2024年 4月 25日 (木)

三菱UFJ証券・チーフエコノミスト 水野和夫氏に聞く
イチローや松坂大輔を見れば 「グローバル化」が理解できる

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   給料は上がらず、仕事はきつくなる。そんな例がほんとうに増えている。国内だけで食べているところは苦しいが、海外を相手に仕事をしている企業の業績は悪くない。それが「グローバル経済」ということなのだろうか。三菱UFJ証券チーフアナリストの水野和夫氏にいったい何が起こっているのかを聞いた。

企業経営者の頭には、国内も海外もなく、もうかるところへ売る

「グローバルな時代は、日本人が海外で活躍するチャンス」と、水野和夫氏は語る。
「グローバルな時代は、日本人が海外で活躍するチャンス」と、水野和夫氏は語る。

―― 「グローバル経済」とよく言われますが、何を意味しているのでしょうか。

水 野 グローバル経済とは市場統合のプロセスだと考えています。企業がいとも簡単に国境を越えて、ヒト、モノ、カネが自由に動くことを意味します。こうした現象が出はじめたのは、1995年にルービン財務長官(当時)が「強いドルは国益」と発言したことによります。貯蓄が潤沢な日本から米国にカネを流入させたのです。その結果、米国の株式時価総額が増えました。
おカネが自由に動くためには、モノも人も動かす必要があります。そのためにはまず情報を動かすことです。おカネと情報はリンクしていますから、その意味では米国のインターネット革命の衝撃は大きなものがありました。インターネットが経済、資本、情報を集中させて、さらにスピードを加速して流通していったのです。95年がいまのグローバル化のはじまりといえます。

―― 日本で好調な企業はどこも海外で利益を上げています。半面、国内相手の企業は景気回復の実感もないままでした。

水 野 BRICSが台頭して、投資がそこに振り向けられるようになり、急速にBRICSの資本市場は膨らんでいきました。いま日本で好調な企業は、中国やインドといった新興国を利益の源泉としています。一方、海外に出て行けなかった、内需に依存している企業は思うように利益を上げられず、景気回復といっても利益を増やせませんでした。販売が国内に限定される中小企業はさらに取り残される格好になっています。 現実に、自動車産業は国内でまず優先して売り出し、その後に輸出に向かうというやり方をしていましたが、いまでは新車発表も米国が先で、あとで日本というふうに逆転してしまいました。
いまの経営者には内需、外需といった区別はありません。サブプライム問題で輸出企業の業績に陰りが見られるようですが、輸出がダメになってきたから、内需拡大などと言っている場合ではないですし、そもそも企業経営者の頭には、内需も外需もなく、もうかるところへ売っていこうという発想なんです。

―― その一方で、グローバル化によって、労働者の生活水準は低下しています。

水 野 かつては企業の利益が上がれば、労働者も相応の分配がありました。それは工場に価値があって、資本も人もそこに集まったからです。ところが、いまの企業は株主の力が大きくなって、労働者がストライキでも起こそうものなら、資本家は「では工場を売ってしまえ」となる。資本は団結することができますし、海外に逃げ出すこともできます。これでは労働者が団結しても勝ち目はありません。グローバル化によって、国や企業の成長が即所得の増加につながる、ということもなくなったわけです。だから、給料が下がるのは十分ありえることなのです。国が規制などによって労働者を守ることはできません。
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