2020年 10月 30日 (金)

死の6年前、上海を旅した芥川龍之介。美形の男娼の末路が哀れな混沌都市の異邦人ルポ
<ストレンジャー 上海の芥川龍之介>(NHK総合)

   芥川龍之介が29歳(1921年)の時、大阪毎日新聞社特派員として上海に渡った際の数か月を描いている。芥川は既に国内で有名な作家であり、現地の支局長が彼の案内に付く。内戦状態の上海には軍閥が割拠し、外国租界があちこちにできていて、混沌としている。芥川龍之介(松田龍平)はものすごく頭がいいという知識人・李人傑と政治を語り、一方、ほの暗いランタンゆらめく怪しげな妓楼(遊郭)では、美形の男娼ルール―が耳が聞こえず口もきけないのに文字が書けるのを知って、「今度、本をあげよう」と約束する。

   ルール―になる中国俳優には得もいわれぬ怪しい色気があり、芥川が男色家でなくとも彼に関心を寄せたのがよくわかる。ヤリ手婆に管理されている男娼の哀れは、後に殺されて、路上に捨て置かれたまま、人々が彼の死体の上を平気で跨いで通る場面で象徴的だ。

   脚本は渡辺あや、全編が中国ロケで撮られたそうで、人種のるつぼ感が横溢している。芥川はこの旅行でも腹を壊して入院しているし、この後、次第に体力を失って創作意欲も減り、6年後に自殺するのである。それを知っていてこの作品を見ると、感受性の鋭かった芥川に、単一民族時代のニッポンでは想像もつかないカルチャーショックを彼に与えた旅行だったにちがいないと感じる。眠そうな目をした松田龍平は、切れ者の青春時代がモヤモヤしていたと思わせる効果を生んだ。まことに上質のドラマであった。(放送2019年12月30日21時~)

   (黄蘭)

採点:1.5
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