録して、コメントを書き込もう!
お知らせ

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中