土地も建物も資金もないのに賃貸アパート経営!?「ランドセット」で大けがする素人オーナーたち

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   番組の冒頭、異様な映像が出た。三重県津市の田園地帯に新築のアパートが乱立している。ほとんど入居していないように見える。「30棟、100軒くらいありますかね。こんなに乱立したら、入るはずがない」というオーナーらしき声が流れる。

   バブル後の経済の低迷と人口減少の中で、奇妙なことに、全国で賃貸マンションやアパートの建設が増えている。「ランドセット」と呼ばれる投資だ。賃貸アパートの多くは、土地を持つ資産家が経営するものだったが、「ランドセット」は土地も建物も持たない人が、カネを借りて始める。それがいま、崖っぷちに立たされている。

   茨城・水戸市のオーナーのアパートは築11年。年間530万円の収入があり、25年で完済できると予測して金融機関から8000万円を借り入れた。ただ、契約書には、「経済状況などから(家賃は)継続保証するものではない」とあった。大丈夫だろうかと賃貸不動産会社に聞くと、支店長は「近くにスーパーも薬局もある。コンビニも近々オープンする。大丈夫です」と言った。

   しかし、同じようなアパートが次々とできて、家賃相場が1万円から1万3000円も下落した。年間だと100万円の減収だから、返済に回せるのは435万円。利益は1万1666円しかない。「心配を通り越して辛いです」と話す。

   金融機関の関係者は「家賃収入だけでローンが払えなくなっている。土地を買わせているから、最悪、破産覚悟の人もいる」という。

近所に乱立して家賃値下がり!ローン破綻寸前

   1990年代のアパート・マンション経営は、土地を持つ農家や資産家の資産活用・相続税対策として広まった。それが2008年のリーマン・ショックで金融緩和・低金利政策となって、地方銀行の収益状況が厳しくなった。新たな投資先として考えられたのが「ランドセット」だった。家賃の変動で、逆ザヤになる危険があるリスクの高いが、賃貸不動産会社はオーナーに十分な説明をしていないケースが目立つ。

   金融庁が調査した事例では、自己資産が足りないオーナーに、不動産会社が他人の預金通帳を使って書類を改ざんして、融資にこぎつけたものまであった。昨年(2018年)破綻した不動産会社「スマートデイズ」では、「家賃が下がるなんて聞いていない」と、融資したスルガ銀行も含めて700人が裁判を起こした。

   国交省出身で明海大学の周藤利一教授は、アパート経営を考えている人に「立地条件を冷静に見る」「需要は大きくはない」と、不動産会社の誘いに安易に乗らないよう呼びかけた。「大きな企業だからと安心しないように」ともいう。

NHKクローズアップ現代+(2019年10月9日放送「過熱する不動産投資に異変!賃貸住宅ビジネスの深層」)

文   ヤンヤン
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